君を覆う優しい銀河

しみさんお誕生日おめでとう!!!!遅すぎ!!!!
リクエストを聞いたら、「六弥ナギの写真集発売記念握手会にファンとして行く話」とのことで、最初の短い部分をまず書きました。カードに印刷したせいもあってあまりにも短い上に書きたいこと全然書けなかったので、書きやすい大和さん視点で付け足してみた。
本編やラビチャにかぶったり真似したような言い回しがあったらすみません、覚えてない……。登場人物的にナギヤマだけど、恋愛じゃないような気持ちで書いています。

お題はいつものように「約30の嘘」さまより。


「失敗して、褒められたのは初めてです」

握手会。わたしが緊張しながら、先日のバラエティー番組の感想を述べると、ナギくんはきょとんとした表情でそう返してきた。前回の企画は、博識であり、運動神経も良い彼にしては珍しく失敗続きだったのだ。語弊があっただろうか、と慌てて言い直す。

「あの、失敗は残念だったけど、楽しそうで、笑顔も素敵だったので」
「……失敗したワタシを見て、幻滅しませんか?」

不安げな表情。この人でもそんな気持ちになることがあるんだな、と意外だった。握手した両手に、力を込める。

「まさか。大好きです。これからも色々な表情のナギくんを見せてください」

いちファンのわたしにできることなどたかが知れているけれど、伝えておきたい、と思った。
ありがとうございます、と、彼はわたしがいちばん大好きな、柔らかな顔で笑ってくれた。わたしは明日からまた頑張れる、という気持ちになった。あなたがきらきらと、輝いてくれるから。



ドラマの撮影で遅くなったせいで、その日は風呂から上がる頃にはもう日付が変わっていた。ビールを飲もうか、やめておこうか、と考えながら居間に来ると、そこには先客がいた。

「ナギ?まだ起きてんのか。今日はアニメの日じゃねえだろ」
「ヤマト」

自室ではなく居間での夜更かしは珍しい。何か心配ごとでもあったのかと近くに寄ると、机の上にはどっさりと積み重なったファンレター。穏やかな表情に、何かあったわけではなさそうだとほっとする。ナギは読んでいた便箋を折り畳み、大切そうに封筒に戻した。

「今日の握手会の時のやつ見てたのか。邪魔しちまったな」
「いいえ。もう全て、文章を覚えるほど読み込んでしまいましたから大丈夫です」
「ナギはモデルの仕事も多かったから、最初から写真集を出して欲しいって声も多かったけど、何だかんだ出るまで結構かかったもんな。ファンの子たちも喜んでたろ?」
「はい。……たくさんの、嬉しい言葉を、気持ちを、もらえました」

ナギは、しみじみと、思い返すように言った。アイドリッシュセブンとしての握手会もやったことがないわけではないが、今日はナギだけの写真集発売記念のイベントだった。ファンの子ももちろんだが、自分を熱心に応援してくれている子たちと接する機会を個別に持つのはナギとしても感慨深いことだったろう。

「……ワタシには、自信があります。整った容姿も、能力も。人々は美しく、期待に応えてくれるものを愛すると知っていたから、ワタシが愛されるのは当然のことと思っていました。………けれど、彼女たちは、ワタシが失敗しても、楽しそうなら嬉しい、好きだと言ってくれる。完璧なだけでなく、色々な姿を見たいと」
「……そっか」
「……何と深く、穏やかな愛情でしょう。ワタシを見る瞳が、きらきらと美しくて、皆さんの瞳が全て星々のようでした。何故あそこまでワタシのことを、優しく想って下さるのでしょう」
「……それは、もう充分分かってるだろ」

ぽんぽん、と頭を軽く叩く。愛情を受け止めるときのナギは、本当に純粋で、真っ直ぐで、汚れを知らない幼子のようだ。

「お前が成功する人間だからじゃない。……お前が、お前だからだよ、ナギ」
「……、ワタシが、ワタシだから」

ナギは反芻するように呟く。余りにも子供に言い聞かせるような声音になってしまったのが気恥ずかしく、さあ、もう寝ろ、と促すと、そうですね、と素直に片付けを始め、おやすみなさいと幸福そうな表情で自室に戻っていった。

「……俺は、お前のファンの子たちの気持ちが良く分かるよ」

もうすっかり遅い時間だ。
明日、写真集の特集が組まれるはずの朝の情報番組の録画予約をしなくては、と考えているうちに、ビールのことは頭からすっかり抜けてしまっていた。


君を覆う優しい銀河
(星々がうつくしくあたたかいのは、きみが優しく輝くからだ)

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