私的東方創想話レビュウ①

「東方創想話」の中からいくつかお話をピックアップしました。興味を持ってもらえたら幸いです。


此処にひこうきぐもは無い(作品集227 6.28KB 約3000字)
作者:ヘンプ氏

 ある晴れた秋の日に、掃除を終えた早苗は空を見上げた。雲一つない空を見て、少女は何を思う。それは一体何なのか。

感想

 とても透明度の高い作品で、するすると読むことが出来ます。作者であるヘンプ氏は「シーンを切り取る力」がとても高い作者さんですが、この作品はその中でも「切り取ったシーンが一つの物語になっていた」と思えるほどに、綺麗にまとまっている作品だと感じます。
 読後感も爽やかなので、眠る前に読んで満足感を得るもよし、お昼休みに読んで早苗の感情をトレースするもよし、仕事帰りや夕方に読んで郷愁と思い出に浸るもよしな作品です。おすすめです。


夜空の散歩(作品集227 6.51KB 約3000字)
作者:Actadust氏

 幻想郷の夜空を漂いながら、宇佐美董子は自身の感情に思いを馳せる。歩いてきた道を振り返り、そしてこれからを見る一夜の話。

感想

 「私は『宇佐美董子』というキャラクターをこう考えている」
 読んでいるこちらにそう語りかけてくるような作品、というのが第一印象でした。
 力を求めていながらも、そこに恐怖を抱く。それがないと自分を確立できないのに、それを忌避しているようなその姿はとても人間臭くて、だからこそ幻想郷に、そして彼女に特別な感情を抱いたのかもしれませんね。ゆっくりとした作品の流れがおすすめの作品です。


バブルガン(作品集228 4.16KB 約2000字)
作者:ドは空気入れのド氏

「わたしは綺麗な丘がみたい」と河童の少女は夢想する。少しだけ世界に疲れた、妖怪少女の独白。

感想

 悲しいほどに純粋な作品だと、読み終わった後に感じました。
 「小さいころ見つけた宝物みたいな場所なんてどこにもないんだって叫んじゃいたい」と、作中で少女は独白します。それはつまり、きっと少女は「綺麗な丘」を、何度も何度も探したのかもしれません。あまりにも澄んだ水の中では生き物は生きることが出来ないように、あまりにも透き通った文体は、綺麗さと一緒に哀しさを感じるのでしょうか。
 ただ、これはあくまで私個人の感想で、この作品を読んでどう思うかは、きっと人それぞれなのでしょうね。 おすすめの作品です。


最後に

 こんな感じで、いろいろな作品の、ここが好きだというのを伝えられたなあと思います。最後まで読んでくださった方に感謝を。ありがとうございました。



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