夏の恋(終)

花火をし終わって、缶コーヒーを飲みながらゆっくりしていた。
「あの、やっぱり好きです。付き合ってもらえませんか?」
自然と口走っていた。

「・・・」
しばらく無言が続いた。3分ほどだったろうか。僕には15分くらいに感じていた。

「ごめん。やっぱりルーキーくんとは終わりが来る関係は嫌なんよ。だから付き合うことはできない。」

僕の頭では理解できない言葉が返ってきた。
「終わりが来る関係・・・」
考えに考えた。どういう意味だ。しかし、終わらないようにする。
などという軽々しいことは言えないと、こんな僕でもわかっていた。
早く何か言葉を返さないと。と焦っていたが、言葉が出なかった。
自虐的にもなれない。堀井さんといるとなんだか大人になれていた。
そんなことを察したのか
「今日はもう帰ろっか。楽しかったし、うれしかった。ルーキーくんはちゃんと私を見てくれてるからうれしい」
今思い返しても、ドラマのようなセリフだ。
僕はなんて素晴らしい、いや、高嶺の花に恋をしていたんだろう。と改めて思った。

車で家まで送ったあと、「じゃあまたね」と手を振ってくれた。
「はい。また」と返し、家路についた。
僕の恋は終わった。
びっくりするくらい未練もなく終わった。
それから、まったく連絡をすることはなかった。
とる必要も意味もなかった。
しかし、ふと、あのころが鮮明に蘇ることがある。
心の中で、恋愛とは違う感情で好きなのだ。
あんなに誰かを好きになったのは、あれ以来ない。
堀井さんほど、想えた人はいない。
付き合ったりはできなかったが、僕の青春は堀井さんでいっぱいだった。

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