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今年良かった本

2020年は自宅にいる時間が例年よりも多かったせいか、今までの中で最も多く本を読んだ年となった。

初めは正直本を純粋に楽しみたいという気持ちよりも、なんとなく暇つぶしに、或いは本棚びっちり埋まっている人がかっこいいという程度のきっかけだった。
それが次第に夜寝る前の睡眠剤代わりに、また風呂で汗をかき運動代わりに?なるように、またはというモチベーションへと変わっていった。
そして秋頃だったろうか、気づけば本が読みたいという純粋な?動機でスラスラ本を読んでいたのである。これは文字嫌いで小中高の図書室などほとんど滞在したことない自分からすれば、大成長である。

今年読んだ本の種類はうーん小説や新書、ドキュメンタリー、まあ雑誌や薄い評論などである。
共感いただけるかもしれないが、新書を読みたくなる時期、長く上下巻に分かれるような小説を読みたくなる時期、逆に100ページ程度の薄い小説や短編集をさらっと読みたくなる時期が交互にやってくるようだ。
うーんとなんだろう、新書の中でも経済、法律、歴史関係書などはやはり難しく、取っつきにくいことが多い。ただ積極的に読んでいくことで、数年後少しは役に立つといいのだが。。反対に文化、芸術関係のものは自身の経験や今までの知識と共存させることができるため、すんなりと入ってくる節があった(当たり前かもだが)。

ここからは今年読んで良かった本について紹介させていただく。


・堀江敏幸 『熊の敷石』

ストーリー自体の展開は少なく、どんでん返しなどは起こらないが、本当に素敵な文章だと思う。素敵という語彙力の無さに呆れるが、川上弘美さんの解説も良かった。
フランス文学を専門とする大学教授でもある彼にしか書けない文章で、各編のタイトルはフランスのことわざから取っているものだという。読後じんわりと、ああ良い本を読んでしまったなあと感じるようなものだった。
また著者の雪沼とその周辺も今年読んだ中ですごく好きな本だった。

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・伊藤計劃『虐殺器官』

数年前に亡くなった伝説的なSF作家がいることをSNSで知り、買った本。一言で本当に緊張感を引き出す表現ばかりで、一気に読み終えてしまった。登場人物や武器の描写が特にリアルだった。
また亡くなる直前まで更新されている彼のブログを読むととても穏やかな人だったのではと想像してしまう。今年亡くなった友人が死の3日前までSNSを更新、2日前には他の友人と電話していたことなどを知り彼と重ねてしまった。

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・五十嵐太郎『現代建築に関する16章』

建築に関して特に知識のない自分としては分からない部分もあったが、建築物の外観や内観をもっと注視してみようと思える本だった。また自宅近くにも有名建築家設計による老人ホームがあることを知り散歩がてら行ってみようと思った。

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・ポールオースター『幽霊たち』

Homecomings福富さんのお勧めで読んでみた一冊。NYのとあるアパートとその向かいのアパートで探していた人をストーカーするというストーリーの本である。文章自体は長くないが、柴田元幸氏による訳もすごくよかった。ポールオースターにはほかにもたくさん人気本があるようなので来年は5冊くらい読めるとよいな。

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・村上龍『愛と幻想のファシズム』

数年前からずっと積読状態だったこれを改めて読んでみようと思ったのはステイホーム時期だった。手に取ったのはたぶんかっこいいタイトルがきっかけだった。上下巻に分かれページ数も多いこの小説だが、村上龍の手腕により一気読みしてしまう。もちろんトウジの演説やアメリカや権力に対し牽制するシーンなども良いし、トウジとゼロが二人だけで極寒の北海道で狩猟をするシーンは一生心に残るだろう。

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・辺見庸『もの食う人びと』

1994年に講談社ノンフィクション賞を受賞した本作は世界各地の食文化を現地で体験するルポである。個人的には初めのバングラデシュでの残飯を残した人から買った「残飯の残飯」の話、従軍慰安婦として第二次世界大戦に差し出された方を訪問し、彼女たちの食事を体験する話など。暗いけど人は食べ続けなければいけないのである。

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・藤沢周『ブエノスアイレス午前零時』

地方のさびれた旅館で後ろめたいながらもどこかで自由を感じながら働く主人公。ある日そこに宿泊したツアー団体客の中には盲目の老婆。その二人が会話するタンゴのシーンは終盤のみなのだが、どこか必然的に出会ったのではと感じさせる著者の書き方が最高だった。冬場のみ、それも大して賑わっていない新潟あるいは長野あたりの田舎旅館の描写もリアルだった。

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・江村洋『ハプスブルク家』

中世から20世紀初頭まで絶大な勢力を誇ったハプスブルク家に着目、解説する一冊である。著者が学者であり、とにかくイメージがつかないことや登場人物の名前が覚えにくいことでかなり難しく、正直あまり理解できたとは言えないが、今後も芸術や歴史に触れる際に参照にしていくような一冊だろう。

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・中河与一『天の夕顔』

Wikipediaによると横光利一、川端康成と共に、新感覚派として活躍したらしく、それらの作家についても来年読んでみようと思った。ちなみに早く亡くなった人かとてっきり思っていたが、実は97歳とかなり長く生きてらしたらしい。ぶっちゃけ片方が既婚者であったというだけで、何十年も徹底的に理性が崩壊せずに行動を自制することができるのはすごいなと思う。

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他にも多くの本を読めてよかった。またそれらについても紹介したいと思う。すべての本を書店で買うのは難しく、古本屋やブックオフ経由の本も多かったが、それはそれでいいか。来年は個人的に忙しくもなるが、プレッシャーに感じず気ままに自分のペースで風呂で、トイレで、通学時間に、平日昼のファミレスやコーヒー屋さんで少しずつ読んでいけるとよいかな。また今年一読で理解しきれなかったものも、数年後読みなおすと印象も変わるだろうな。



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