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THE HARDBAIT #008 「コールドウォータークランキングと“浮力”の調節」

冬攻略のルアーといえば、ダウンショットリグやメタルバイブなどがまっさきに候補に挙がるだろう。しかしそれは低水温で活動が鈍ったバス、いわゆる「越冬系」の口をこじ開けるための方法にすぎない。

一方、鈴木美津男さんが実践しているのは「体力のあるバスがエサを食うために動く一瞬のタイミングを、ハードベイトで捉える」というスタイル。パンパンに太って脂が乗った、コンディションのいい魚に照準を合わせることができるアプローチだ。

鈴木「釣れる場所に共通するのは、真冬でも生命感があること。ときには水面でベイトフィッシュがピチャピチャ波紋を立てていたする。そういうスポットを一箇所でも見つけたら何度も入り直す価値があります」

たとえば、鈴木さんの得意とする牛久沼や印旛沼ではブレイクに絡む沖のフラットなどが真冬の一等地。前回の記事でも紹介したとおり、少しでも水の動くエリアが熱い。コイなどの他魚種が溜まっているかどうかもヒントになる。

鈴木「ルアーのバリエーションが少なかった20年ほど前は、ステイシー60SPのリップを丸く削って潜航深度を抑えるチューンが非常に効果的でした。今ならビーフリーズの各タイプでもいいし、BDS1.2のような潜航深度の浅いクランクも使います。ブレイクをスローに攻めるときはクラッチDRも使用頻度が高いです」

低水温期の巻き物といえば、圧倒的にシャッドの人気が高い。弱くてタイトなアクションでないと冬のバスは口を使いづらい、というのがセオリーになっているが、クランクのワイドな泳ぎは嫌われないのだろうか。

鈴木「どちらが効くかはケースバイケースだと考えています。印象に残っているのは、H-1グランプリのゲストで日本を訪れたスキート・リース。12月の将監川で、当初はタイトなSKTシリーズを使っていましたが、スローに巻くためにRTO1.5にローテーションして見事リミットメイクを果たしました」

シャッドに比べてリップが幅広く、障害物回避性能が高いのもクランクのよさ。それを生かして、鈴木さんはあえてシンキングにチューンすることもあるという。リップやボディーに鉛を貼ってもいいし、フロントフックの代わりにウエイトを設置すればさらに根掛かりが減らせる。

鈴木「ここだけの話ですが、RC0.5DDが登場したとき、僕の手元に届いたモデルがなぜかスローシンキングだったんですよ。本来はフローティングのはずなのに? と思ったら、実はそれ、リック・クランの特注モデルが混入していた(笑)。僕自身、昔からシャッドラップをサスペンドチューンして使ったりしてきたので、アメリカでもやっぱりこういうものを使うんだなと、納得の出来事でした」

最後に、クラッチ・シリーズのマテリアルについても触れておきたい。高浮力が売りのボーン素材、そしてオーソドックスなクリア素材の2タイプが存在するが、厳密に分類すると「クリア素材+反射板内蔵」のバージョンが、もっとも浮力が低い。これは鈴木さんのリクエストでラインナップに加えられたものだという。その意図は……、もうおわかりだろう。

記事&写真 水藤友基


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