そうだ、山へ登ろう~高尾山~

土曜の朝。眼が覚めてすぐ、ごみを出しに外へ出た。あ、晴れてる。昨日の夜、ふと晴れたら山へ行こうかななんて思ったけれど、わざわざ山に登らなくたってお部屋で毛布にくるまってごろごろしているのもありだよねーなんて思ったりして。

ごみを捨て、階段をあがる背中にぽかぽかのお日さまがあたってる。あったかくて気持ちいい。こんな天気の良い休日はもうないかもしれないな。うん。

よし、山へ行こう。

部屋へ戻り、ありあわせのおかずを弁当箱へ詰めザックに必要と思われるものをいれる。バーナーとヤカン。コーヒーおとして飲むんだー。うー。あとはこれ。ジャーン。カップヌードル。一度やってみたかったんだよねー。山頂でふ~ふ~しながら食べるの。なにげにずっと夢でした。

今日、夢叶えます。

目指すは電車に乗ると1時間と少しで到着する都内の山。高尾山。混んでいるかもしれないけれどリフレッシュできればいいもんね。

最寄り駅で降りるとさすがの私も山を楽しめるかしらと不安になるくらい人が多かった。けれど皆さん、ケーブルで上るようで私の登るビワ滝コース。驚くぐらい人がいなくなった。

さらさらと流れる川のせせらぎ。まだ残る紅葉。癒されるー。

写真を撮っていると近くで同じように景色を撮っている人がいた。どちらが最初に話かけたのだろう。同時だったのかもしれない。

「綺麗ですね。」「本当ですね。」
何気ない挨拶からはじまった。

「電車、混んでましたね。」「はい。でも、このコースに入ると誰もいなくなって驚きました。」そんな会話をしながらなんとなく一緒に登り始める。

少ししてその人が岩手出身であることを知り話がはずんだ。銀座にある岩手のアンテナショップへ時々買物へ行くことや遠野の景色が素晴らしいことや雪が多くて驚いたこと。ひっつみが美味しいことも。

岩手で初めて菊の酢の物を食べて好きになったことを伝えると「あー。あれは僕、小さい頃キライでした。ご飯に菊って!」「確かにご飯に菊はちょっとあれですね。」

ふと足元を見ると靴の紐が解けていた。
「すみません。私、靴紐を結んでから行くのでお先にどうぞ。どこかで追いつくと思うので。」友達でもないし知り合いでもない。出会って間もないのに待ってて貰うのもどうなのかと思うし、足止めさせるのも申し訳ない。

よし。靴紐を結んで歩きだす。景色を見ながら歩いていると、写真を撮っているあの人に追いついた。「ここも綺麗ですね。あ、どうぞゆっくり撮っててください。私、先に行きますね。また会うかもしれません。」今度は私が登りはじめる。


5分ほど歩いただろうか。後ろから「淡々と歩くんですね」と声が聞こえた。「あぁ。一人だと自然とそうなりますね。」

また一緒に登り始める。実はこの方、先週高尾山を訪れたのが初めての登山だそう。10月に転勤で東京へ来たばかり。さて休日は何をしようと思っていたところ高尾山を知り「これなら僕にも登れるかな」と、関東の山が載っている本をネットで注文。
昨日到着したその本の1ページめが「高尾山」だったので今回はビワ滝コースを選んだそう。

私はこのコースが好きなんですと伝えると、先週はアスファルトばかりだったんです。このコース、いいですねと嬉しそうだった。

山頂が近くなってきた。あと少しで山頂ですよ。割と時間かからないんですね。なんて言ってる間に到着。

もはや一緒に登頂。

晴れていたら富士山が見えることを伝え見に行った。上のほうは雲がかかっていたけれど、それでも喜んでいたのでなんだか少し嬉しかった。


私はいつも高尾の山頂でビールを飲み、次の小仏城山(こぼとけしろやま)という山へ向かう。

すみません。私、ここでビールを飲んで次の山へ向かいますね。

そう伝えると思わぬ返事が。

あ、そうなんですね。
もしお邪魔じゃなければご一緒して良いですか?

はい。大丈夫ですよ。

では案内していただいたのでビールをご馳走させてください。いえいえ自分で買うので。いえいえ案内してくれたので。なんてやり取りをしたあと、ビールとおつまみを持った私達は、おじさまおばさま達のテーブルに相席させてもらい乾杯することに。

改めまして乾杯!
高尾山登頂おめでとうございます。
有難うございます! 

紅葉、綺麗ですね。
本当。綺麗ですね。

このふたり、まだお互いの名前を知らない。


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