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THE HARDBAIT #007 「真冬のベイトフィッシュはなにをしているのか?」

1月上旬、利根川水系の支流で釣りをしていたアングラーから、鈴木美津男さんにこんな連絡があったという。「ゴリが表層でフラフラ泳いでいたんですよ! 凍りつきそうな水温なのに、ボトムや障害物に隠れてじっとしているわけじゃないんですね」

鈴木「僕にも似たような経験があります。屋外に大型水槽を置いて小魚やエビを大量に飼っているんですが、大雪などでひどく底冷えすると、それまで岩などに隠れていた魚たちが一気に浮くことがあるんです」

基本的に水温が下がれば下がるほど水の比重は大きくなり(4℃の状態がいちばん重い)、ボトムへと沈み込む。つまり水槽の下側に冷たい水が溜まるので、急激な水温低下を食らうと、底生の小魚でさえ浮かざるを得ない状況になるのかもしれない。

鈴木「カマツカやツチフキなど、土砂に潜れるタイプのベイトまで浮いてくるので、よほどボトムの居心地が悪いんでしょうね。水面まで弱々しく泳いできては、またフラフラ…と沈んでいく。さながら高比重系ノーシンカーのようなアクションをしています」

同じ低水温期でも、ベイトフィッシュとは異なる摂餌行動を見せるのがエビの仲間だ。水槽にエサを入れても、水温3〜4℃を下回るとクチボソなどの小魚はほとんど反応しない。ところがエビはエサの匂いを感じ取るやいなや、突然ハイになって水槽内を泳ぎ回るのだという。

鈴木「冬のフィールドでも同じことが起きているはず。たとえば魚や動物の死骸が沈んでいれば、それを嗅ぎつけたエビが群がっていたりして……。それをバスが捕食する可能性もあるでしょうね」

アングラーが想像している以上に、冬の水中はアクティブなのかもしれない。とはいえ、それがわかったところで真冬の釣りが簡単になるわけではない。数少ないチャンスを手にするためには、ほかの季節以上にエリアの選択眼が大事だと鈴木さんは言う。

鈴木「冬は間違いなく“流れ”がキーになると思います。さすがに激流は無理ですが、プロテクトされたエリアではなく、ほどよくカレントのある場所を探すべき。経験上、水の動かないエリアにはエサが少ないんですよ」

水深のあるワンドや込み入ったヘビーカバーの中など、バスが落ち着いて身を潜められるのが冬の場所、という考え方もあるだろう。なるほど、ほとんどエサを食わずに越冬する個体は見つかるかもしれないが、そういった場所にはフレッシュな水も酸素の供給も乏しい。少なくともルアーを追うグッドコンディションの魚は、そんなところには差してこないのだ。

鈴木「先日、気温が1℃台まで落ち込んだ日に水槽を測ってみたら4.5℃ありました。ところが、その横に置いた樽の水は外気温と同じになっていた。水槽は常にポンプで水を循環させています。これも“流れ”が生き物を引きつける理由のひとつかもしれませんね」


■写真 : クチボソ、岩のすきまにヨシノボリ

記事&写真 水藤友基

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