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門外漢の行政書士試験合格への足跡

晴れて、2023年度(令和4年度)行政書士試験に合格したので、自分の学習の足跡を残しておきたい。俺を知らない人は志望動機とかが気になるかもしれないが、どうしてもという場合はコメントをいただくとして、今回の記事はあくまで学習のプロセスに焦点を当てたい。

自己紹介/バックグラウンド

大学受験は一年浪人。大学では映画芸術を専攻。就職したのはゲーム会社。大学生活は映画鑑賞と撮影に明け暮れるアートな生活を送り、就職先も趣味が高じたものだったので、机に向かう一般的なお勉強のブランクは、10年以上あったと思う。色々あって士業を志す。仕事は精一杯やるほうだが、休みに勉強をするのが大嫌いであり、仕事に超密接に関わる勉強しかしたくないので、親を頼って専業受験生となった。

年表

2022/5/22 TACでautoma司法書士の通信講座の受講を始める
 (最初に目をつけた資格は行政書士ではなくこちらだった)

2022/12/01ごろ なんとかメジャー科目の学習を終え、基礎演習(テスト)を受講する
 6割程度の正答率 結果よりも学習ペースに不安

2023/03/01ごろ 基礎演習2回目
 マイナー科目が楽しくペース通りの消化はできているものの、問題集の演習量が全く足りていない 7割程度の正答率

2023/04/01ごろ ここから本番サイズの模試を月2回消化し始める
 コレ以外にも申し込んだ講座には本番サイズの問題演習講座があったが、半分しか消化できなかった。結果は4割から5割(記述抜きで)から始まり、ほとんど向上せず。時間も全く足りない。記述問題がまるごとできないくらい。時間が足りないという気持ちが強く、3時間x午前午後というボリュームには意外と耐えることができた。
 これはまずいと思い、とにかく基礎問題を繰り返すようにする。模試の復習で知識が入らないわけではないが、解き方の練習としての役割が強かった。自分には知識の定着と知識を引き出すスピードが圧倒的に足りていないと、ようやく気づく。基礎問題集を3回繰り返したところで、ようやく試験のための勉強方法が身についた感触があったが、民法・不登法・会社法それぞれで記憶を食い合う。不思議とマイナー科目は忘れない。

2023/06 現実的に考えて合格は難しいと考える。
 少しでも可能性を見出すために、記述式の演習を増やすことにした。(権利変動が分かっても、登記申請書としてどう書くべきか分からない事態が多発したため)記述式講座は商業登記の難問部分を除き終わっていたが、とにかく不登法と商登法の第一回を何度も倍速で視聴し、申請書を写経のように何度も書きまくった。そうすると、それほど書きなれていない登記事項のものも含め、それなりに書けるようになってきた。

2023/07/02 司法書士試験本番
 本番にしてようやく問題を見直す時間ができる。記述も含め満遍なく6割程度の正答率。前の席のおっさんがビニール袋を足元においたまま貧乏ゆすりを続けるので試験官(法務局から来てる人)に注意してもらった思い出。直前期は同じ問題を何度も解いた。各科目の超基礎問題を落とすような、意味のない学習成果になるのが嫌だったので、そういう意味では結果が出た。


2023/07/07 行政書士テキストを購入する
 司法書士試験の問題を復習するうちに、合格の厳しさをようやく理解した。安定合格ラインが8割程度である司法書士試験で、科目数をカバーしつつ、難問も少しは正解して、記述式のテーマをド忘れせずに、現状の6割(ですらラッキーだと思ってたのに)から2割伸ばすことは、相当困難では? こんな、超越者かラッキーマンが受かるような試験を、無職でもう一年過ごして受けるのはキツイ……という感想を抱き、とりあえず行政書士の試験を調べてみることに。合格点が6割(180/300)と決まっている点に安心感を抱き、それだけで受験を決意。司法書士テキストと六法を2000ページ以上勉強して(不合格だったけど)それなりに理解したので、なんとか形にしたいという切実な思いがあった。そして、届いたテキストの薄さに驚く。これで受からなければこの10倍勉強した去年はなんだったのだ。絶対受からなければ、と決意した。

2023/08 出題頻度Cのものを除き、行政法の勉強が終わる
 ふんわりと法律の勉強で問題になりやすい部分が分かってきたので、ペースよく勉強できた。問題演習を多めに繰り返す重要性の理解や、それをする心のゆとり(分からなくても手はつけることができる境地)があることが、何かとプラスに働いたと思う。それと、このころから問題の日本語の使い方にケチをつけだす。司法書士試験では一切感じなかったのだが、行政書士試験とは気が合わないかもしれない。

2023/09 伊藤塾の模試 第一回
 合格点にギリギリ届かなかった。しかし、行政法で記憶が混濁しやすい部分、司法書士試験とは異なる憲法のアプローチ、記述式の解答のキーワードなど、自分の課題が定まった。

2023/10 伊藤塾の模試 第二回
 合格点に少し上乗せする。200点くらい。ただ、一般知識の寄与率が高く(一般知識内の正答率が8割くらい)油断できないと考える。

2023/11/21 行政書士試験本番 
 試験開始直後、想像以上に行政法が解けたのだが。合格が眼の前で現実的になったことで、急激に慎重になり、ペースを崩して民法でケアレスミスを連発。当日の自己採点では記述を除いて160点だったか。3問60点分の記述で20点分正答すればよいのだが、採点基準は判然としていない。3問どれも模範解答の趣旨に合致していると思うものの、微妙な用語の違いが気になってしょうがない。用語としてどの程度合致していれば誤答とはしないのか、断言することは難しい。こうして合格が記述頼みになるという最悪な状況で(合格平均点197から考えるとそういう人も少なくないだろうが)結果発表を二ヶ月以上待つこととなり、精神的に不安定になり勉強する気が起きなくなる。勉強そのものは楽しい。しかし記述式の書き方や多肢選択の類語推理みたいな問題は、日本語の問題という感じで納得いかずモヤっとすることもあるし、それに人生が翻弄されかねないことにこの世の不条理を感じた。

2024/1/31 合格発表。この日まで、ほぼ全く勉強せずに過ごした。しかし、仮に落ちていても来年は絶対受かるはずだし、受からなければとか、いずれにせよ今後の生業としては士業だ、という思いもあり、発表の一週間前流石に少しは勉強しだす。

講座/テキスト選び

TAC・山本オートマチック総合本科生(司法書士)

サンプル講座を受講し、感触が良かったので。
他の参考書や講座が民法総則から始める中、こちらは即時取得を例に法律論から始めるところがとてもとっつきやすかった。理屈を重視している感触。一つ一つのピースの解説から始めるのではなく、全体像を捉えてからズームイン・アウトを繰り返しているような感じだった。

候補から外れた通信講座について感想は…
 ・アガルートはサンプル講座が当時見当たらなかった
 ・スタディングはスマホでの受講をやたら勧めてくるCMが不安だった
  講義自体はまとめが細かくて好感触だが、流石に細切れすぎると感じた
 ・小泉嘉孝の司法書士予備校はテキストの音読感があった
 ・LECは予算オーバー

分かりやすかったのに受からなくてごめんなさい。
俺の演習が足りなかった。

山本浩司のautoma system(司法書士)シリーズ、でるトコシリーズ、みるみる分かる!不動産登記法

講義の内容を網羅していて、良い。「細かく書きすぎたから無視して良い」と言われたような部分は今後一部はカットされるのかもしれないが、テキストだけで勉強する人としてはありがたい内容なので、カットされないほうがいいと思う。初学者にとっては、色分け、図、補足用の段組み、内容の厳選などでパッと見スッキリとさせた本よりも、理解を助ける説明文が多く分厚い本の方が絶対に良い。この本はまさにそのパターン。細部の違和感に引きずられて学習ペースを落とすよりさっさとやれ!というのは間違いないのだが、勘違いで学習を進めて後に混乱することも、また常だ。理屈の不安は少ない方がいい。
「みるみる分かる!」の方は補助テキストという感じ。オートマ本体よりも一つの登記のプロセスを噛み砕いて説明しているが、登記というもの全体の説明はオートマに譲っている。あったほうが分かりやすいが、単体では物足りない。

合格革命行政書士 基本テキスト+基本問題集(2022)

同シリーズ内でのテキストで、利用したものについて。

【基本テキスト】
いくつか参考書のサンプルを見比べて、分かりやすかったためこれに。色分け、図、補足用の段組みなどが、テキストへの書き込みをそのまま見やすく整理されたようになっていて、頭に入って来やすい。単元だけでなく知識に1つづつ括弧書きで出題実績がついているので、何度も出題されている知識の重みが感じられて良い。
一方で、学習を進めると判旨について説明不足、引用不足に感じる箇所もあった。つまづきやすい部分に対話形式で解説をいれている場合もあるのだが、そもそもの基礎理解を助ける文章はもっとあったら助かった。

ちなみに、少しでもケチろうと去年度版を買ったのだが、500円くらいしか値段変わらないし、去年度の出題実績が反映されない(重要度が若干ブレてしまう)ので、ケチらないほうが良い

【基本問題集】
問題の肢の解説一つ一つに基本テキストのページが記載されているので、復習をテンポよくできる。単元別に重要な問題をセレクトしていて、インプットとアウトプットを同時に素早く繰り返しやすい。繰り返しの重要さを痛感した後だったので上手く利用できた。

【肢別過去集】
最初に少しやったけど、俺は基本問題集とオンラインの過去問でいいかなあ……
単元の視点から過去問を並べられて便利なんだろうけど、基本問題集で演習してれば、いずれにせよ正解以外の選択肢で同単元の他の知識の抜けにも気づく、という感じだったので……これをやるなら他のテキストをもっと繰り返したいというのが俺の感想だけど、合う人もいるかもしれない。

ケータイ行政書士 40字記述+一般知識

左ページで基礎知識、右ページで問題+解説を行う豆本シリーズ。勉強し始めの段階から、記述問題がしんどくなることは容易に想像できたため導入。合格革命の基本問題集にも過去出題された記述問題は収録されているが、記述問題だけを連続的に確認できる本書は便利だった。特に、司法書士試験の勉強からすっぽり抜けていた民法の知識の穴を探すのにちょうどよかった。記述を通じて基礎の確認と周辺知識のリマインドができる
一般知識の方は、まあ気分転換に。令和6年度から一般知識にテコ入れが入りそうな雰囲気なので、教養的な部分の配点は落ちると良いな。

伊藤塾の公開模試+解説講義

解説講義のついた模試が伊藤塾しかなかった。
模試の内容も、解説講義もきめ細やかで、伊藤塾の講義を受けていなくても満足できる内容だった。
また、直前期に日々公開された一問一答講義や、ショート動画のテストは復習の目標設定やペースメーカーに最適だった。こっちは無料で広告も出ないし助かったなあ。
リンク:出題予想!厳選テーマ一問一答講義 行政法1「行政不服審査法」
https://youtu.be/3MgvoCdMBpY?si=gRIieRmZ95eezcBV

(使わなかった)TACの司法書士受験生パック

司法書士の勉強した人が、行政書士試験に備える講座。ぴったりじゃないかと思ったが、受講しなかった。
・一番の得点源である行政法の講座がない
・体験講義がない

学習方法

テキストへの書き込み

補足を書き込んだり、テキストでは強調が足りてないと感じる部分へのアンダーライン。ノートは問題を解く過程の図を書く自由帳運用が基本。ノートに図をきれいに板書して残したいほどの複雑な問題は、行政書士試験の勉強では出ないと思う。司法書士試験では不動産物権変動や役員の変更で図を使用したい難問や記述式問題で使用。

ホワイトボードへの板書

各分野の基本用語や数字、複数の図を使った説明や、フローチャートを使ってまとめたい場合は、部屋の壁につけたホワイトボードに板書をした。生活の過程で目に入るし、板書の過程で記憶も定着しやすい。

スプレッドシートへのメモ

仕事で助かった経験から、何でも検索、ソートしやすいデジタルドキュメントにしたい癖があり、作成。テキストで理解しきれなかった判例はオンラインで検索するので、ついでにそれをコピペする。重宝したと思う。単元、重要度、条文、メモ、テキスト引用先、の列で構成。体裁に時間をかけないように心がけた。

学習量

司法書士試験の勉強期間は、約一年。
途中ピンポイントで仕事が入ったり、累計2ヶ月程度はサボって、週平均4日、7時間勉強するつもりで2時間サボったとして、
10ヶ月*4日*4週*5時間=800時間。

行政書士試験の勉強期間は、4.5ヶ月。
日が迫ってることもあってサボりは減って、週平均5日、安定して6時間勉強できたとして、
4.5ヶ月*5日*4週*6時間=540時間。

ざっくりと概算してみたけど、何時間勉強できたというよりも、日常の中で勉強した法律のことを考えている、という思考の状態の方が有益に作用したと感じる。

行政書士試験の勉強を始めるにあたり、司法書士試験勉強の貯金はあった。ただその貯金は「ない」とは言えないというだけのレベルの貯金でしかない。どうせ忘れる一回目のインプットを済ませているというだけで、直接点に結びつけるには、もう一回以上勉強しなければならない。しかも俺は試験当日に一番貯金を活かしやすいはずの民法でケアレスミスを連発したので、その貯金をあまり使うことはできなかった。元々、行政書士と司法書士の試験では民法の中での出題ウェイトも多少異なる。どちらかというとあれは、これまでの人生で経験したことのない量のお勉強の負荷を通じて、勉強のやり方を身に着けさせる期間だったのではあるまいか。

所感

法律の勉強を始めるまで、理屈の理解を最重要視するあまり、単純暗記の瞬発的反射を軽視してしまっていた。それでは試験レベルの問題には正解できないし、人への説明も曖昧になってしまう。とにかく基礎を繰り返す。3回繰り返すと定着し、4回目以降はド忘れしても一瞬で再インプットできるようになる。絶対忘れないだろうなと思っていた行政書士試験の知識も、試験後二ヶ月サボったらかなり吹っ飛んでしまった。不徳の致すところだが、次のインプットでより確実にしたいと思う。


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