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THE HARDBAIT #25, #26

「牛久沼レジェンドのプラクティスを追う」

H-1グランプリの牛久沼戦で2015〜2018年に「4年連続優勝」という前人未到の記録を打ち立てた高橋一夫さん。ロコアングラーだから、場所を知っているからというだけでは、ここまで飛び抜けた成績を残すことは難しいはず。いったいどのような秘訣があるのだろうか? 今回はプラクティスに同行させてもらった。

高橋「ここ1〜2年はあまり牛久沼に通えていないんです。魚のポジションもわからないので、まずは西谷田川からスタートして全域を見ていくつもりです」

しょっぱなから気になったのが「魚のポジション」というフレーズだ。高橋さんいわく、「シャローにベイトフィッシュがうわずっており、それを追ってバスも差している」のであれば表層系ルアーを多用するし、「大半のエサがボトム近辺にいてバスもそちらに寄っている」とわかればレンジを下げていく。

高橋「基本的にはクランクベイトをローテーションしながら探っていきますが、まったく口を使わないようすであれば、ジャークベイトなどでリアクションをねらっていったりもします」

西谷田川に到着して、まずはLC2.0でスタート。ややボリュームのあるクランクを選んだのは、「ポジション」のわからない状況でバスを引っぱってくれるパワーを持たせるため。デカい個体だけねらっていくなら、さらに大きなLC2.5BDS3でもいい。

左岸側の浅いエリアをチェックしてから、明確な水深変化のある右岸へ。バンク際のアシの多くは水深が浅すぎるのでスレスレまで撃ち込む必要はないとのこと。杭の絡むブレイク近辺を巻いていくと、障害物にコンタクトした直後にヌッと抑え込むようなバイトが出たが、すぐに抜けてしまった。

高橋「シャローよりも、ブレイクの沖側にたくさん魚影が映りますね。通すレンジを変えてみましょう」

ここでSKT Mini DRに変更。水深1.5〜2.0mあたりまで探りを入れてみるが、ヘラブナのスレが多発したため、ふたたびシャローへ目を向ける。浅いレンジをトレースしやすい高浮力のBDS2に変え、細見広場から少し上のオダまで巻いてみた結果、このエリア自体を見切ることにした。

高橋「水面でベイトがもじったりとか、もう少し気配があればヒントになるんですが」

続いて向かったのは本湖。牛久沼では基本的に人気薄のエリアだが、実績のある西谷田川の反応が鈍かったことから「ニュートラルに探さなければ」と考えて足を運んだ。

高橋「状況がわからなくなったら、まずはエサを考えます。どこにどんな生き物がいて、それがバスに食われているのかを再確認するところからはじめます」

BDS2で最下流域の水門までチェックしたのち、島まわりに向かうと、大量のカワウが木にとまっているのを発見。「ベイトを追ってダイブしていない。ダメですね」と一蹴。バスの天敵としてカワウを嫌うアングラーも多いが、高橋さんにとっては水中のようすを教えてくれるひとつの情報源なのだ。

その後は東谷田川に入り、「塚柵」「茎崎橋の橋脚」「橋の東詰のハードボトム」「沖に沈むウッドカバー」などを探った。上流へ向かうにつれて、水中にボトムが剥がれたカスのようなものが浮遊しはじめたため、「ターンオーバーが生じている」と判断してUターン。その後はバイトのないまま終了時刻を迎えてしまう。

だが実は、ターンしていたこの東谷田川の上流部こそが、約3週間後のH-1グランプリにおける高橋さんのメインエリアになる。

高橋「ごく浅いシャローエリアに、エサを探して回遊するバスがいると推測しました。水深はボートポジションで30〜40cmあれば余裕。クランクは通しづらいレンジなので、波動の弱いスピナーベイトを丁寧に巻いていきました」

結果は2バイト。うち1尾は1kgを超える魚体がハッキリと目視できたのだが、無情にもフックアウトしてしまう。終わってみればウエイインされたのはわずか2尾、優勝はなんと640g。過酷すぎる試合のなかで、高橋さんは5度めの栄冠を手中に収めかけていた、というわけだ。

「シラサエビは牛久沼産だった?」

関西で海釣りに親しんでいる人なら、「シラサエビ」をコマセに混ぜて使ったことがあるかもしれない。実はこれ、牛久沼や印旛沼で水揚げされたものが使われていることをご存知だろうか?

高橋「冬になると業者さんが買いに来るので、そのときに話を聞いたんです。霞ヶ浦などのエビと違って、牛久沼産はほとんど水がない状態でも長生きするらしいんです」

ことほどさように、高橋一夫さんは「エサ」に詳しい。牛久沼で無類の強さを誇った理由のひとつも、このあたりにありそうだ。

高橋「7〜8年前、ボート店のイベントにプロのヘラ師の方が来ていたことがあって、牛久沼のベイトフィッシュについていろいろと教わりました。その際に『チューブ式の練りエサなら腐らないし、バス釣りのついでにエサ釣りもできるんじゃない?』と言われて、実践してみたんですよ」

それからしばらくたった夏のある日。東谷田川の中流域を釣っていた高橋さんは、水中でキラキラと泳ぎ回る魚を目撃。持っていたノベザオとウキ釣り仕掛けを投入してみると、10センチにも満たないマブナが連続でヒットした。

高橋「夏はこういうところにマブナが溜まるのか、と初めて知りました。水通しがよくて沖側に張り出したガマのストレッチでしたね。それまでの牛久沼では『夏はシェードパターンだ』と考えてベジテーションの奥を撃ったりするのが主流でしたが、バスがマブナを食っているとしたら意外と沖にいるのかも? と思ったんです」

沖といっても、なにもないオープンスペースで釣るのは難しい。そこで目をつけたのが「ガマの島」。当時はガマが大量に生えており、ところどころで島状の群生を形成していた。

高橋「これが沖にある『エサ場』になっているんじゃないかと。バスが常にいるわけではなく、ときおり回遊してきて捕食するために『ガマの島』を利用するイメージです。そういうスポットをランガンで釣ってみたところ、明らかに平均よりもコンディションのいいバスが釣れたんです」

もちろん岸際のアシやガマで釣れるバスもいるし、そのほうがイージーに食ってくれるそうだが、「

夏場は沖を回遊して生活しているバスのほうが圧倒的にポピュレーションが多くてデカい

」と高橋さん。

高性能魚探の普及以降、河口湖を始めとする多くのフィールドで「バンクよりも沖」のビッグフィッシュに注目が集まっていることを考え合わせると、高橋さんが牛久沼で独自に「沖のパターン」を発見したことは慧眼というほかない。

記事&写真 水藤友基

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