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カナダとイスラエル人

3年ほど前にカナダに行ったのですが、夜、友人3人とBarに行ったんです。そのバーには舞台があって、地元のミュージシャンが演奏していました。少し飲んで調子に乗っていた僕は店員さんに『おれたちは日本で結構有名なミュージシャンなんだ。ちょっと演奏させてくれないか?』とお願いしました。もちろん僕はミュージシャンではありません。ただの会社員です。店員さんは『わかった。ボスに確認する』と言って裏手に消えました。さあ、パワーコードしか弾けないギターテクでどうやって魅せてやろうかと腕をならしていると、数分後、店員さんが戻ってきて『ごめん、今日は無理だ』と言いました。断られた僕はふてくされてタバコを吸いに外へ。
するとそこには一人のミュージシャンがいたのです。


売れない流しのジジイでした。
いつもなら無視するところですが、ちょうどそのとき彼はOASISの曲を演奏していたので、調子に乗った僕はギャラガー兄弟気分で歌いました。数曲歌って、ふと我に返るといつのまにか知らない男がパーティーに混じっていたのです。


マントを羽織った友達なんかいたっけなあ...
話かけると日本人ではない。こいつ、俺の友達じゃない! ようやく僕は気づきました。いつの間にか友達と入れ替わっていた彼はイスラエル人のAbirでした。「明日、ビクトリア島に行くんだけどちょうど宿を探していたんだ」と言ってます。宿か...そういえば、僕はひとりでものすごく広い部屋に泊まっていたのです。友達とは飛行機もホテルもバラバラにとって、しかも繁忙期なのか、ツインの部屋しか空いてなかったのです。ということで部屋にはキングサイズのベッドが二つ。答えはひとつ。
「俺が泊めてやる。ベッドが余ってるから来いよ!」
Abirは「ほんとうか! 兄弟!!」と言って大喜びでマントを羽ばたかせました。タクシーでホテルに直行し、酔い覚ましにカフェでコーヒーを飲んでいろいろ喋ったあと、部屋ではAbirがスカイプやりたいっていうもんだからMacを貸してあげました。今思えばかなり無防備ですが、知らない日本人についてくる彼も相当無防備なやつです。僕はお金もパスポートも出しっ放しでしたが、もしとられたらそれは仕方ないくらいの感覚でした。
翌日、Abirは早朝に旅立って行きました。僕を起こさないようにそっと出て行こうとしたつもりのようでしたが、彼の電話の着メロ(レッチリのAeroplane)が爆音で鳴ったのでそれで起こされました。反射的に僕は歌いました。Abirは「ごめん! 起こしたか?」と言いましたが、無視して僕は歌い続けました。「この歌が終わったら俺たちサヨナラだな。」
そう言って彼はビクトリア島に旅立ちました。

彼とは今だに連絡を取っています。去年は突然、仕事中にスカイプが来て「友達が渋谷にいるから案内してやってくれないか?」と言うので「いつだ?」と聞いたら「今でしょ!?」なんて言うもんだからあわててタクシーで渋谷にその友人を迎えに行きました。

行ってビックリ。渋谷ハチ公前にチャックウィルソンみたいなボディのイスラエル人がいました。背中には「Strong as Steel」というタトゥーが彫られていました。もう見たまんまです。彼は漫画NARUTOが大好きだというので僕はラーメンをおごりました。彼のお父さんはマーシャルアーツの先生だそうです。そんな先生がこの世に存在するんですね。

イスラエルに行ったらたぶん僕はみんなからVIP待遇で迎えられると思います。ちなみにAbirはいまだに世界中を旅しています。昨年、「イスラエル行きたいんだけど」と言ったら「だめ、まだそのときはヨーロッパを旅している」と断られました。

働け!と言いたいです。 

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