見出し画像

THE HARDBAIT #010 「真冬でもシャローの可能性は捨てない」

2月上旬。1年でもっとも厳しい時期を迎えた将監川(利根川水系)を、高橋一夫さんとともに訪れた。朝の冷え込みはそれほどきつくないように感じられたが、魚探の電源を入れてみると、そこに表示されたのは「水温4.8℃」という数値だった。

高橋「2日前にチェックしたときより、さらに1.5℃ぐらい下がっています。その日の釣果は知人がシャッドで1尾のみ。しかもスレがかりでした(笑)」

ワンバイトすら貴重なこのタイミングだからこそ、信頼のおけるルアー以外は投げたくない。高橋さんが最初に選んだのは「KJフラット1.5」。ショートリップのフラットサイドクランクで、厳寒期にいい思いをした記憶の多いルアーだという。まったく真逆の季節、煮えたぎるような真夏の高水温期にもハマることがあるそうだ。

まずは将監川の入り口にあるレンタルボート店から1.5kmほど西へ移動。日当たりのいい北岸のシャローバンクから流しはじめた。ボートポジションの水深は1m強、この時期にしてはかなり浅い印象だ。

30分ほどチェックしてから「SKT MR」にローテーションする。よりタイトな泳ぎならどうか? 通すレンジやルアーのボリュームはさほど変えないまま、アクションの違いで反応を見る

ブレイクが岸に寄りはじめたあたりで、今度は「ライトニングポインター110SP」を手に取った。こちらも意識しているのはシャローレンジ。ブレイク沿いの杭に差してきた個体がいるかもしれない。ロッドワークはかなりソフト。厳冬期はキラッ、キラッとフラッシングさせる程度のアクション&ポーズがいい

高橋「ルアーのサイズ的には、10cm前後のイナッコ(ボラの幼魚)などをイメージしたセレクトでもあります。そういうベイトが表層や中層に浮いていれば最高なんですが、今日はボトム付近にチラホラ映るだけですね」

その後、ようやくスピニングを握って一段下のレンジを試す。「ベビーシャッド60FC」で水深2m前後に点在するオダなどを探った。この時点で開始からすでに2時間半が経過。一般的には「冬=ディープ」が定石だが、なぜそこまでシャローにこだわったのか。

高橋「真冬の状態ではあるけれど、ひょっとしたら春を意識して動いている魚がいるかもしれない。越冬場所も当然チェックしますが、冬はあまり決めつけないほうがいい、というのが僕の実感です」

数年前の同時期、高橋さんはこの川で衝撃的な場面を目撃している。友人がフロッグをドシャローに投げて50cm級をキャッチしたのだ。水深はわずか20〜30cm。とくに深場が近接しているわけでもなく、大半のアングラーが素通りするプアな場所。低水温とは思えないほど激しい食い方だったという。

高橋「バスの数だけを考えるなら、ディープの越冬場所のほうが魚は多いはず。でも、それが全部食うわけじゃないですよね、そもそも活性が低いのだから。だとしたら、絶対数は少なくても浅いところに動いてくる魚のほうが口を使う確率は高まる、という考え方もあるわけです」

記事&写真 水藤友基

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?