【みやまる】電車映画のようなもの その43-監督、ばんざい!

たけし監督の魅力のひとつとして無邪気というか、「小僧」という感じをいつまでも持っているところがある。もっと言えば「いたずら小僧」だ。この『監督、ばんざい!』もいたずら小僧の偉大なる落書きというような味わいがある。

製作中の仮タイトルは『Opus 19/31』。『8 1/2』と同じく次回作作りに苦悩する映画監督が主人公だ。たけし演じるキタノ監督はどんどん自分の作品の中に迷い込んでしまい、荒唐無稽かつ幻想的な映像が連なる。電車に乗ってるのかと思いきや「電車のセットを荷台に載せたトラック」で、セットの中で鈴木杏は岸本加世子に「これは電車なの?トラックなの?」と聞くようなギャグを残しつつ。

観てる側はどんどんたけしの脳内の別世界へ吸い込まれていくような錯覚を覚える。そしてたけしの脳内は奥の奥まで進んでも面白いことへの挑戦を忘れないんだなという不思議な安堵ともに、たけし本人そっくりの人形をガンガン叩き壊してしまうような自己否定の部分がごちゃごちゃに混ざり合っていく。もしかしたら日本映画に1番少ないタイプの映画なのかもしれない。

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