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THE HARDBAIT#013, #014

「地形と“差し口”で考えるプリスポーン期」

鈴木「春の釣りは苦手なんです、特にプリスポーンの時期は(笑)。過去のトーナメントの成績を見ても、6月以降、アフタースポーンから夏や秋にかけてのほうが得意ですね」

スポーニングシーズンになると鈴木美津男さんの得意とするハードベイトの釣り、なかでもクランクベイトなどの巻き物は威力を発揮しづらい、というのが定説だ。しかし理由は産卵行動だけではないという。

鈴木「水温が同じ15℃でも、秋はベイトフィッシュがバスの居場所とリンクすることが多い。だから横の動きに反応させやすいし、特定のパターンがハマると連発することも珍しくない。一方で、春のバスはなによりも“産卵行動”を優先しているから、エサとリンクしないことが多いんです」

今回の取材は4月中旬、霞ヶ浦の支流・新利根川で行なった。水面付近でエビやイナッコ(ボラの幼魚)が大量に群れているエリアもあったが、その周辺でバスがフィーディングしているようすはまったく観察できなかった。

鈴木「今日は人間の体感では6月のような陽気でした。試しにトップも投げてみたけれど反応がなかった。やっぱり、水のなかはそこまで季節が進行していないんだと思います。表水温は20℃を超えていたけれど、少し下の水深まで潜ってみるともっと冷たいはず」

ほかの季節であればベイトフィッシュを重視する鈴木さんも、プリスポーン期にはエサではなく「地形」をベースに魚を追いかけていくという。キーになるのは、スポーニングエリアになるであろうシャローフラットへの“差し口”だ。

鈴木「たとえば、新利根川下流に広がる洲の野原では、南にあるワンドが主要なスポーニングエリアだと考えられます。なかでも注目したいのは、中央にある小規模な消波ブロック。深い側では2m以上の水深があって、シャローフラットとディープを行き来しやすい場所にストラクチャーが絡んでいる。こういうところが典型的な“差し口”といえます」

もちろん、“差し口”をねらうだけで釣れるほど甘くはないのが現実。安定した暖かい日が続けば魚がどんどん上がってくるかもしれないが、三寒四温の「寒」に当たってしまうと、急激にレンジを下げてしまうことも。あるいは季節が進みすぎて、完全にシャローに乗ってしまったら、それはそれで巻き物に食わなくなるという。

鈴木「とにかく魚の動きが激しい時期なんです。クランクベイトを軸に考える僕でも、シャロークランクで巻き倒していいのか、深い側をスローに釣っていくべきか、迷うところですね。個人的には、“差し口”になるであろうスポットを見つけたら、タイミングを変えて何度か入り直して、出会い頭のチャンスをねらうスタイルが好き。釣れる魚のコンディションも、そのほうが間違いなく良好です」

「減水したシャローで活きる“2.0”のボディーバランス」

春のバスフィッシングの難易度を上げてしまう日本ならではの現象がある。特に平野部の湖や沼は、農業用水として利用されていることが多いため、田植えの季節を迎えると水位が下がってしまう傾向があるのだ。

鈴木「バス自体は産卵でシャローに上がろうとしている時期なのに、そこが浅くなりすぎていたり、ときには干上がってしまうことさえある。ハードベイトでねらうことを前提にすると、トップウォーターを除けば、使えるルアーが限られてくるわけです」

たとえば鈴木美津男さんの得意とするシャロークランキング。減水しているとわかれば、できるだけ潜行深度の浅いものを選ぶわけだが、そのなかにも細かな使い分けが存在するという。

鈴木「霞ヶ浦水系なら、ねらうレンジが水深1mより浅いことが多いので、まずは“LC MTO1.0”あたりを選ぶでしょうね。それほどボリュームも大きすぎないので(全長55mm)、無風や快晴のコンディションでもバイトを得やすい。ただ、これでもボトムや沈みものへのスタックが多いように感じるときは、もうちょっと浮力の高いものに変えていきます

興味深いのは、ここでの鈴木さんのチョイスがワンサイズ大きな“LC MTO1.5”ではなく、“LC RTO2.0”になる、という点だ。“LC MTO1.5”を選ぶと、たしかに浮力は増すが同時にやや潜りすぎてしまうので逆効果。一方で“LC RTO2.0”は、ドシャローでも快適にトレースしやすいバランスになっているという。

鈴木「もともとは“RC”シリーズが登場したころ、僕が要望してラインナップに加えてもらったアイテムなんです。カバークランキングをやっていると、“RTO2.5”(全長70mm)ではデカすぎるけど、“RTO1.5”(全長60mm)だとほんの少し浮力(=回避力)が足りない、と感じることがあった。その隙間を埋めてくれるのが、65mmボディーの“2.0”サイズなんですよ」

このボディーバランスが優れているのは、対カバー攻略だけではない。平坦なシャローバンクを巻いていく際も、ちょっとした枝などに触れたらリトリーブを一瞬止めて回避、そしてまた巻き続ける、といったコントロールが容易になるのだ。太めのナイロンライン(16ポンド程度)を使えばさらに扱いやすい。

鈴木「ゆっくり丁寧に巻けばスタックしないのは当たり前。だけど、それではサーチする速度も落ちてしまう。スピードを落とさずに、なおかつ根掛かりを防ぎながら浅いレンジをテンポよく巻けるかどうかというのは、クランクベイトを選ぶうえで意外に大事なポイントなんです

LC MTO1.0”と比較するとボリューム感が増すため、できればローライトや風雨などのプラス要素があるコンディションで使うのが理想的。なお、アフタースポーン期になれば同じく潜行深度の浅い“Fat CB BDS Magic 2.2”の出番が増えるのだが、こちらはまた別の機会に紹介したい。

記事&写真 水藤友基

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