【みやまる】電車映画のようなもの その24 -夢売るふたり-

  3年前浪人生だったみやまるは新百合ヶ丘の日本映画大学へ。その日は西川美和監督のトークショー付きのオープンキャンパスだった。西川組のメイキングまで見せてもらった、しかも全部タダで。こんな贅沢なオープンキャンパスは他に体験したことがない。壇上の西川監督は低く強い声で、男女両方から人気がある学校の先生というような印象だった。「映画の世界では男女の地位が徹底的に平等で、女だからって理由で差別もされない代わりに甘やかされもしない」。『夢売るふたり』の監督の発言と考えるとさらにずしんと来る。

 火事で店を焼失させてしまった夫婦(阿部サダヲと松たか子)の結婚詐欺は意外と初めのうちは笑って観れる。夫婦じゃなくて兄妹って設定で二人で女だまして金をふんだくるのだが、夫が女に電話する横で妻がカンペで指示出したりなんて、確実に笑いを取りに行こうとしてる。でもそんな関係上手くいくんですか?と思ったあなた。正解。ぜひ「どんどん神経質になる」松たか子に注目。

 この2人が暮らす家から電車の車両基地が一望できるという設定もまたいい。毎日使う、日常の象徴のような存在である電車が2人の部屋から沢山見えることに深い意味はなくとも、確実に部屋の「生活感」をぐっと上げている。もう一度店を持つ夢のために夫婦生活を自らぶっ壊し、消耗していく。金と夢と女と男が、ゆるやかな夫婦生活を目茶目茶にする。救いのない名作は目を背けたくなるような人間のアカン部分を容赦なく攻めてきます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?