無線Wifiで格ゲーをすることについてのアレコレ

定期的に話題になる格ゲーx無線の話題について、業界に身をおいていた人間としていくつか書き記しておく。


ラグの影響を受けやすいタイプの格ゲー

初心者に誤解されがちなのが、現在大絶賛稼働中のストリートファイターのようなシンプルなゲームほど、ラグの影響を受けやすく、プレイヤーもラグに神経質になっている。対空、差し替えしなど、「見てからの」ディフェンシブな行動に安定したリターンがあるからこそ、オフェンシブな行動(飛び込み、差し込み、その他奇襲技など)にリターンが多く設定されており、それを前提とした立ち回りが崩れてしまう。リスクとってようやく2/60秒有利になるという世界で、「一瞬」という名の0.1秒の停止は長すぎるだろう。

また、コンボも問題だ。ギルティギアのような、キャンセルを繰り返す順押し系コンボは多分に先行入力が効くためラグ下でもコンボを完走しやすい。一方で、先行入力が効きづらくコンボや連携中の最速入力や目押しを求められるストリートファイター系では、文字通りの「目押し」はラグにより失敗のリスクが高まる。スマブラなんか無限に空中制御できるから同期すべき材料が常に多くて大変だろうなと思うが、ハード側の標準遅延が重いし有線ポートも標準搭載されていなかったから、ネット対戦はこういうもの、として織り込み済みなのだろう。

なぜ高速通信が可能な現代のネットでも無線が疎まれるのか

リスクがあるとはいえ、「現に無線で快適に対戦できている」という意見は多い。そして、無線接続をメーカーが禁じているわけでもない。また、技術の進歩はあり、インフラの進歩のみならず、ソフトウェア側でもロールバックコードの実装により、15年前では信じられなかったほど、現代の格ゲーは滑らかに、軽やかに、安定してネット対戦できるようになった。

ではなぜ、未だに格闘ゲーマーが無線、wi-fiを忌み嫌っているのか。それは、「納得したいから」。そして納得度というのは、格闘ゲームの対戦という時間の密度によるものだと俺は分析している。

格闘ゲームは最大でも1ラウンド99秒で決着がつく。先述した通り、初心者も含めて、無意識でも、1/60秒の単位でキャラクターを「互いに」動かし、勝敗を決している。勝つのも負けるのもそのごく短時間の、操作の結果だ。1試合30分かかるFPSでも、1回だけラグアーマーで殺され、勝敗に影響なくてもモヤっとするのに、長くて3分の格ゲーの試合で、ジャンプの瞬間、時間停止して、そこから対空、最大コンボ食らって負けたら、そりゃ腹も立つだろう。

昨今のタイトルでは回線表示の良いもの同士ならトラブルはほとんどなくなったが、そういった有線同士の試合でもトラブルは起こる得る有線同士のトラブルでもモヤっとするのに、無線相手の試合で納得できるか? いいや、出来まい。というのが、俺の感覚ではある。有線ならプロバイダ等インフラのせいにできるが、無線ならテメーの部屋のせいである。実際のパケットのやりとりの経過は関係ない。

なぜ無線をメーカーが「許している」のか

日本のメーカーはゲーマーコミュニティとそれほど密接ではないという印象を持つ人は多いだろうが、実際に多く届けられている意見は、目にはされている。にも関わらず、なぜ、無線を一括で事前にマッチングから弾く設定が実装されないまま現在に至るのか?
1つは、お察しの通り、無線ユーザーの割合の多さの問題であり、それらへの配慮、及び彼らを取り込みたいというメーカー側の商業的な理由。
そしてもう1つ大事で、しかし言及されない原因は、ハードを供給するファーストパーティによる作成基準の問題だ。作成基準にはユーザビリティに関するもの、安全に関するもの色々あるが、ユーザーを排除するような仕組み(ユーザーのキック(部屋からの追い出し)やマッチング制限)には規制が存在した。ハードごとに色々と規定がある。ソフトメーカーは、作成基準を逸脱したゲームを供給することはできない。PC版が増えた現在でもCS機は未だ支配的であり、ソフトをマルチプラットフォームで展開する以上画一的な対応とせざるを得ないだろう。
要するに、メーカーが「不本意だが許す」という判断をしてお目こぼしをしている可能性が存在するということを指摘しておく。
俺はゲーム業界を離れて久しいので上記の話題は現代のハードで適用されているとは限らないし、ハードや機能への個別具体的な言及ではないため、守秘義務違反にはならないと判断し、言及した。

ゲームは気軽な娯楽。だけどドレスコードはある

ゲームは文字通り遊びである。出先のwi-fiで遊ぼうが、ワイヤレスの携帯機で遊ぼうが自由だ。一方で、インターネットでレーティングされた無作為の対戦相手は実在するし、その気構えは分からない。ただ「ランクマッチ」とラベリングされた対戦相手というだけである。そこには解釈の余地が存在する。カジュアルな環境が歓迎されるか分からないが、許可はされている。娯楽であっても、場所ごとのトーンとマナーに合わせて、最低限の環境を整えたほうが楽しむ余地は増えるだろう。pingが速くても、ソフトや相性、一時的不具合でトラブルは起こる。しかし、回線表示5で、有線表示だったものに対して、不正や悪意を見出すものはいないだろう。人ではなく、優良を誤認させたソフトの判定が悪いのだ。数メートル1000円ちょっとのLANケーブルを、ルーターに挿すだけで、それが手に入る。ならば、それをしないという相手に無知や悪意を見出すのは無理からぬことなのではないか。

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