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フォトエッセイ

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何気ない日常の中で、ふと気になってしまうモノ・コト。季節の写真を添えて、短い言葉にまとめたエッセイ集です。
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#みんなでつくる夏アルバム

変化招来・熊野本宮大社②【和歌山】

熊野本宮大社から歩いて5分ほどのところに、旧社地である大斎原(おおゆのはら)があります。 ちょうど実りの季節を迎え、大鳥居は黄金の中に浮かぶよう。風が吹くと稲穂がざわめき、ほのかな光が渡ってゆきます。 もともと「熊野坐(くまのにます)神社」と呼ばれていた熊野本宮大社は、かつてこの熊野川の中州の地にあり、多くの壮麗な社殿が建てられていたそうです。 ところが明治時代に大洪水が発生。ほとんどの社殿は流され、その後、辛うじて高台に遷されたのが現在の熊野本宮大社だということです。

変化招来・熊野本宮大社①【和歌山】

8月下旬、夫と二人で和歌山県本宮町にある熊野本宮大社を参拝しました。 熊野本宮大社は、京都から続く長い長い熊野古道の終着の地。 そしてまた、ここから熊野三山(熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社)を巡る「熊野詣で(くまのもうで)」の出発の地でもあります。 終わりでもあり始まりでもある、古い時代からの神域です。 参拝した日は残暑厳しく、駐車場から少し歩くだけで首のまわりがじりじりと熱くなってくるほど。 でも、鳥居をくぐり参道に入れば、深い緑に八月の強い光が遮られ、木漏れ日

鬼灯(ほおずき)と桔梗【釜滝薬師金剛寺】

お薬師さまにお礼を申し上げたいことがあり、久々に紀美野町(和歌山県)の釜滝薬師金剛寺へ参拝しました。 釜滝薬師金剛寺は「高野長峰(こうやながみね)霊場」第五番札所。 五十年に一度ご開帳される薬師如来さまは目の病に霊験あらたか、ひとの運命の変わり目にもお力を貸していただける仏さまです。 もったりと湿度の高かった真昼、参拝者は私ひとりだけ。 手水舎にはガラスの風鈴がいくつも吊られ、風が吹くたび透明な音の重なりが涼やかでした。 この日はお地蔵様の縁日でもあったため、可愛いお地蔵

「みちびき」と柿本神社【参拝】

夫の実家からの帰り道、伊勢部柿本神社(和歌山県海南市)に参拝しました。 ちょうど「風鈴まつり」の時期で、境内には色とりどりの風鈴が200個。 ガラスに漆を施したもの、根来塗の研ぎ出し技法を使ったものなど、紀州漆器の産地ならではの風鈴が、風に揺れてまろやかな音をたてています。 濃い緑は「早生みかん」、橙色は「完熟みかん」を表しているという、細かな設定もあるようです。 柿本神社は「元伊勢」と呼ばれる神社のひとつで、伊勢神宮の天照大神さまが現在の場所へお鎮まりになる前に、一時期こ