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ジョンと出会った読者たち【第12話】

第3回ボルタ展にしかけられた無謀なる企みは、ブロス読者をも引かせることになりました。クレームを寄せるわけでもなく、ひたすらおし黙る世間に僕の魂は吠えました――
ごく普通の会社員である僕が血迷って携帯番号を誌面に載せたところから始まる、アメイジング・ドキュメンタリー!


前号で『ウンコ絵の具の作り方』というページを掲載したところ、電話が一件もかかってこなくなりました。このコーナーが始まって以来、今まで電話がかかってこなかったことはありません。もしやキチガイ認定されたのでしょうか? 読者をどん引きさせてしまったのでしょうか?

だとしたら、
こんなにブロス読者がヤワだとは思わなかった!!
はっきり言って、僕のゲリベン以下のヤワさです。

おそらく読んでいるはずなのに、気になっているはずなのに、全く新規の電話がかかってこない。そのくせ、ツイッター等で「きめぇ」とか「スカトロwww」とか呟くのです日本人は! 誰かに聞いて欲しいからさりげなく「呟き」をするのです。番号載せてるんだから、呟いてないで電話してこいや! まあ、電話代をかける価値もないと思われてたらそれまでですが。

しかも、「良いね」または「悪いね」といった自分のポジションが明確になってしまうような呟きはしないようです。どっちとも取れるようなファサッとした呟きばかり。もっとファサッとさせたい人はリツイートします。なんだか震災の時を思い出します。予想外の出来事に対して、どっちつかずの何を言ってるのかわからない人の多かったこと多かったこと…。

もっとも、誰か影響力のある人がひとたび「面白い」だとか「面白くない」だとか声を上げると、「自分もそう思ってた」と追従しだすのでしょう。日本人は周囲の様子見ばっかりしてるんです。自分がどうではなく、まず周囲がどうなのか。空気を読めることが美徳とされてる国ですからね。調和は素晴らしいと思いますが、そこまで自分を殺して作り上げる調和ってどうかと思います。どこかの国を“洗脳国家”呼ばわりできる資格はありませんね。

僕がヨーロッパに住んでたときに見た雑誌業界では、あのような記事は日常茶飯事でした。別にウンコが日常茶飯事というわけではありません。賛否があってもおかしくない記事という意味です。ひとつの出来事に対して、発信側も受け手も、賛か否かを堂々と声に出す土壌があるのでしょう。ですが、日本にそれはないようです。言明を避けて避けて、自分のポジションをくらまします。なんも見えない。なんも生まれない。声を大にして言えることは、明らかに当たり障りのない範囲内だけ。そりゃ予定調和しか生まれません。今、日本を覆っている問題の多くがここに起因している気がします。

ちなみに、僕はあれがアートだなんて1ミリも思ってません。アートなんてFUCKですから。もし高校生たちの絵が、それだけで人の心を動かす作品に仕上がっていたら、僕はあの1ページを削っていたことでしょう。しかしそうもいかず、結果的にやらざるを得なくなりました。それは自分としても悲しいことです。

僕は限界を超えました。絵の具を作っていたとき、どれほど楽しかったことか。ものづくりの楽しさを覚えました。最初はイヤだったけど、いつの間にか作ることに夢中になって、「これがクリエイションってやつか!」と思いました。茶色の絵の具ラベルをウンコ絵の具に張り替えるとき、手が震えました。もちろん制作するにあたり、僕を支持してくれる編集木下さんには言葉にできないくらい感謝しています。あれはほぼ彼のウンコと言っても過言ではないくらい彼の想いも詰まっています。それは「よいものを作る」という想いです。ただ、何かすごいものを作りたいと夢中になっていたのは、僕と編集だけだったんでしょう…。

部員たちへ——

君たちはなんとなく絵を描いて、なんとなくタイトルをつけて、なんとなく「いいね!」ボタンを押してもらって、なんとなく満足を得るような、そんな低次元なレベルからは脱却して欲しい。君たちは本気で絵を描いたことはありますか? 気がつけばもう受験に突入してしまいます。

たろおみボルタは、とにかくいろんな人に絵を見てもらえ! すずきゅうボルタは、ホントに群馬で一番キチったやつになってくれ! 僕はあんだけ「記号に囚われるな」と言ったじゃないか。文句が出ないような作品作ってどうするんだ? 常に僕の予想を上回るものを作ってくれ! 作品はテストの答案じゃない! とにかく無難なものを作らず、思いっきり否定されようが、本当の自分を出して欲しい。

もちろん、絵が好きな気持ちはそのままでいて欲しい。僕は仕事柄、デザイナーを職業としている人たちとたくさん会ってきましたが、君たち以上に絵を描くことが好きな人にまだ出会ったことはありません。君たちはまださほど絵が上手くない。技術も未熟だし、美術に関しては全然詳しくない。でも誰にも真似できない「味」がある。

子供っていうのは大事なものを簡単に捨てたがるから、誰かが見守ってなきゃならない。君たちが持っている才能っていうものは、誰かが育てなければ消えてしまうんです。もしも、君らの周りにいる誰かがやらないなら、僕が全力で守ります(キチガイ扱いされてますが)。だからとにかく本気で絵を描いてみて、味を出し切って欲しい。じゃあ、いつやるか?

今でしょ?

引き続き、読者の皆さんからの電話をお待ちしております! 090-6143-2407へ!

電話がないのがこれほど辛いと思ったのは、前回の失恋以来です。090-6143-2407(平日は20時以降にお願いします。土日は何時でもOK!)までお電話を! メールはhirotakufr@aol.comまで。あっ!!!!! 今、気づいたんですけど、前号ではこの告知がなかったから電話がなかったのかも…。失礼しました〜。

(「TVBros.」2013年4月10日発売号掲載)



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