【イベント・レポート】森と海、葉っぱアートで体験する地球のメッセージ

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アドミュージアム東京では、これまでCMづくりを体感してもらうプログラムなど“クリエイティブ力を育む”イベントを開催してきました。今回は「葉っぱアート」という、画用紙にウロコに見立てた落ち葉をのり付けして、海に住む架空の生き物を創作する体験イベントに取り組みます。
「豊かな森は豊かな海を育む」と言われます。葉っぱアートのワークショップを体験しながら海と森の関係性や、これからの私たちがとるべき行動についても考えるきっかけになればと今回のプログラムを開催しました。

講師に、元・電通ECDで「葉っぱアーティスト」でもある本田亮さんを迎え、落ち葉が舞う2019年11月23日(土)に開催されました。参加者は23名(同伴の保護者を入れると33名)で、小学生を中心に、なかには50~60代女性もおられます。

クリエイティビティが大切なワケ
イベントは、本田さんが今までの活動を通して、大切にしてきた“軸”についての講演から出発です。

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「私はサラリーマン時代から、今の葉っぱアーティスト活動まで“クリエイティブ”と“アイデア”を軸に歩んできました。
この経験からわかったのは、豊かな発想力さえあれば、どんな世界でもうまくいくということ。たとえば、世の中にない事業を思いつけばベンチャー企業の社長になれるし、空想力を生かせば作家にもなれます。
逆に、外側の技術だけ磨いても、実際にどういうものをつくりたい、という思いがなければ、おもしろいものにならないと思うんです」と、子どもと保護者に語りかけます。

葉っぱアートで創造力を育む
では、独自の考えが持てるようになるには、どうすればよいのでしょうか。本田さんは「頭をやわらかくすることです。それには、葉っぱアートに取り組むのが最適です」と、ずばり、指摘します。

この活動が、創造力を鍛える訳は、つくるプロセスにありそうです。その流れとは、まず、森や公園に、落ち葉を探しに出かけるところから始まります(※今回のワークショップではこのステップは省略しています)。
次に、画用紙に、自由にイメージした海の生き物を描いていきます。この下絵に沿って、持って帰ってきた葉をのりで貼りつけ、目玉をつけて完成です。
森を探索すれば、「珍しい形の落ち葉がある」「触るとザラザラしている」など、たくさんの“気づき”が得られます。これが頭を刺激して、思いがけないひらめきにつながるのです。

下絵とのり付けの工程では、想像を具体的なものに設計するデザイン力を伸ばせます。ここで、手を動かしながら、試行錯誤することで、工夫する力も養えるのです。
そもそも、葉っぱアートの着想自体が独創的だと本田さんはいいます。「普段、ゴミとして扱われる落ち葉を、アートの素材として再利用してしまう逆転の発想だからです」と、固定概念に囚われない大切さ、そして豊かな森が豊かな海を育むことなどを、子どもたちに熱心に説いていました。

さぁ、実践してみよう!

実際に、ワークショップはどのように進められたのか、つくり方のコツと、会場の様子を振り返っていきたいと思います。

STEP① 海の生き物の下絵を描く

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画用紙に、想像上の海洋生物を大まかに描いていきます。この時のポイントは、画用紙いっぱいに描くこと。下絵が小さいと、使う葉が3枚くらいで済んでしまうので、完成したときの迫力が出ないからです。
子どもたちは、想像力を発揮しながら、オリジナルな生き物を描いていきます。隣に座る参加者の下絵を眼の端にとらえながらも、それと被らないように独自性を追求する子もいました。

STEP② イメージに合う葉っぱを選ぶ
生き物のパーツとなるような落ち葉を選びます。いろいろな葉の色や形を使った方が、カラフルでいきいきとした生き物を生み出せるのです。

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子どもたちは、落ち葉の山をかき分けながら、一枚ずつ、真剣に選んでいきます。そうしていくうちに、具体的なイメージがふくらんでくるようです。「紅葉のギザギザ部分を歯にして、凶暴さを出そう!」と、葉の形から着想をえる子もいました。
ある女の子は、葉の表面をなでながら、種類によって触り心地が違うことに驚いていましたが、まさしく五感が刺激される、感動と発見の体験だったようです。

STEP③ 葉っぱを貼りつけ、生き物を形づくる
落ち葉の茎を切り、下絵にそって、のりで貼りつけてきます。
この時の注意点は、茎以外にはハサミを入れないこと。葉も切ってしまうと、どんな形の生き物もつくれてしまいます。「自然の姿をそのまま生かす」という制限があった方が、創意工夫する経験がえられるのです。

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子どもたちは、それぞれオリジナリティを出そうと夢中です。ある男の子は、異なる種類の落ち葉をたくさん重ねて、立体感のあるウロコをつくっていました。
他のテーブルでは、女の子が“しっぽ”に見立てた葉を、画用紙からはみ出させ、「すごいでしょ」と、隣に座るお父さんに得意げに見せています。確かに、生き物が飛び跳ねているようです。

一方、お父さんやお母さんが、茎を切って、子どもに手渡す様子も見受けられました。こうした親子の共同作業で、世界で一つだけの作品が出来上がっていきます。

STEP④ 生き物に名前をつけて、目玉のシールを貼れば完成!
葉っぱを貼り終えたら、生き物に名前を付けます。
最後に、目玉を付けるために、大小の黒や白のシールからイメージの合うものを貼れば、完成です。目玉があれば本当にリアルな生き物に見えるので、欠かせない作業です。

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目玉をつけるステップでは「(生き物が)斜め上を見ているようにしたい」と、白い円形シールの上に、それより小さな黒い円形シールを、真ん中ではなく、右上に少しずらして付ける子もいます。子どもたちは、最後まで新しいアイデアを生み出しながら、ワークショップにのめり込んでいました。

ひらめきの個性を実感
完成すると次々に、作品を壁に貼っていきますが、23匹の個性豊かな生き物たちが、壁一面を彩る様は圧巻です。
みんなの前で発表する意味について、本田さんは「同じお題でつくっても、これだけ違う生き物ができることがわかりますね。友達の作品を見るっていうのは、個性の違いを理解することにつながって、すごく勉強になるんです」と、解説します。

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ワークショップの締めくくりは、子どものクリエイティビティを引き出す上で、親が気を付けるべきポイントの提案でした。
「子どもは自分がつくりたいものがはっきりしています。大人がアドバイスしてしまうと、せっかくの柔軟な発想が損なわれてしまいますので、のびのびと、あり得ないものをつくらせる。これが、この葉っぱアートのおもしろいところだと思います」(本田さん)。

子どもたちは自分がつくった作品を、大切そうに抱えながら笑顔で帰っていきましたが、自由にひらめきを形にするおもしろさを体感できるイベントとなったことでしょう。

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