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数奇な夜

昨夜の地震が起きた時はちょうど横浜にいて、電車に乗って帰るところだった。
車を走らせていると、久しぶりに聞く緊急地震速報が鳴る。
慌てて強震モニターなるアプリを開くと、自分の住んでる地域が真っ赤に広がっていく。

安全確認のため大幅に遅れてやってきた電車に乗り込み、ひとまず都内へ。
いつもは猛スピードで駆け抜け、恐怖を感じるほどのレッドホットなソウルトレインが亀並みのスピードで走っている。

駅に着くと、突然駅員さんが入ってきて
「この先の地下鉄は全て終了していますので降りてください」と品川駅で強制的に下ろされた。
改札を出るとタクシー乗り場には長蛇の列、
テレビ局のカメラまで数台いて、自分は今どこで何をしているんだろう?と一瞬わからなくなる。

まさか、普段めったに電車を使わない自分が地震によって帰宅困難者の一人になるなんて思いもしていなかった。

こういうのもすべてタイミングなんだろう。
一つ早い電車に乗ったから助かった、電車を乗り逃したから難を逃れた。
現実的に起こった印象深い事柄でいえば、地下鉄サリン事件の被害などはまさにそんな感じだろう。

映画「ベンジャミンバトン」のような、数分、数秒で、その人の人生が大きく変わる。
今暮らしている三次元のこの地球上で、時間の概念というのは当たり前のものだが、普段気にもしないほんの些細なタイムラグが結果として運命を大きく分ける出来事になるのかもしれない。
そして、そこに前もって気づけないのも運命。

今までは他人事だと思ってテレビを見ながらあーだこーだ言っていた光景が今、自分の目の前で起きている。

そんなことを考えていると、
山手線が再開するアナウンスが構内に響き渡る。

なんとか無事に帰れそうだ。救われた。

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