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忘れられぬひと

能楽で一緒だった、年下の小さな女の子。
はにかんだ笑顔を覚えている。
卒業してから偶然すれ違ったとき、手を振ってくれた。

それが最後になってしまった。

彼女の乗っていた船が転覆して、亡くなったことを知った。
様々なことに心の底から憤りを覚え、投書した。


午前中に部活が終わり、塾で自習をしていた。
窓側の席の方から、「自転車が…」ということばと、啜り泣く女の子たちの声が聞こえた。
そのときは何があったのかわからなかったけれど、異様な雰囲気で、その女の子たちに尋ねることはできなかった。

広島から転校して来て慣れていなかったとき、話し掛けてくれた。
学校は違ったけれど、同じ剣道部だったから、よく話した。
個人戦で彼女が入賞したとき、一緒に対策を考えたこともあった。明るくてやさしい彼女と話すと、とても楽しかった。
合格報告会で話したことが、最後になってしまった。

半年ぶりに会った彼女は、、、

スターチスの花を供え、外に出たとき、空を見上げ、静かに涙を流している男の子が居た。
あの時間は永遠だった。


いつか亡くなるということはわかっていたけれど、知ったときは声が出なくなった。授業は発表だったから、ドイツ人の先生に、筆談で欠席を伝えた。
新年会の幹事の件で揉めていた頃と重なり、ろくにお別れもできなかった。
最後の台詞が「(新年会の幹事)頑張って来る!」「おう!」って、死にたくなる。
責任感の欠片もない奴らのために時間を使わず、サボるべきだったと思っている。

色んな伝手をたどって、手紙をくれた。加害者から庇い、いじめを止めてくれた。人間として、尊敬している。大好きです。そして、ごめんなさい。糸島に、今年は行きます。



「神様は、綺麗な花から摘んでいく」というけれど、汚いゴミから持って行ってほしい。
みんな、私なんかより価値のあるひとたちだった。