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「日本生まれの空飛ぶ車”SkyDrive”をつくるプロジェクト」 Cartivator代表 中村さん

本記事は2015年に対談したものです。情報はその当時のものですので、ご了承ください。

MMS本編

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enmono 明けましておめでとうございます。第96回マイクロモノづくりストリーミングは、御茶ノ水の「TAMコワーキングスペース」からお送りします。ゲストはCartivator代表の中村さんです。

Cartivatorは空飛ぶ車「SkyDrive」を開発する、若手エンジニア団体です。本日はSkyDriveプロジェクトについてお話を伺いますが、現在、クラウドファンディングでプロジェクト支援を募集中です。皆様ぜひ、ご支援を賜ればと思います。それでは中村さん、自己紹介をお願いします。

中村 Cartivatorの代表をやらせていただいています、中村と申します。自動車会社で設計を担当していまして、業務外の有志活動でCartivatorを立ち上げました。この活動を始めた理由は、生涯を通じてやりたいことがあるからです。私は子どもの頃フェラーリに憧れて、小学生の時から「かっこよくて速く走れるモノを作りたい!」という思いを持っていました。

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enmono 小学生の時からですか。それで、そのための勉強をしようと。

中村 自動車エンジニアになりたくて、理工系に進みました。自動車会社に就職してその夢は叶ったんですけれども、スーパーカーのような夢のある車を作ることは、会社の中ではすぐに実現できません。2年前、ある方から「思いがあるなら、実際にアクションを起こしてみたら?社会人向けのビジネスコンテストがあるよ」と教えていただいて。友人2人と出場したところ、20チーム中優勝することができました。

enmono どのようなものを提案したのですか?

中村 オーダーメイドの車の製造・販売プランを提案しました。小さい電気自動車のカテゴリは、法規制的に自由度があるところなんですね。1人、2人乗りの電気自動車を使って、外板部分を変えられるようなモデルを考えました。「せっかく優勝したのだからプランを形にしていこう」と、会社に提案しながら平行して、自分達でアイデアを練り直してきました。3人だったメンバーも今では10人に増え、コアメンバー以外を含めると40人くらいいます。

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enmono エンジニア系だけでなく、ビジネス系の人もいますね。

中村 私がどちらもやりたいタイプなので。大学の時、学生フォーミュラという学生がレーシングカーを製作して競い合うコンペティションに参加し、チームリーダーを務めていました。メンバーを増やすためホームページを製作してPRしたり、スポンサーまわりをしてメーカーから部品を提供していただいたり、あらゆることをしました。

enmono その時のマネジメント経験が活きているのですね。そもそもenmonoと中村さんとの出会いは、学生フォーミュラの先輩だった方から「空飛ぶ車を作りたい人がいる」と紹介していただいたんですけれども。中村さんは実績があり、仲間がいるという強みがあります。でも、お話を伺う前は正直……。

中村 やはり最初は、懐疑的なリアクションをされます。

enmono 空飛ぶ車のコンセプトは、皆で決めたのですか?

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中村 はい。いろいろな方からアイデアをいただいたり、100個くらいアイデアを出した中で一番、皆が納得したものでしたね。ディスカッションの合宿をやるために、四国まで行ったりしました。移動中、「人はなぜ移動するのか」と考えたり、車の価値を考えたり。本質的なところを突き詰める議論をしていくなかで「自分の使命は何か」と考えるようになり、「自分がもらってきた夢を次の世代に同じように提供していくことが私の使命」と気付いたのです。空飛ぶ車のコンセプトが出てきて、自分達もハングライダーで飛ぶ体験をするなどした結果、「次世代の子ども達に夢と憧れを提供できるもの」として空飛ぶ車を開発することに決めました。

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enmono 次の世代に繋ぐため、夢のあるコンセプトになったのですね。

中村 海外では既に、空を飛ぶ車があります。ただし、それらは羽を閉じて道を走っていて、飛ぶ時は滑走路へ行って羽を広げなければなりません。サイズが大きく、着陸時の場所に制約があり、公道からも離陸不可。そして、飛行機並みの操作技術が必要です。そうなると、プライベートジェットを道でも走れるようにした感覚なのかなと思っています。我々が狙っているのは長距離ではなく近距離で、小さくて、誰もが自由に空を飛べるものです。もしかしたら、タイヤがなくてもいいかも知れないですし。

enmono タケコプターのような。

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中村 究極的には近いですね。SkyDriveは小型の1~2人乗り自動車と、マルチコプターという複数の羽を持つヘリコプターと、セグウェイのように体重移動で直感的に操作できるものを組み合わせて、世界最小サイズで、公道からの離陸が可能で、直感的な操作で飛べるようにします。

enmono 1人乗りですね。

中村 特徴としてはプロペラが4つある間、横に2つと前に1つタイヤがあります。3輪ですね。それによってなるべく間隔をつめて、人がぎりぎり乗れるサイズにします。

enmono 乗るところは密閉されるのですか?

中村 高くても10メートルのところを飛ぶことを考えて、むしろ、オープンにしようと思っています。風を感じることができて、万が一の時にすぐに脱出できます。リスクについては皆さん心配されるので、簡単に説明させていただきます。墜落のリスクについては、乗っている人はパラシュートをつけて守るようにします。また、2段のプロペラ構造にして、片方が機能しなくなっても飛べるようにします。空中事故に関しては、最終的には自動運転のような機能も必要になるのではと考えています。

enmono 1/5の試作機を作ってメーカーフェアに出展された時、どのような反応でしたか?

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中村 2014年の8月に大垣、9月にニューヨークのモノづくりの祭典に出展して、多くの方から「ぜひ実現してほしい」という言葉をいただきました。ニューヨークでは会場の都合で試作機を飛ばせませんでしたが、映像を見ていただきました。子どもが驚いた目で食い入るように見てくれて、お母さんが「将来、これに乗るのよ」と言っていました。

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enmono 次は1/1の試作機ですね。

中村 2020年の東京オリンピックの開会式で、プロトタイプを飛ばして聖火台を灯すというのをやりたいです。それで日本の技術を世界にアピールして。

enmono 5年間開発をし続けるキャッシュをどう稼ぐかが課題ですね。

中村 会社の中で提案し続けながら、自分達のコアとなる技術を確立して、開発した技術をもとに受託開発する方向も考えています。大手企業では難しい、小さい規模で早く動けて、社外の方と自由に繋がることができるところを売りにしていこうと。

enmono 基本的には、所属されている会社との協力関係を築きながら、ということですね。

中村 この空飛ぶ車の事業化は2030年を目標にしていて、量産というところまでにらんだ時に、量産工場を自分達で構えることはできません。大手企業と手を組まないとできないと思っています。

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enmono 中村さんは今、30歳ですから、45歳ですか。それくらいスパンが長いと、事業マネーですよね。

中村 そこに向けては、「本当に飛べるのか」とか「ニーズはどういうところにあるのか」など、さまざまな疑問があると思うんですね。そういうのを議論していても推定でしかないので、モノがあることが重要かなと思っています。

enmono マーケティングしても、市場がないですから。

中村 一番ニーズがあるのはインフラがないところ、例えばアフリカのような道もないところにニーズがあると考えていますし、法規制という意味でもやりやすいと思っています。砂漠地帯など、水を汲みに行くのに時間がかかる地域だとか、洪水が多くて車が水没してしまうような地域で使えるのでは。今、車で高速移動するとか悪路を移動することはできますが、深い砂漠や水の上を走ったりすることはできないですよね。私なりの「次世代に提供する夢」の定義は、「想定しうる能力を超えたもの」。空飛ぶ車が、正にそれができる車なんじゃないかと思っています。

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enmono その提案は、昨年のビジネスコンテスト「TOKYO STARTUP GATEWAY」で優秀賞を受賞されましたね。

中村 早くプロトタイプを作って、実際に使ってみて、どのような使い方があるのかというところの開発を加速していくことが我々の役目です。

enmono 今後、日本のモノづくりはどうなっていくと思いますか?

中村 先ほどお話したことに近いんですけれども、戦後のモノづくりが経済と共に伸びていったことがもう一回あるかというと、既にいろいろなモノが揃っている状態なので、そのレベルまでいくのは難しいかなと思うんです。ただやはり、逆に進み過ぎて動きにくくなっている。規制だとか仕組みだとかいうところで。動きにくくなっているところに関して、「自分たちが動ける」と思った人が早めに動いて、既存のインフラと上手く手を組んで、小さい風穴をたくさん開けていくことが必要なのではないでしょうか。そして、いつの間にか大きい風穴ができていて。そういったコンテンツもしかり、仕組みもしかり、必要だなと感じます。

enmono 大手メーカーとベンチャーが連携して、みたいな感じですよね。最近は大手メーカーと元社員が立ち上げた企業が連携して、協力体制で一緒にやるようになってきました。元気がいい人をあえて会社の外に出していくことは、日本の活性化にも繋がるんじゃないかと思います。本日はありがとうございました。

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