好きな芸人さんについての話
岡野陽一というピン芸人のコント師がいる。
私は岡野陽一が好きすぎて基本的にその魅力を人に教えたくない。でもどこかに少しだけ吐き出したくなってしまったので書いてみることにした。あくまで私からみた視点の話である。
自己プロデュース力があり、計算高く、人たらしなので、そのクズキャラという位置に居続けている。普通にネタだけやっていても売れていたとは思うが…そのクズ芸人のキャラとして、今はバラエティ番組に呼ばれまくっている。
しかし、ここで私がフォーカスしているのはコント師としての岡野陽一である。
元はといえば私も、ネタの中で鶏肉を風船で飛ばしている人というイメージだけがあった。(R-1グランプリ2019決勝でやったネタ)
とあるベテラン3人組コント師が岡野さんを自分のラジオに呼んだりしていたのが注目し始めたキッカケだ。
そこで、巨匠というコンビ時代のネタを沢山見てみた。めっちゃおもしろい。このコンビでネタを作っているは、岡野さんだった。
そしてラジオで某先輩コント師さんと何度も話をしているのを聴いていて、ネタだけでなく、その人間力の高さから、さらに好きになった。リスナーからの相談に答える岡野さんの回答は人の凝り固まった価値観をぶっ壊してくれて爽快だ。
最高の人間
岡野さんはコンビである巨匠で2014年にキングオブコントの決勝に進出している。
その後2016年に解散し、ピン芸人として活動している。
2022年に第一回単独ライブ『岡野博覧会』を開催し、2023年に第二回『岡野博覧会』を開催した。
2023年には 終末救済旅行団体 Mother & Farther『地球大爆発』
鬼ヶ島、吉住、岡野陽一によるライブを行っている。
岡野さんと吉住さんが組んだユニット、最高の人間の話もはずせない。
キングオブコント2022でファイナリストになった限定ユニット。
"コントで結んだ悪魔の契約"というキャッチコピーが抜群に良い。
即席ユニットで準々決勝に行った唯一のユニットで、2人にしか出せない世界観を生かしている、最高の2人。
私は一回戦からドキドキしながら結果をみたりして応援していて、準々決勝で実際一番面白かった。
キングオブコントの準々決勝を見るのはこれが初めてだった。2日間で60本以上コントを見て楽しかった。コントを沢山みた2022年の夏を忘れない。ありがとう最高の人間。
飯塚さんいわく「岡野はコントを書かせたら天才だ」
あの見た目とキャラからしてそう来られたら、ギャップがたまらない。
プレッシャーに弱いのもまた良いしそれすら楽しんで脳汁出してる岡野さんが好きだ。
想像の斜め上どころか、世界の見え方が180度かわるような岡野さんのネタはどれも最高に面白い。
恥喰い
単独公演『岡野博覧会』で主題歌をやっているNaNoMoRaLとの相性も抜群に良い。
第一回岡野博覧会で書き下ろされた楽曲。
ここに出てくる悪魔というのは、どうしようもなく人間味に溢れている、憎めない人間のことだろうか。岡野さんのコントにはそんな人間が、ときには人ではない者が出てくる。
東京03の好きにさせるか(NHKラジオ)最高の人間ゲスト回、
ラジオコント『恥喰い』では、口から人間の恥を食べて、おしりから勇気を出してくれる、恥喰いという生き物の話がある。20分に及ぶ長編ラジオコント。
彼らなりに純粋に生を全うしていて、憎めない存在で尊い。
ある一面から見て悪魔と思われてしまったり、いろんな面を見せながら生きているけど、それぞれにふるさとがあって、それなりに心をもって、生きてきた道がある。
そんな登場人物を思わせる歌詞だった。
岡野陽一という芸人のことを言っているのだと思った。そして同時に、岡野さんはそんな悪魔たちみんなのことも、あたたかい心で見ているのだ。
キャッチーでポップなライトお笑いファンだったはずの私だが、岡野さんのネタを見ているうちに、悪魔の泥々コント沼につき落とされたのだった。
第二回開催『岡野博覧会』
10月20日最終日、昼夜公演を観てきた。
以下ネタバレ有。
舞台にベンチひとつ、そこで岡野さんが話しはじめたら、それだけで一気に岡野陽一の世界に引き込まれる。
コントは6本。その合間に幕間の時間がある。
私が好きだったネタを紹介する。
保育園の先生が、クラスのみんなと、
たべっこどうぶつのゾウだけを集めて
大きなキリンの立体像を作るという授業をしている。
これは大人になったら、まったく意味のないことをやらなければならないときがくることを教えるためにやっているという。
教育とはなにか、これは岡野さんのネタによく出てくるテーマと言える。
子供にむかって話すネタが多く、それはどれも、学校では教えてくれないけど人生において大切な心持ちについて話している。
これだけ抑えておけば、たいていのことは乗り切れる、そんなアドバイスだ。
突き放すような言い回しや一見無茶苦茶なことを言っているようだが、彼の主張は一貫して筋が通っている。だからこちら側が、今までの偏見や思い込みは間違っていたのか…とすら真剣に思わされてしまうのだ。
お笑いのライブとは思えない感想ではある。
海物語をやっているところをみんなで応援するという幕間があった。岡野さんは美術用に自前のパチンコ台を持っていて、ネタに使われることが多い。
昼公演では、ちょこちょこリーチが出たりしつつも中々当たりが出ず、(319分の1の確率)客席のみんなで声を上げて応援した。
時間ぎりぎりまでねばって、ついに当たりが出たときの、会場の一体感は、スポーツ観戦の会場のように大歓声に包まれていた。指笛とか聞こえた。
パチンコをやったことはないが、岡野さんと、子役の男の子と、会場全員で一緒に、あの体験をし、うっかり脳汁まで出てしまったことは忘れられない。
ここでパチンコをやっていたため、次のネタの着替えが出来ていなかった岡野さん。パチンコの応援の流れで、岡野さん着替える間、それを応援するという、お着替えタイムがあった。
それがなんともバカバカしくて楽しい。がんばれー、できるよー!などと応援すると、ボタンがとめられる、靴が履ける。
昼公演を経て、2度目の夜公演となれば、声を張って応援の言葉を投げかけるのも躊躇わずたくさん応援が出来た。着替え方が分からないのを応援するって状況は子供を見てる親の気持ちになるようで不思議な感覚でおもしろかった。
岡野さんによる終演後のトークにて、今回の単独は、思想が強めになってしまったと言っていた。
大体いつもそうだよと心の中では思った。
どうやら、お笑いのスープの隠し味に思想を入れるのが普通とすると、今回は思想のスープにお笑いを入れたみたいになってしまったと反省しているようだった。
私は、岡野さんの思想のそんなに濃厚な汁を見させてもらえたんだったなら幸せですと思った。
岡野博覧会の音楽を担当しているNaNoMoRaLの曲の好きな歌詞を抜粋する。
ライブのオープニングの最初の歌詞だ。
そうやって作られた、だから私達は"期待"をしてしまう。
なにかに期待しない生き方は、心をニュートラルな状態にするということで、できるだけ絶望を回避するための自己防衛、つまり無敵の考え方だ。
岡野博覧会には、そんな思いが散りばめられていた。
パセリちゃんは天才なのか…(作詞をしている梶原パセリちゃんさんのこと)
今回の岡野博覧会のすべてがここに詰まってると思った。
ネタを通して岡野さんが肯定するすべての人たちに向けている視線を見事に歌にしている。
ボーカルの未來ちゃんの歌声、NaNoMoRaLの音楽はやはり岡野陽一の世界観との親和性が高い。
岡野さんは今41歳だが、これから歳を重ねてネタを続けていたら、もっと哀愁のある色んな意味でやばいおじさんのネタが出来るようになっていくと思う。
今回の単独ライブ終わりに、R-1に再挑戦するとも言っていたので、今後の活躍も楽しみだ。
脳汁を出したいということは生きてることを感じたいということだろう。
岡野さんが今日も楽しく生きてますように。
2023年の岡野博覧会 11/5までアーカイブ有
YouTubeに上がってる数少ないネタ
岡野さんの人となりを知れる動画
岡野さんに東野幸治さんがインタビューしてる
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