雨のあいま、きみとふたり、
ともちーお誕生日おめでとう!!
そして前に会ったとき素敵な絵をありがとう。大和さんかわいかったな……
とうらぶ、の、ともちー創作審神者の小梅ちゃんとまんばちゃんです。解釈が本家の設定と違ったらごめん!!三次創作ということで許してもらえると幸いです!!!!
小梅ちゃんは可愛らしくしなやかに強いイメージだがあります。かわいい。でもかわいいだけじゃない感。うまく表現できなかった……和菓子が食べたいということだけは分かってもらえると思う……
とにかく、ともちーお誕生日おめでとう!!
*
紫陽花の、季節がやってきた。
この花は、土壌の性質で色を変えるらしい。赤、青、紫と、くっきりした色の塊もあれば、混ざったような色合いのものもある。本丸の植物は畑に育てている野菜などを別にすれば特別な手入れをしているわけではないが、環境が良いのか、立派に育つものが多かった。もっとも、「立派に」というのはそこまで花に興味のない俺が記憶にある限り、割合、という程度のことで、その比較対象は万屋付近であったり、主に着いて行く会議で訪れる場所という限られた場所でふと見かけたものたちだ。もしかしたらもっと大きく、たくさんの花が咲き誇る場所があるのかもしれないが、季節になると主である彼女が、本丸の紫陽花に「立派に咲きましたね」と目を細めるので、「立派」なのだと思う。俺にはそれで充分だった。
襖を開け放すと、外の紫陽花が朝止んだ雨の露に濡れているのが見える。朝一番の執務を終え、昼までもうひと頑張り、というときに、こうして空気の入れ替えを兼ねて外を見ながら一息つくのが最近の日課になっていた。というか、主は集中すると寝食を忘れることがあるので、適当なところで休憩をとるよう声をかけるのが近侍としての日課だった。今日も俺が襖を開け放したのに気づいているのかいないのか、ずっと書類を睨み、中断する気配がない。熱心なのは良いことだが、その真面目さを知っているからこそ、傍で見ていて心配は尽きない。
「……そろそろ休憩だ。アンタの友達からもらった練り切りがある。日持ちはしないぞ」
「う、そ、そうですね……それはいただきたいです」
ぴたり、観念したように手が止まる。長谷部や燭台切のように、細やかな気配りをできる自信はないが、ここまで一緒にいれば主の性格も、接し方も慣れたものだ。彼女は誰かの好意を無下にできる性格ではなく、心から喜んでしまう性質だから、休憩のときの供にする茶菓子はなるべく彼女の友人である審神者から貰ったものや、この本丸の誰それが作ったものだということを強調して出すようにしていた。
今日食べる練り切りも、主の友人である審神者の本丸を訪ねたときに貰ったものだが、お陰で主が休憩をしっかりとってくれるようになった、と最近良く貰う菓子への礼を伝えたら、くすくすと笑われてしまって居た堪れなかったのを覚えている。悪意のある笑いではなかったが、俺の心中を分かられているようで気恥ずかしかったのだ。……目の前の主も、もうすこし戦術以外のことにも聡ければ、と思わないこともない。特に自分に対する心配や、慕情なんかに。
「……国広さん?どうかしました?」
「……何でもない。茶を淹れて支度をすぐにするから、休んでいろ」
「はあい。ありがとうございます」
最初は遠慮のしどおしだったが、こうして素直にこちらのする些細な世話を受け止めてくれるようになったのは、気を許した証のようで、悪くない。悪くないがそんなことは顔に出さないようにして、茶と菓子の準備をした。主の分を机に置けば、わあ、と嬉しそうな声が上がる。
「綺麗……紫陽花ですね」
「季節に合わせたものにした、と貰ったときに言っていた。外に咲いているのと色が似ているな」
練り切りの餡は薄紫で、露に見立てた琥珀糖がきらめいている。目を輝かせてしばらく見つめていた主だが、やっと自分の分を小さく切り分け口に運んだ。おいしい、と顔を綻ばせる。相変わらず、幸せそうに食べる。
襖の外の本物と甘やかな和菓子の紫陽花を見比べ、堪能しつつしばらく静かな時間を過ごしていたが、食べ終わって茶を飲んでいた頃に、主がふと話し出した。
「紫陽花って、散ることを、『しがみつく』と言うそうです」
「花によって言い方が違うのか?」
「桜は『散る』、椿は『落ちる』、菊は『舞う』。日本語ってすごいですね。その中でも紫陽花は枯れても茎に花がしがみつくように残るから、潔くない、とか、あとは色が変わるから心変わりの象徴だとか、嫌われてきたんですかね。良くないことをたくさん言われてきたみたいです」
「……まあ、昔の人間は縁起をやたら気にするしな。……主は、どうなんだ」
「私、ですか?」
ふと、気になって問いかける。首を傾げて、すこし考えた後、彼女は襖の外の紫陽花に優しげな視線を投げかけながら口を開いた。
「わたしは、好きですよ、紫陽花。色が変わろうが、枯れようが、……周りから何を言われようが、こうして生を全うするなら、見習いたいとすら、思います」
「……そうか。……、俺も、好きだ」
ああ、これは、まずかったかもしれない。紫陽花を理由に、それでも好きだという言葉には、目の前の彼女への愛おしさが滲み出てしまったように思う。いくら自分への好意に鈍い主であっても、さすがに、と焦って、「……紫陽花が」と付け加えた。俺も、臆病だなと思う。紫陽花も好きだが、そんな強さを内に秘める主のことが、ときちんと伝えられたらいいのに。
「国広さんもですか?綺麗ですもんね」
全く気付いた様子もないその満面の笑顔に、ここまで鈍いのもどうなんだ、と心の中で突っ込んでしまう。……まあ、また機会を改めることにしよう、と思う。
雨のあいま、きみとふたり、
雲の隙間から、光が射してきた。午後は晴れそうだ。心地よい風が部屋へ吹き込んで、彼女の髪を、揺らした。
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