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英語はなぜ難しいか?     (音声練習編③)

 英語speakerを目指して、英語の発音を練習する、「英語はなぜ難しいか?(音声練習編)」シリーズ。第3弾にあたる今回は、「無声音」を扱う。

 最初に、本記事の要約をしておく。

「f」「h」「s」は息を抜くように吐くことで発音する。「k」は舌を前に、「th」はさらに舌を前に出す。舌を動かし続けること、息を出し入れすることが重要だ。英語の発音は、日本語speakerがどこで・なぜ苦戦しているかを分析している人から習うのが良い。年齢や立場を忘れて、英語を話せるようになりたい、という気持ちを大切にしてほしい。

①息を抜く

 今回の発音練習では、「息を抜く」ことが重要なポイントとなる。「l」と「t」の発音で、私は「上前歯の裏を舌先で叩く」と説明した(音声練習編②参照)。すると、自然と「前歯の間から息が抜ける」という現象が起きる。

 今回は意識して息を抜く練習だ。「口の先から息を抜く」音を練習する。「f」「h」「s」などがそれにあたる。ポイントは、日本社会でも出している音ということだ。私は、英語には「日本社会では言語を話しているとは思えない」音があると述べた。まさに「聞こうと思えない」だ(音声編②参照)。実は自分達も出したことがある(=その気になれば出せる)と思えるかがポイントだ。

 「f」は蝋燭の火を消すように「フー」と息を吐く。口先から息が抜けていくのが分かるだろうか? この時、無理に言葉を話そうと思わないのがポイントだ。日本語speakerにとっては、「息を吹きかけている」としか思えない音。英語speakerにとっては、それは「言語の一部」だ。

 「h」はため息をつくイメージで「ハー」と息を吐く。分かりやすいのが「her」の発音だ。この際、「ha」にならないよう、母音を消す意識を持つことが大切だ(音声練習編①参照)。

 「s」は寝息を立てる時のように「スー」と息を吐く。「h」の場合と同様に、「su」にならないよう注意してほしい。

 息を口先から抜くように吐く。これが無声音を発音するポイントだ。

②舌を出す

 次に、「k」「th」の発音を練習する。なお、本項で扱う「th」は「think」の「th」であって、「though」「the」の「th」ではない。発音記号では「θ」(少し違うが😅)と表記される音だ。無理やりカタカナ表記すれば、「スィ」の音の方を練習するのであって、「ズィ」は別項にゆずる。

 さて、日本語の「く」を少し伸ばすイメージで発音すると、「くぅ」となる。英語の「k」は逆に短く切るように出す。音楽用語で言えば、「スタッカート(イタリア語、staccato)」だ。すると、息を切るために舌が自然と動くことになる。この、「舌が常に動いている」という感覚を大切にしてほしい。前回記事でも述べたが、日本語は舌がサボっている言語だ。英語の音声をマスターするためには、息をこまめに出し入れする、舌を動かし続ける、という意識を持つ必要がある。スタッカートの例でも分かるように、この意識を持つためにはカラオケの練習が有効だと思う。

 「th」は「k」よりも舌を前に突き出す。「舌を歯で軽く噛む」という説明がなされることもある。実際には噛まないのだが、「噛むくらいの気持ちで」ということだろう。「イーだ👅」と舌を前に突き出して「s」の音を出すと良い。

③息の出し入れを意識する

 音声編を通じて、私は「声は息が、音は口・舌の形が担当する」と述べた。また、「日本語を話す際には息が出てしまうため、英語の音にならない」と説明した。

 だが、多くの英語speakerの記事を読んで、その説明では足りない、あるいは正しくないと感じるようになった。

 より正確に言うと、日本語は「息を出しっぱなしにしている」のだ。「息がダダ漏れのまま発音している」と言い換えても良い。例えば「desk」の発音を分析してみよう。「de」は日本語の「デ」とほぼ同じだ。「s」は前述した通り息を吐く。「k」は舌を前に出して息を吐く。すると、「de」「s」「k」と、息を3回出す&息を3回切ることになる。これに対して、日本語の「デスク」は、息を3回出していることは変わらない(英語よりも強めの息が出ている)が、息を切っている感じはしない。言い換えると、英語はこまめに息を切っている

 この「息を切る」が上手く出来ない(と言うよりも、しようと思えない)日本語speakerの英語は、English speakerからすれば、「息が出過ぎている」「音が平坦」と感じられることになる。日本語の「デスク」よりは、「test」の方がまだ「desk」に近いと感じられるのではないか?(私の個人的感想です😅)そのくらい、英語と日本語の音は異なるということだ。

 逆に言えば、英語の音声に近づけようとするならば、息の出し入れを意識することが重要だ。舌の形や動きを意識し、息の出し入れを意識する。日本語にはない音を出すというのは、かくも疲れることなのだ。

④発音練習を続けるということ

 本記事の最後に、どうしても述べておきたいことがある。

 それは、現在の私は、英語の音声を自然に捉え過ぎているということだ。英語speakerになって2ヵ月が経過した(『英語はなぜ難しいか?特別編』参照)。当初は「自分が味わった素敵な体験を、他の人にも伝えたい」という、聖人のような境地(笑笑😝)だった。しかし、英語の音声を当たり前のモノとして受け止め続けているうちに、自分が聞こえるor発音できるようになるまでいかに苦労したかを忘れかけている。

 人間とは勝手な生き物である。かつての自分も、日本人英語丸出しで「デスク」と読んでいたハズなのに、いまや「deskはdesk」としか思えなくなった。この音声練習編を書くにあたっては、多くの記事を読み、動画を見て、自分でも発音してみて練習法を探っている。だが、それらは全て「英語speakerになった人間(私も含めて)」の視点で語られたものだ。「日本人がどこで苦戦するか」を直接経験している人間の感覚、言い換えれば、「かつての自分はどこで苦戦したか」の記憶がおぼろげになっている。Englishは私にとっては既に「言語」であり、「学習」「練習」の対象と思いづらくなっている。

 つまり、「日本語speakerは〜としがちだが」という私の説明は、的を外している可能性がある、ということだ。読者諸氏は、そのあたりを踏まえて私の記事(今後、ますます過去の自分の感覚を忘れていくと思う😱)を読んでほしい。裏を返せば、英語speakerになったにも関わらず、日本語speakerが英語で苦戦するメカニズムを丁寧に分析・説明できる人達が、いかに凄いかということだ。

 この辺りの事情が、「他言語はネイティブ(何度か述べてきたが、私はこの表現が好きではない)に習うのが自然」「いや、日本人のことを理解している日本人に習う方が良い」という意見の対立を生むのだと思う。日本語を知らない英語speakerには、日本語speakerがどこで・なぜ躓くか分からない。正解を選べても、「どうすれば正解に辿り着けるか」を相手の立ち位置から判断できなければ、相手は正解を選べるようにならない。少なくとも現在の私は、「日本語を知らないネイティブ」に日本人が英語を習うのは危険だと考える。

 以上のような事情が他言語学習にはついてまわるのだが、現在の日本社会で英語を学ぶとなると、さらに別の要因が加わる。それは、現在は英語ができる若者が増えている、という事情だ。幼少期からの英語教育の浸透、音声ツールの充実、社会全体での英語speakerの増加、音楽リズムの変化(音声編③参照)etc、様々な要因が考えられる。最高レベルの大学入試においても、英検準1級を取得していることは当たり前になった(私が準1級を取得したのは、塾講師になってからである😭😭)。英語を言語として使用するという感覚は、若者達には当たり前のモノになりつつある(もちろん、英語が大の苦手という若者も大勢いる)。

 その結果、どういうことが起きるか? 英語を「教える」側よりも、「教わる」側の方が出来る、という現象が起きやすくなる。特に、オジサン世代が苦手とする発音でそれが顕著だ。ハッキリ言って、年配の教員や講師よりも、生徒の方が発音が良いということはザラにある。本来、何かが出来るor何かを学ぶのに年齢や立場は無関係なハズなのだが、日本社会では年齢と能力がリンクしている(と思われることが多い)ため、何かと軋轢が生まれる。教員・講師よりも生徒の方がnatural Englishに近いという現象は、貴方も経験したことがあるのではないか(どちらの立場で経験したかは置いておくとして)? 生徒が帰国生の場合は(多くの人は、彼らが留学中にどれだけ努力したかを無視しているが😡😡😡😡)納得もできるのだが、留学経験が無くても英語を得意とする、英語の音声を捉えている学生は増えている。教える側からすれば、「立場がなくなる」。

 その悔しさや恐怖を、「自分も英語を話せるようになろう」という方向に向けられれば、いつかは英語speakerになれる。私もそうだった(時間はかかったが😡)。この記事を読んでいる貴方が、もし同じような思いを抱いているならば、その気持ちを大切にしてほしい。止まず倦まず、英語の音声を聞き続け、発音を練習し続けるのだ。少なくとも、そういう努力をしている人間(生徒・教員を問わず)を否定するのはナシでお願いする。そして、晴れて英語speakerになれたら、他の人達にその体験を伝えてあげてほしい。もともと私はそれが目的で「音声編」を書き始めたのだが、当初の幸福感は失われている。悲しいことだが、いつまでも喜んでばかりはいられない。山を登ったら、次の山が待っている。

 大変長くなってしまった、申し訳ない🙇‍♂️🙇‍♂️。要するに、言いたいことは2つだ。1つ目は、「英語の音声で苦戦する」ことを具体的にイメージできる人から、英語の発音を学ぶべきだ、ということだ。2つ目は、英語の発音をマスターするには、大変な根気と勇気を要する。英語speakerを目指す気持ちを大切にしてほしいということだ。それでは、マア アッサラーマ(Bye-bye)‼️

何で続けるのかって?         止める理由がないからだよ

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