無題
身を焦がすみたいな、堪えられず泣きたくなるくらい、走り出したくなるような、そんな内側から溢れ出るような熱量を、自分からも相手からも感じなくなった。
互いに安心できる今の関係は好ましいもののはずだ。じわりと気持ちが湧き出した時でも、必死に伝えなくても大丈夫。LINEを連投することも減った。
いっそ互いがいなくても生きていけるが、お互いがいたほうが豊かだと感じられることは幸せなことで「私には絶対にあなたがいてくれなきゃ」と、思うことはなくなった。
そのスタンスが健全と思って、話は合わせていたものの、内心は縋っていた部分がある。だから、ほら健全になれてよかったじゃないか。お互いが余暇の時間にゆっくり話す、それだけで充分だろう。
でもね。
どこか虚しいのは、何故なんだろう。
満たされていることに違いはないのに、ひとりでも大丈夫と自信が持てたことは素晴らしいことなのに。互いのことが大切で愛してるのは変わらないのに。
大事に持ったマグカップの中、すっかり冷めてしまった珈琲を見つめている。
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