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【2番弟子】今日の小話 #5「雪の中のレイディ」

雨が降り始めた。傘をさし、コンビニへと歩く。洗濯もしてないパーカーに、膝の薄汚れたジャージ。浮浪者まがいのぼろぼろの格好。これが普段の俺の一張羅なのだ。

人が振り返る。コンビニの店員は迷惑そうな顔をして、ふた回りも年下であろう彼はタメ口で接客をしてきた。片方が壊れて右耳しか聴こえていないイヤホンで俺が聴いているのは、BOØWYだ。マーシーンのようにひたすら接客しているお前なんかより、ロックしてるぜ。俺は。

買ったわかばに火を着けて吸い込んでふと前を見ると、貼ってあるポスターに、以前から気になっていた女性に似たアイドル主演映画の顔が写っていた。タイトルは『幕が上がる』。なんか、自分の今の置かれている状況とリンクしているようだ。早速写メを撮った。「気持ち悪い」と言う女の声が聞こえる。そんなことはおかまいなしだ。俺は何も悪い事してないし、文句あっか!

帰り道、雨は雪へと変わっていた。降りしきる雪の中、生活費を削って買った音質の悪いイヤホンでBOØWYを聴きながら、雪の中の喫煙所で、この駄文を打っている。

いつかきっと、やってやるんだ…。俺は。




なんか面白い展開になると思ったでしょ? 爆笑するような。実録だから笑えない? 大丈夫、これから面白い展開が…


って、なんにもないですよ。





なーんてっ。


写真・文/こーきちくん

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