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フォトエッセイ

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何気ない日常の中で、ふと気になってしまうモノ・コト。季節の写真を添えて、短い言葉にまとめたエッセイ集です。
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#神社

世界遺産「高野参詣道 三谷坂」を歩いて③【和歌山】

三谷坂を登り切り、無事、天野の里に到着。花盛祭の渡御行列を見るために、私たちは世界遺産・丹生都比売(にうつひめ)神社まで歩きました。 丹生都比売神社 花盛祭 丹生都比売神社の鳥居をくぐると、境内には参道の両側に色とりどりの花が飾られており、とても華やかな雰囲気でした。 ほどなく始まった渡御行列は、天狗の姿をした道開きの神・猿田彦さまが先頭です。 猿田彦さまに続いて、笛を吹く人、弓や刀を携える人、獅子頭を持つ人、お神輿を引く子どもたち……時代衣装をまとった行列が粛々と進ん

厄除け祈祷 ~丹生都比売神社へ~【和歌山】

今年は前厄なので、年が明けてから早いうちに厄除けのご祈祷をお願いしたいと思っていました。 地元の氏神様や、毎月一日にお参りしている和歌浦の玉津島神社さんなど、信用してお任せしたいところはいくつかあるのですが、なぜか、 「厄除けは丹生都比売(にうつひめ)神社でご祈祷を受けたい」 しっかりとそんな気持ちになったのです。 丹生都比売神社はかつらぎ町天野に鎮座する、高野山の守護神。弘法大師空海が密教を開く場を探していた際、高野山へ導く助けをしたとされる女神・丹生都比売さまがおまつり

南紀熊野 奇岩巡り⑥ 「神倉神社」

「那智駅」の次に向かったのは、新宮市の「神倉神社」。 「熊野速玉大社」の境外社で、源頼朝が寄進したと伝わる、500段を越える石段を上った先にある巨石「ゴトビキ岩」がご神体です。 ここからは縄文時代の祭祀跡が見つかっており、パワースポットとしても知られています。 私は三度目の参拝になるのですが、やはり石段はかなり手ごわく、ことに上り始めの傾斜の厳しさと、踏み石のばらばらな角度には難儀しました。 ひどい巻き爪に悩まされている次男は途中で断念し、一人で「熊野速玉大社」の方へ。何事

吉野水分神社の桜【奈良・吉野山】

もうすっかり春の深まった時期ではありますが、あとひとつだけ桜の風景にお付き合いくださいね。 4月4日には、奈良・吉野山へ桜を見に行きました。 朝5時に起きて6時には和歌山を出発、7時30分には吉野山に着いたのですが……なんと、いつもの下千本の駐車場はすでに満車!近鉄吉野駅近くの駐車場まで回ることとなりました。 昨年の吉野山では花々に勢いがあり、山を歩いているだけで明るく気圧されるような感じがあったのですが、今年はもうすでに葉桜への準備を整えている、そんな落ち着いたソメイヨ

黄落 ~flow Essence⑤

石造りの鳥居をくぐる前から、境内が金色に輝いているのが遠目に見てとれた。末広がりのささらな銀杏落葉が一面に散り敷かれ、その真ん中に背筋の伸びたご神木がすっくと立っている。はるかな青空にまで黄葉の明るさが届くほどの大銀杏だ。 「まあ、なんとすごい木やなあ」 「落葉も金色や」 コートを着込んだご婦人方、パグ犬を連れた少女、一眼レフを肩に掛けた革ジャンパーの男性……誰もが一様に大銀杏を見上げて、まずは笑顔になる。 黄金色の啓示を天から授かったかのように。 透けて見える枝の繊細な美

特別な音色

10月24日、野上八幡宮(和歌山県紀美野町)で、清水武志さんのピアノによるジャズコンサートが開かれました。 拝殿の前にYAMAHAのグランドピアノが置かれ、客席は境内の青空の下。椅子に置かれた温かな座布団のお心遣いがありがたかったです。 秋晴れの明るい陽が降り注ぎ、この日は絶好のコンサート日和でした。 私はあまり音楽には詳しくなく、ことにジャズはほぼ未経験です。有名なナンバーすら知らないので、楽しめるのかどうか、少し不安を感じていました。 でも、演奏が始まったとたん、やわら

結界の雨【丹生都比売神社】

その日、丹生都比売神社にはこまかな雨が降っていました。 9月上旬、まだ日々暑さの残る時期でしたが、駐車場に停めた車から降りると、半袖がすうっと肌寒く感じられるほど。丹生都比売神社の建つ天野の里には、もう秋の気が立ち込めていました。 ほどなく雨が小降りとなったため、折り畳み傘は鞄の中へ。ちらほら細い糸のような水が落ちてくる中、二つ目の鳥居をくぐると、ブーンと羽音がして、小さな虫が間近に飛んできました。左側に回り込んだとたん、羽音が止まったので、そっと左手を上げてみると、薬指に

変化招来・熊野本宮大社②【和歌山】

熊野本宮大社から歩いて5分ほどのところに、旧社地である大斎原(おおゆのはら)があります。 ちょうど実りの季節を迎え、大鳥居は黄金の中に浮かぶよう。風が吹くと稲穂がざわめき、ほのかな光が渡ってゆきます。 もともと「熊野坐(くまのにます)神社」と呼ばれていた熊野本宮大社は、かつてこの熊野川の中州の地にあり、多くの壮麗な社殿が建てられていたそうです。 ところが明治時代に大洪水が発生。ほとんどの社殿は流され、その後、辛うじて高台に遷されたのが現在の熊野本宮大社だということです。

変化招来・熊野本宮大社①【和歌山】

8月下旬、夫と二人で和歌山県本宮町にある熊野本宮大社を参拝しました。 熊野本宮大社は、京都から続く長い長い熊野古道の終着の地。 そしてまた、ここから熊野三山(熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社)を巡る「熊野詣で(くまのもうで)」の出発の地でもあります。 終わりでもあり始まりでもある、古い時代からの神域です。 参拝した日は残暑厳しく、駐車場から少し歩くだけで首のまわりがじりじりと熱くなってくるほど。 でも、鳥居をくぐり参道に入れば、深い緑に八月の強い光が遮られ、木漏れ日

「みちびき」と柿本神社【参拝】

夫の実家からの帰り道、伊勢部柿本神社(和歌山県海南市)に参拝しました。 ちょうど「風鈴まつり」の時期で、境内には色とりどりの風鈴が200個。 ガラスに漆を施したもの、根来塗の研ぎ出し技法を使ったものなど、紀州漆器の産地ならではの風鈴が、風に揺れてまろやかな音をたてています。 濃い緑は「早生みかん」、橙色は「完熟みかん」を表しているという、細かな設定もあるようです。 柿本神社は「元伊勢」と呼ばれる神社のひとつで、伊勢神宮の天照大神さまが現在の場所へお鎮まりになる前に、一時期こ

木漏れ日の星

和歌山市・伊太祁曽(いたきそ)神社の社殿の奥にある、古い桜の木。 たくさんの虫を養っているらしく、青葉はどれもこれも穴だらけです。 その穴からこぼれる無数の陽の光は、まるで満天の星のよう。 いつまでも立っていたくなる木下闇です。