【みやまる】のほ本!26冊目-火花-

 早いもので、こーきちくんが弟弟子になってから丸1年経過した。「親とさほど歳の変わらない弟弟子がいる」という、なかなか稀有な立場にもすっかり慣れてしまった。もっと言えばこーきちはお笑い芸人だが、俺も師匠もお笑いの道を歩んでいるかというと、そうではない。一門で唯一の芸人なのだ。これもよく考えればちょっと不思議……。

 ピースの又吉直樹が芥川賞を受賞した『火花』は、徳永という漫才師が4つ年上の天才芸人・神谷に熱海でのイベントの後に弟子入りをする。不器用に、傷つきながらも芸にぶつかっていく神谷の姿勢に徳永は感銘を受け、自らも芸へ消化していく。神谷と徳永の対話がとても良い。2人のやりとりはどんなに盛り上がろうともどこか一抹の寂しさを残し、反対に悲しみに満ちていても微かに光るものがある。この「ほろ苦」な味わいが絶妙な純文学だ。

 あまりにこの本が面白かったので、『第2図書係補佐』という又吉の読書エッセイも読んだ。控えめなタイトル通りの、落ち着いた文体の読書エッセイの中に織田作之助の『夫婦善哉』について触れているくだりがあり、1月ほど前にみやまるも手にとった。主人公の蝶子は夫の柳吉にラストに言う。「一人よりも女夫(めおと)の方が良えということでっしゃろ」。1人よりも師弟、1人よりも兄弟弟子。更に俺は上には師匠、下には弟弟子というオイシイ立場。いまちょっと「上下関係」が前時代的という考えも少なからずありますが、ゼッタイ良いところもありますよ。だって俺いまスゲー居心地良いですもん。


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