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THE HARDBAIT #011 「タックルセッティングに求める感覚」

ハードベイトを使いこなすうえで、切っても切り離せないのがタックルのセッティングだ。特にラインの影響は大きい。高橋一夫さんの場合、ハイシーズンのクランキングには14〜16ポンドラインを使うことが多いそうだが、真冬の将監川ではやや下のレンジまで到達させることも想定し、フロロカーボンの12ポンドを巻いていた。

リールにもちょっとしたこだわりがある。ハイエンドの最新機種ではなく、あえて10年以上前のモデルを使い続けているのは、手に馴染んでいるからという理由はもちろん、「スプール径32mm・ギア比5:8対1」というスペックが自分のリズムに合っているからだという。

高橋「大森貴洋さんに憧れて10対1ぐらいのスーパーハイギアモデルを導入したこともありました。だけどルアーを何度もティップガイドに巻き込んでしまって(笑)、元のリールに戻しました。特にトーナメントの最中はアドレナリンが出てつい速巻きになってしまうので、ローギアがちょうどいいんです」

リトリーブスピードがバイトの有無を決めることも多いハードベイトの釣り。ローギアのリールは「丁寧に巻く」という動作を自動的にサポートしてくれるわけだ。メインギアなどの予備パーツを確保し、自身で交換やメンテナンスをしながら大事に使い続けてきた。

一方で、最近になって取り入れた新しいセッティングもある。シャッドなどに使用する「グラス製スピニングロッド+PEライン」の組み合わせだ。

前回の記事で紹介した将監川では、沖の水深2m前後で「ベビーシャッド60FC」を遠投。点在するオダなどを探りつつ、ブレイクよりも下のレンジを回遊する魚を探していった。メインラインはPEの0.6号、リーダーにはフロロ8ポンドを使用した。

高橋「PEラインを使うと、まずは飛距離が大幅に伸びます。“ラインに浮力を持たせられる”のも重要なポイントですね。フロロカーボンは水に沈むので、どうしてもルアーの軌道がボトムへと向かいがち。ボトムノックで釣るならそれでいいかもしれませんが、強くコンタクトさせたくない場合もあるわけです」

シャッドはクランクベイトほどの回避性能は備えていないため、ボトムや障害物に突っ込みすぎるとトラブルが増えることも。浮力のあるタイプのPEと組み合わせてやることで、水中のラインは上方向にフワッと漂うような軌跡を描き、適度にルアーを浮かせるようなアプローチが可能になる。

ラインのセレクトによるトレースコースの微調整。実際にはわずかな差しか生まれていないかもしれない。それでも、ハードベイトの名手と呼ばれるアングラーほど、こうした繊細な感覚を大事にしている。

記事&写真 水藤友基

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