【みやまる】電車映画のようなもの その25 トウキョウソナタ

 祝!黒沢清監督第68回カンヌ映画祭「ある視点部門」監督賞受賞!今日は「電車映画」も黒沢監督の作品です!

 京王線の電車の見える2階建ての一戸建てに住む佐々木家はどうも歯車がうまく回らなくなっている。父(香川照之)はリストラを隠し、長男(小柳友)は米軍入隊を志願、次男(井之脇海)は給食費を盗んでピアノ教室に(このピアノ教室の先生演じる井川遥がまぁ~美人!あの先生なら給食費盗むのも・・・いやいや盗みはイカン)通うとそれまで平穏に進んでいたらしい家庭に小さな歪みが生まれ、母が気丈に振る舞うも止まらずにボロボロになる。題名に「トウキョウ」とあるが『東京物語』とは対照的にガラス越しや壁越しのカットが多く「突き放した」映画である。

 とはいえ完全には突き放さない映画がこの映画の好きなところ。長男が母に離婚を考えたことはないのかと母に問う、「お母さん役も、悪い時ばっかりじゃないのよ」。字にするとインパクトの大きい名言にも読めるが、ごく自然の流れに、スッとこの発言が登場する。突き放しているようで、実は「悪い時ばっかりじゃない」将来結婚とか、そうでなくてもあと20年30年後この台詞に、もっと意味を持って感じるんだろうなと、ぼんやりと思わせるシーンである。

 今みやまるは大学のゼミで「外国人監督が東京で撮影した映画」について勉強をしている。この『トウキョウソナタ』のちょっと突き放した空気はそうした作品に似たところを感じる。そうした「よそよそしい」映画だからこそ「東京」ではなく「トウキョウ」なのかもしれない。


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