マガジンのカバー画像

江戸の広告作法

12
江戸の町人文化に華開いた、あの手この手の宣伝広告。 そこには「粋・洒落」などの美意識の中で洗練された広告の作法がありました。世界に類を見ない独創的なアイデアや表現を当館のコレクシ…
運営しているクリエイター

#江戸

第11回「江戸の旅ブーム」

江戸時代も旅は憧れ。旅へ誘う広重の風景版画。 しかし、そこにはさりげなく広告の匂いが! 江戸の旅ブームを作った、広重の錦絵はカラービジュアルメディア。 1枚のポスターを見て、「そうだ京都、行こう」なんて思ったことはありませんか? どんなに言葉を尽くすよりも、たった1枚の写真が人の心をつかみ、巧みに旅へと誘う。そんなカラービジュアルメディアは江戸にもありました。ご存じ、北斎や広重の極彩色の錦絵に江戸の人びとは大いに魅了され、旅への憧れに胸を膨らませたのです。 江戸末期は、弥次さ

「えどばたいじんぐ」が書籍になりました!

コラム「えどばたいじんぐ」が書籍になりました! 『江戸の広告作法~えどばたいじんぐ~』 アドミュージアム東京学芸員 坂口由之著 1,850円(税込み)10月1日発刊  *書籍はミュージアムショップのみで販売しています(一般書店では販売していません) (著者より) 粋と洒落と遊び心の江戸の広告を「えどばたいじんぐ」と洒落てみました。 今日の広告のルーツともいえる、あの手この手の広告アイデアが満載です。アドミュージアム東京の常設展示作品をさらに深く楽しく解説した本になっていま

第6回「コミック ――それはどこから生まれたのか?」

「ONE PIECE」に「名探偵コナン」、「ドラゴンボール」に「ドラえもん」……、世界が注目する漫画やアニメを生み出す「コミック」は、クールジャパンの代表格で、もはや日本が誇るメインの「文化」になっています。かく言う私も、学生時代に創刊された青年コミック雑誌を今に至るまで、なんと50年間も愛読しているんです(笑)。 ただ、そんなコミックのルーツが江戸時代にあることは、みなさまご存じですか? さらに驚くことに、現代で花咲く広告手法の一つ、各メディアの特徴を活かした、企業ブラン

第5回「江戸の流行情報を満載の双六(すごろく)!」

「東海道五十三 駅見立 江都名物当時流行双六」文政~天保年間 この絵双六は江戸で評判のショップやグルメ、流行りものを紹介する最新のニュース報道であり、子供も大人も一緒に楽しめるゲームソフトでした。東海道五十三次の道中(どうちゅう)を題材とする、この「江都名物当時流行双六(えどめいぶつとうじりゅうこうすごろく)」は、遊びと広告の両面を備えた、トレンド情報満載のツールだったのです。そもそも道中双六とは、お伊勢参りなどの旅行ブームにあやかって、宿場町やその土地の名物を紹介し、旅の

第1回「チラシの元祖、ここに!」

「現金掛け値なし」の新商法を伝えた引札(ひきふだ)1683(天和3)年4月、一枚の刷物(すりもの)が江戸全市中の家々に配られました。その内容は三井越後屋(三越の前身)が店舗を駿河町に移転した際に、革新的な販売方法を、改めて多くの人に知らせるものでした。これが引札と呼ばれ、今日のチラシ広告の始まりです。のれんや看板とちがい、向こうから飛び込んでくる宣伝物に、世間はびっくりしたことでしょう。 「江戸中の家数を知る呉服店」と川柳に詠まれるほどでした。 引札には「今度、私工夫をもって