土曜日だけの訪問ヘルパー①

私の仕事は都内の企業で働くいわゆるOLで
お客様の対応や備品管理など総務に近い部署にいますが
土曜日は訪問ヘルパーをしている

介護の仕事初日、職場で先輩と待ち合わせをし
挨拶もそこそこに電動自転車を借りて
後ろをついていったときのこと

先輩が話をしてくれてるのに
どんどん距離が離れていく

知ってます?
訪問ヘルパーの方々の自転車の速さったら
尋常じゃなくて必死にこいでも追いつけないんですから

初めての仕事だから聞き逃すまいと
必死に先輩に食らいつき
ペダルをこぐ私と涼しい顔で走る先輩

すみません!何も聞こえなくて!
あ!すみません!今、聞こえませんでした!

何度追いかけたことか

しかも私は極度の方向音痴
利用者さんのお家を覚えられなくて
何度、通りすがりの人に聞いたか
道を間違えてあせったことか...
 
初めての利用者さんのお宅へ到着
チャイムを押して
先輩が靴を脱いで玄関からあがった

私も続いて靴を脱ぎ玄関からあがる

当時、旦那さまと奥さまは
共に歩行器の生活をされていて
玄関からすぐ見える洗面台に
ご夫婦がいらっしゃった

先輩がおはようございますと
声をかけ私も続いて挨拶をしようとした瞬間
旦那さまが大きな声で奇声を発した

今思うと急に声が聞こえて驚いた拍子に
出てしまった声と分かるのだけれど
そんなことを知らない私は
この数年聞いたことの無い
その声の恐ろしさに心がポッキリ折れてしまった

玄関にあがって3秒で
心が折れたのだ 

あたしには無理だ

排泄の介助など介護の学校で習ったけれど
教科書とは非にならない現実が
目の前で行われているのを見たとき
私には出来ないという気持ちでしか
その場にいることができなくて
今日で辞めさせて貰おうと
一軒目で心に誓った

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