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『太陽と月の鋼』第4集発売記念!松浦だるま先生オンラインサイン会レポート

小学館「ビッグコミックスペリオール」で大人気連載中の『太陽と月の鋼』。4月28日に待望の第4集が発売されたことを記念して、作者・松浦だるま先生がオンラインサイン会を実施されました。

“触れた金属を曲げてしまう”という特異な能力を持つ武士、竜土鋼之助。そして、そんな鋼之助を慕う謎の女、月。しかし、月は土御門家の手先にさらわれてしまう。失意の鋼之助の前に現れたのは、『未来を見通す』力を持つ盲目の巫女、明。鋼之助は明の助けを借りながら、月を探す旅に出るが......。一人の男と二人の女。過去、現在、未来。大きなうねりとなり、物語は動き出す。

松浦だるま先生が第4集の単行本にサイン、そして事前にリクエストされたキャラクターを描きながら読者からの質問に答えていく、ファンにはたまらない豪華すぎるオンラインサイン会。

当日は、繊細で美麗な絵がリアルタイムで完成していく、なかなか見ることのできない貴重な瞬間を目の当たりにしたファンからの感激コメントであふれかえりました。

松浦だるま先生「今回、皆さんからリクエストされたキャラクターが面白かったですね。主人公の鋼之助がすごい少なくて(笑)ヒロインの月さんがとても人気でした」

さらに、オンラインサイン会では、ファンから寄せられたコメントにもたっぷりとお答えいただきました。

本記事では、大盛況だったオンラインサイン会で松浦だるま先生が明かした『太陽と月の鋼』の裏話やプライベートについてお届けします。知られざる創作秘話、そして松浦だるま先生が愛してやまない〇〇グッズ、秘蔵コレクションは必見です!

松浦だるま|漫画家。1984年生まれ。神奈川県出身。イブニング新人賞ゆうきまさみ大賞及び宇仁田ゆみ大賞にて、共に優秀賞を受賞。初連載作品であり代表作の『累 -かさね-』(全14巻)は2018年に映画化された。現在は『太陽と月の鋼』を連載中。
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超能力者×江戸時代!?......『太陽と月の鋼』のはじまり

ーー『太陽と月の鋼』はどのようにして生まれたのでしょうか。

武士なのに、刀が武士を拒否してしまうから刀が持てない、という設定を最初に思いついたんです。それで、ふと浮かんだのがこれはスプーン曲げなのかな?と。スプーン曲げは、1970年代に来日して、日本に超能力ブームをもたらしたユリ・ゲラーからですし。そもそも超能力や超能力者が認識されてきたのも明治時代以降のイメージがあったので、江戸時代はどうしていたのかなって。そこから構想を練っていきました。

ーーこれから先の明確なプロットなどはすでに完成しているのでしょうか。今後の展開が全く予想できません。

プロットはぼんやりとはあるんですけどね......。エンディングと、中継地点が何箇所か決まっている感じで、それをどう繋いでいくのかいつも四苦八苦しています。『累 -かさね-』の時もそうでしたね。

でも、不思議なもので、何かに助けられるようにパズルのピースがハマって、うまく繋がっていく時もあるんですよ。もちろん担当編集さんのおかげでもありますが。

キャラクターには“自分の一部”が入っている

ーー先生が共感する、または好きなキャラクターは誰でしょうか。

めでたいことに登場人物全員好きなんですけど(笑)共感できるのはやっぱり鋼之助ですかね。自分と全く同じだなと感じるキャラクターはいませんが、やっぱり自分から生み出されるものなので、自分の一部が絶対に入っているような感覚なんです。だから、共感ポイントでいうと、どのキャラクターにもあるのかなと思います。

それこそ、土御門晴雄は実在した人物ですけど、史実の人物としての面と共に、現代の私たちにとって共感できるポイントを入れてキャラクターを作っています。月、明はもちろん、前作の『累 -かさね-』の登場人物も同じです。

松浦だるま先生「土御門晴雄は実在した人物だからこそ、描く時に緊張感もあります」

ーー鋼之助さんが1番好きです。

わー!嬉しいですね。嬉しいというか鋼之助良かったねという気持ちになります(笑)。そう思いながら、今からリクエストいただいた明を描いていきます。

松浦だるま先生「今回は1キャラ平均5分か5分半くらいで描いてます......!」

なんだか、『累 -かさね-』とは全く違う、明みたいなキャラクターが描けるんだなって。『累 -かさね-』の時は、主人公が笑顔になることは全くなかったですからね。結局、笑っているのは最終巻のカバー裏しかないんです。でも、これにはちょっと理由があるんですよね。手前味噌ですけど、笑うと累って可愛いんですよ。読者さんにはそれを途中で気づいて欲しくはないじゃないですか。テーマ的に。それで、なかなか笑わせられなかった裏話があります。

敬意を払ってファンタジーを描いていきたい

ーー『太陽と月の鋼』の制作中で、一番楽しい作業はなんですか?

どの作業も楽しいですが、やっぱり髪型や服装、当時の職業や生活、あと宗教や民俗について調べ物をしている時間が一番楽しいかもしれません。ちょうど今、土御門家の回想編を描いているので、当時の公家の装束について調べているのですが、すごく面白いです。でも、ネームの時点で全く服装について考えていなくて、いざ原稿作業に入ってみたら「この模様ってこの家の人しか使っちゃいけないの?!」と気付いて焦ることもありますけどね(笑)。

あと、先ほど話した土御門晴雄もそうですが、前連載作と違って『太陽と月の鋼』は実在した人物が登場するんですよ。そうなると、有識者の方から見てどうなんだろう?と心配に思う時があるんです。特に陰陽師って今まで散々創作されてきた一大テーマじゃないですか。だから、すごく緊張するんですけど、ファンタジーだとしても、敬意を払って描いていかなきゃなと思っています。

今を支える美大受験時代

ーーカラーイラストの美しさに圧倒されました。美術の勉強はされていたのでしょうか。

ありがとうございます。美術の勉強に関していうと、美大に通っていたんですよ。でも、美大で勉強したというより、入学するまでに三浪していたので、その多浪生の間に培われた技術に今助けられているなと。他の多浪生の方の絵って本当にすごい。みんな上手なんですよ。知らない方が見たらきっとびっくりすると思います。

ーー『いまかこ』の美大受験予備校みたいですね。

『いまかこ』を読んで下さっている!ありがとうございます。

ーー漫画家を目指すようになったきっかけを教えてください。

物心ついた頃から漫画家になりたいと思っていました。でも、本当に漫画家しかない、絶対に漫画家になりたいと思ったのは手塚治虫先生の作品と出会ってからですね。

松浦だるま先生「リクエストが“妖艶な衣装の月さん”。
妖艶のイメージがお客様と合致してるかな?」

影響を受けた画家、漫画作品

ーー先ほど美大のお話をされていましたが、影響を受けた画家はいらっしゃいますか。

あまり意識したことが無かったですけど、いると思います。線画のみに関していうと、日本画絵師の影響は少しあるかもしれません。浮世絵師の河鍋暁斎が好きで、この方が描く線にはすごく憧れていて。自分にしかわからないと思うし烏滸がましいけれど、影響が出ているなと感じる時がたまにありますね。

ーー漫画作品で影響を受けたものはありますか。

やっぱり手塚治虫先生の影響が強いかなぁ。あとは、ちばてつや先生の『あしたのジョー』が大好きです。水木しげる先生や杉浦日向子先生も大好きで、ちょっと不思議でおどろおどろしい設定を入れたくなるのは、このお二人の影響かなと。特に、杉浦日向子先生の『百物語』は、絵柄もお話も大好きで、ボロボロになるまで繰り返し読みましたね。

知られざるプライベート、溢れる“ラッコ愛”

ーーお休みの日は何をされていますか。

自営業なので、明確なお休みの日は存在しないかもしれませんが、リラックスする時は最近はキャンドルをつけたりとか(笑)身に合わないおしゃれなことをしております。あとはラッコですね。今もう安らぎといえば、漫画を考えていること以外だと、ラッコが全てになりつつある。それくらいラッコの虜です。

松浦だるま先生「どれくらいラッコが好きかというと......ラッコのアクスタです!こちらはマリンワールド海の中道にいるリロくんです。他にも鳥羽水族館のメイちゃんキラちゃんも好きですし、最推しはバンクーバー水族館のラッコ小僧ジョーイですね。」

ーー仕事中に欠かせない食べ物や飲み物を教えてください。

梅干しです。低血圧気味なので、塩分を取らなければいけない時があって。梅干しは常備していますね。

ーー最近ハマっている漫画を教えてください。

最近読んで面白いなと思ったのは鎌谷悠希先生の『ヒラエスは旅路の果て』です。絵と表現がめちゃくちゃ上手ですよね......。尊敬します。

ーーラッコ以外にまだ公言していない好きなものはありますか。

結構趣味が多いので、色々ありますよ。古いものに惹かれるので、昔から骨董品が好きだったりするんですけど、特に今は『太陽と月の鋼』がきっかけで古いはぎれ布を集めています。

松浦だるま先生「最近、安土桃山から江戸時代あたりと伝わる布を手に入れました」

刺繍や染めの部分など、もうすごく綺麗なんですよね。江戸時代のものになると著作権を気にしなくて良いので、素材としても使えるんです。

第4集は晴雄の新たな真実が見える、大事な巻

ーー最後に第4集の見どころと今後の展開を教えてください。

第4集は、今までは謎の人物みたいだった陰陽師のボス、土御門晴雄のルーツや、彼が何をしたいのかが徐々に分かってくる......。新たな真実が見えてくる大事な巻になっています。

今後の第5集では、鋼之助や明が月をどうやって奪還するか、そして殺生石とはこの物語ではどんな役割を果たすのか。さらに謎が明らかになっていくと思います。

マニアックな部分でいうと、陰陽師って平安時代のイメージが強いと思うんですけど、江戸時代の陰陽師がどのようなものだったのか。そして実は土御門家が全国の陰陽師を支配していたこととか、注釈も踏まえてできるだけ分かりやすく描いているので、歴史に興味がある方が読んだら面白いんじゃないかと。実際に調べていくと本当に面白い分野なので、何か興味のきっかけになると嬉しいです。

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オンラインサインサイン会のアーカイブ

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