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"小売の価格設定について"2020年暫定版

いよいよ明日からスタッフ初出勤です。
もちもなか源七を起業して、初の仲間との仕事。
さて、どーなることやら?
なんせ、ワクワクしてます。


さて、今日は先日の飲みの席での振り返りをしていきたいと思います。
製造小売業の価格設定についてです。

オープン直前、
もちもなか源七は何を基準に価格を決めているのか?


原価率30%という業界水準

まず基本的な情報なのですが、
食品製造小売業の販売価格は原価率の30%というのが業界の基準となってます。

70%も利益が出るの?と思ったら大間違い。

販売コスト(人件費、包装費、通信費、家賃、その他諸々)がかかる為、大幅に利益率が下がります。
10%を切ることなんてザラです。
一桁台もザラです。

だったら、販売価格を少しでも上げたいよね。と考えるのがフツーです。
ただ、ここで問題になってくるのがどうやって価格を上げるのか?ここの部分。

価格というのは単にあげるだけではお客さんの離反も招いてしまう厄介なものです。
イタズラに値段を上げても逆効果だというのは想像に易い。

それでは、もちもなか源七流の価格設定について書いていきます。


価格設定の基準

商品を買ってくれる相手がいるからこそ、商売は成り立ちます。
一回こっきりの商売ならどんな値段だろうと関係ありません。
しかし、お店を構える以上、この3つの条件は必須条件です。

価格設定の判断基準
・価格を上げても納得してもらえるか?
・価格を上げてもリピートしてもらえるか?
・価格を上げても価値があるものか?
この3つの判断基準を元に価格設定をすることが大前提です。

初見で買ってみただけで終わりになるようなものでは富山県では生き残れません。
都心以外の、少ない人口ではリピートを繰り返していただき、ファンになっていただかないと商売を続けることは難しい。

オンライン販売も手軽にできる時代ですから、人口はあまり関係ないという方もいるでしょう。
しかし、対面販売で働くことに生きがいや楽しみを覚える人も多くいます。
製造量に限界がある商品を扱う場合はそもそもオンライン販売もできません。
賞味期限が極端に短かったり、新鮮な状態で食べることで本来の味を楽しめる食もあります。

複雑にからむ状況を考え、どのくらいの販売価格が適正なのか?


あー、
このまま書くと適正価格の付け方とか、
マーケティング、ブランディングの話みたいになりそうですが、そういうのは書店で読んでください。
今回は少し違うことを書きます。

・納得
・リピート
・商品価値
この3つに加えてもう1つ、
大切な基準があることに先日の飲みの席で気づきました。



作り手のメッセージ

僕が今回扱う、
"もちもなか"というのは分類すると和菓子です。
和菓子と聞くと高級なものから、低価格なものまで幅広い値段帯のものがありますよね。

和菓子の中でも"もなか"や"上生菓子"というのは値段の幅が特に大きい。
どら焼きや大福っていうのは和菓子の中でも日常的に食べるおやつの分類なので、比較的に安価なものが多いです。

だからこそ、、価格設定が難しい。

そこで、この間の気づきです。
価格基準の4つめ。
【作り手のメッセージ】
これが新しい価格基準。
どういった想いで作っているか?
何を届けたいのか?
ここが大事という話しです。

飲みの席で何を話していたかというと、
・和菓子のクオリティ
・和菓子を食べるシーン
・和菓子を食べる層
について話していました。

クオリティ
味と見た目
→クオリティを追求すれば価値があがる。
もちろん、そうです。

シーン
いつ、誰と食べるか 
→抹茶を嗜みながら食べるシーン
多少高くても体験に価値がありますね。

食べる層
誰が、どのくらい
→ある一定の富裕層に向けて作る
価格が高いものも少量しか手に入らないという価値で、受け入れてもらえるかもしれない。


ここらでウンウンと聞いていた僕が話しだしたのは、"もちもなか"でお客さんにどんな効果を与えたいか?というものでした。
ここに僕の答えを見つけました。

僕はクオリティでは正直な話し、職人さんと勝負して勝てる気はしません。
たかだか5年ほどの経験でこの道30年の職人さんに勝てるとは思ってません。

抹茶を嗜む経験も数えるほどしかしてませんし、習ったこともありません。

肩ひじ張って声高に希少なものを作る気もありませんし、そこに注力する気もしませんでした。



「新しい日常を作る」

[僕は何を届けたいのか?]
"もちもなか"を通して、日常のひと時にホッと一息できる瞬間を作りたい。

それが、僕が大切に思う
お客さんに届けたいメッセージだと気がつきました。

餅屋の息子として生まれ育ち、
体験してきた原風景を、現代の暮らしに合わせ、日常に溶けこませること。

石油ストーブで餅が焼けるまでの間をゆっくり待ちながら、焼けた餅をみんなで食べ、ホッと一息するようなシーン。

そういうシーンをもちもなかでカジュアルに、現代のカタチに合わせて溶けこませる。

カフェでもない、家でもない、
いつでもどこでも、もちもなかを通してその瞬間が生まれる。
新しい日常を生み出す和菓子作り。
それが、自分のやりたいこと。

ベースは餅文化だ。
もちもなか源七の店舗は目の前で"もちもなか"をつくる基地のような店舗設計になっています。
基地で作っている姿を見ているお客さんは、餅が焼けるのを待っている状態。
商品を持ち帰り、フタを開けてみんなで食べる時が焼き上がった餅を口に入れるところだ。

もっと言えば、円になって餅を作るということ自体が餅文化のルーツに繋がる。
もちもなか源七の円形の店舗は輪になって餅を作るというあの頃の餅文化を具現化した店舗設計だ。

石油ストーブで焼く餅ではないけれど、
出来上がるまでを見ながら、お茶と共に食べてホッと一息つこうと思えるお餅。
今の暮らしに合わせた進化した餅。
どうだろう。
だいぶ具体的でしょう?

キーワード
・日常
・ホッと一息
・餅文化のルーツ
・あたらしい日常
これを元にすると届けたいお客さんの姿も浮かんでくる。

・クオリティ
・シーン
・食べる層
それだけで考えると価格の設定にイマイチ決め手がつかなかった。

・作り手のメッセージ
を加えることで具体的に届けたい相手の姿を想像することができる。
目的がハッキリしていると値段設定もしやすくなると思いませんか?



メッセージの効果

基準っていうのは市場に左右されすぎている気がする。
相場がこのくらい、他店はこのくらい、あのブランドだったらこれくらい。
周りを見ての判断ばかりだとおかしくなる。

業界が破壊的に値段を変えてきたらどうするんだ?
今の価格基準はマーケットに左右されてないか?
きちんとした自分の価値基準ができているか?

市場主義ではない視点が必要だと気づきました。


そして、メッセージを持っている人が強いことにも気がついた。
技術のみだと弱く、
メッセージだけでも弱い。
その両方が大事なんだけれど、
強いメッセージを持つことの重要性にも気づいた。

強いメッセージを強く持つことで
・求めるクオリティが決まる
→自分も、相手も、メッセージに沿って、クオリティが伴っているかの判断ができる。
・どんなシーンかを想像できる
→メッセージにシーンを連想させることで理想的なシーンを作れるようになる。
・お客さんも選びやすい
→メッセージはキャッチボールの効果を果たしてくれる為、お互いにとって好都合。

やみくもにクオリティを求めても、勝手にシーンを決めても、お客さんを選んでもダメ。
中身がなければ結果は常に予想外だから。


おまけ

アパレル時代、競合他社との商品比較をよくしていました。
当時はものすごく大切なことだと思い、価格や商品のクオリティばかりに目がいっていたのを思い出しました。
表面的なところを見ようとしていたためか、毎日翻弄されていたように思います。

あの時、いろんなお店の発している
"言葉にならない価値の創出"にもっと目を向けていたらよかった。
素晴らしいお店がたくさんあったハズ。
なんだか近いところばかりを見ていたように思う。

価値観、価値基準、価値の創出。
言葉は出るけど、見かたがわかっていなかった。

もう一度、本質を見るということを勉強していこうと思いました。



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