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THE HARDBAIT#017, #018

「高滝湖とビーフリーズ65SP

牛久沼や将監川をホームレイクとして、H-1グランプリで輝かしい戦歴を重ねてきた高橋一夫さん。今ではハードベイトの使い手として知られているが、かつてはNBCチャプターに参戦して本格的なフィネスに取り組んでいた時代もあった。

高橋「慣れ親しんだマッディシャローの釣りには自信があった反面、どうしてもリザーバーの釣りには苦手意識がありました。それを克服しようと思って高滝湖に通っていた時期があります」

高滝湖は房総リザーバーのなかでも小規模なフィールド。バンクは変化が少なく、ワカサギが放流されているため沖のストラクチャーが鍵を握ることが多い。トーナメントともなれば一級スポットには船団が生まれ、そのなかから特定のスペシャリストだけが上位に食い込むウエイトを持ち帰ってくる……そんな環境に、高橋さんは大いに刺激を受けたという。

高橋「二十歳そこそこの選手がスキッピングしながらバスをカバーに追い込んで、そこにスモラバを撃ち込んで食わせるのを目撃したとき、自分にはぜったい勝てないと思いました(笑)。実はそれが若かりしころの折金一樹さんだったんですが」

そんな高滝湖では幾多のローカルメソッドが生まれ、ほかのフィールドにも波及していった。なかでも知名度が高いのが「ビーフリーズ65SP」を用いたパターンだろう。とりわけ『プロブルー』はこの湖に欠かせないカラーとして、一大ムーブメントを巻き起こした。

特徴的だったのは、トゥイッチやジャークで使うのが一般的だったミノーを「リトリーブ」主体で使っていた点だ。超ハイスピードで巻いても姿勢を崩さない優秀さから「高滝巻き」なる造語まで生まれたほど。

高橋「使い手によっても微妙にアプローチが違っていたように記憶しています。ポーズを入れたときに“コロッ”とロールするのが効くという説もありましたね。当時はヌメヌメっと泳ぐミノーが大半で、ビーフリーズのように“プルプルッ”とアピールするものが少なかったことも、今思えば効果的だったように思います」

ワカサギが産卵で接岸する2〜3月などは普通の速度でタダ巻きスポーニングシーズンから初夏にかけてはトゥイッチ&ポーズでバスを気づかせ、呼び込んで反応させる、というのが高橋さんの使い方。

高橋「ビーフリーズとのローテーションでシャッドもよく投げていました。使い分けは簡単で、ベイトが浅いレンジでうわずっているときはミノーでOK。それよりも一段下、たとえば水深1.5〜2m台に反応が多ければシャッドを多用します」

今回の取材は5月中旬に行なった。数日前の雨でかなりの水が流入し、朝は水温16℃前後と、この時期にしては冷え込んだ状態。ビーフリーズ65SPやフラットサイドクランク、各種トップウォーターなどを試したが、浅いレンジでまったくといっていいほど反応がない。蔓延した濁りも影響しているようだ。

そこでベビーシャッド60SPに切り替え、支流の古敷谷川へ。岬状になったハードボトムのストレッチを巻いていくと、ねらいどおりにバイトが出た。

高橋「ここはバスが回遊するルートになっているだろうなと思いました。バンクが張り出して川幅が狭まっているので、ベイトフィッシュとリンクしやすい地形なんでしょうね」

ちなみに、高橋さんがこのフィールドをしっかり釣り込むのは数年ぶりのこと。濁り+冷え込みという不安定な状況のなかでも「釣れる要素、魚の好む条件」を理解しているからこそ引き出せた1尾だったと言えるだろう。そしてわずか10分後、同じストレッチで2尾めがロッドを曲げたのだった。

「アフタースポーンと3つのスイッシャー」

シーズナルパターンという概念がもっともリアルにアングラーの眼前に現れる季節、それが「スポーニングシーズン」ではないだろうか。ブラックバスにとっては年に一度の大イベントであり、行動の大半が「産卵」によって左右されてゆく。

とはいえ、実際に水中でなにが起こっているのか、バスが産卵のどの段階にあるのかをアングラーが正確に把握することは難しい。浅いレンジにベッドができたり、目視できる範囲を魚がウロウロしていたとしても……である。

その象徴的な例が2015年のH-1グランプリ・牛久沼戦だった。5月後半の開催であり、Tシャツ一枚で過ごせる陽気から「アーリーサマー」の意識でパターンを組むアングラーが多かったが、優勝した高橋一夫さんは季節の遅れを察知していた。

高橋「サクラがなかなか咲かないほど寒い春で、スポーンも例年より遅かったんです。アフタースポーンの個体、フライ(バスの稚魚)を守っているような魚が多いだろうと考えていました。何人もの選手とバッティングしましたが、流れの当たるアウトサイドをやっている人が多かった。実際には流れの弱いところ、フライが溜まっているようなスポットが良かったんです」

ノーバイトの選手が続出するなか、高橋さんは試合中に10バイト以上という圧巻の釣りを展開、トップウォータールアーだけで4440gを持ち込んで勝利。ことほどさように「季節感」を把握するのは難しく、そして重要な作業なのだろう。

高橋「アフタースポーンのバスの行動を考えるとき、僕が意識することは大きく分けてふたつです。ひとつはシャローカバーや縦ストに浮いてエサを食う魚。もうひとつは、沖にボケーッと浮いているタイプの魚です」

前者はねらうスポットが特定しやすいため、ポッパーなど移動距離の短いトップでねらうことが多い。この時期の定番パターンのひとつだ。ただし誰もがチェックするバンク際のスポットが多く、プレッシャーに晒されやすい釣りとも言える。

高橋「一方で、沖に浮いている魚はスイッシャー系でスローにアプローチすると意外に簡単に食ってくることも。牛久沼のような浅いところならバズベイトもアリ。ただしリザーバーだとスピードが速すぎてハマりにくい印象があります」

このような状況で高橋さんが使うスイッシャーは3種類。スプラッシュテールケリーJ、そしてトネスプラッシュだ。

サウンドがいちばんおとなしいのがスプラッシュテール。ペラが“シャラシャラ……”と鳴るケリーJは少しアピールを増したいときにローテーションする。シルエットが近いせいか、ブルーギルが多いところでも反応が増える傾向がある。

高橋「最後のトネスプラッシュは、本来は首を振らせて使う設計なのですが、僕はほかのふたつと同様にリトリーブで使うことも多いです。カップが水を押すので、普通のスイッシャーよりも強い引き波を発生させることができるんです」

記事&写真 水藤友基

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