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困窮世帯への30万円給付の新たな支援策は、ほとんどの困窮世帯は使えません

緊急事態宣言の延長が決まり、ますます追い詰められる人が増えることは明白です。困窮世帯からの悲鳴が上がる中、5月28日に、政府より困窮世帯への新たな支援策として、困窮世帯への3ヶ月で最大30万円の現金給付の支援策が表明されました。

困窮世帯へ最大30万円の給付金 政府が新たな支援策

ようやく、政府も困窮者への支援を積極的に行なってくれるのか?と思いましたが、中身を見ていくと、この給付を受ける条件が大変厳しく、これでは、今困っている多くの人は利用できません。

対象となる世帯もたった20万世帯、給付見込みも500億円と、非常に少なく、これをもって、困窮世帯への支援を済ませられては、多くの困窮者はますます追い詰められます。

なぜ、この給付では困窮者は救われないのか、一つ一つ確認していきましょう。

①前提となっている「緊急小口資金」と「総合支援資金」を、知らない困窮世帯がたくさんあります

現在発表されている条件は、「コロナで減収した人が利用できる「緊急小口資金」と「総合支援資金」を、上限額200万円まで借り切った世帯」となっています。

まず、緊急小口や総合支援金をそもそも、知らない人がいます。緊急小口も総合支援金も申請しなければ利用できません。本当に困窮している方は、情報弱者でもあります。どんなにテレビや新聞で政府が情報を提供しても利用できない人がいます。

ファミリーサポート事業として、私たちが支援をしている全国の困窮子育て家庭に2021年2月5日〜2月7日に取った緊急アンケートでも、この支援制度を知らない人は非常に多かったです。

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今回条件となっている、緊急小口20万円の貸付を利用している人は、わずか25%。知っているが利用していない人は57%。そもそも知らない人が18%

さらに、緊急小口の後で利用できる総合支援資金に関しては、知らない人が51%、利用している人は13%しかいません。

ファミリーサポート に登録されている方の年収は200万円以下が約半数、貯蓄10万円未満が40%であり、子どもを抱え苦しい世帯であるのは間違いありませんが、総合支援の特例貸付を利用している世帯は非常に少ないのです。


②困窮世帯が、200万円の借金をしないと30万円の給付が受けられないという非合理的な設計

緊急小口資金も総合支援資金も、給付金ではなく、貸付金です。例えば、コロナの前には十分な収入があって、またすぐ十分な収入が戻るような方には、貸付も有効です。しかし、コロナの前から非正規雇用でギリギリの生活を続けていたような困窮子育て家庭には、そもそも「貸付」という借金を重ねても、返済が重くのしかかります。

困窮世帯に、200万円の借金をさせて、そこまで借り切ったらようやく3ヶ月で30万円を給付してもらえる、というのが、政府が行う困窮世帯支援というのは、あまり合理的とは言えません。世界各国のコロナ支援を見ても、このように、貸付ありき、という話は聞きません。

年収200万円以下、月収15万円というようなギリギリの生活をコロナ前からしていた子育て家庭が、コロナ後に毎月1万円を返済することは、大変です。コロナ後も、食費を削り続ける生活を8年も続けなければなりません。子どもが成長すればこの先教育費も増えます。今のしわ寄せが、子どもの未来に影響します。

飲食物を駅で実演販売しているチェーン店のフルタイムアルバイトなのですが、客足が減り、売れなくなり、定時の時間まで働けずごめん暇やから上がって!と言われます。社員を優先するように本社から言われてるようで、使い捨てなんだと精神的にも経済的にも苦しくてたまりません。4人の子どもたちに申し訳ないです。

このような、子どもを4人抱えた非正規雇用のシングルマザーが、200万円の借金をしないといけないような給付が、困窮世帯の助けになるとは思えません。


③そもそも、現場では困窮子育て家庭が総合支援金を貸してもらえない

緊急小口も総合支援資金も、基本的には1年後から返済をしなければなりません。緊急小口に関しては、1年後に住民税非課税程度の低所得なら返済免除になることが、政府から発表されましたが、総合支援資金に関しては、返済免除に関して、まだ方針が決まっていません。→方針が決まりました。下部に追記しております。

返済が前提となっているために、返済が見込めない世帯には、どんなに困っていても貸付の申請をさせない、ということが起こっています。

シングルマザーで子供も小さく、なかなか働く事ができず生活が本当に苦しいです。 一律給付金は出さない、緊急小口資金、総合支援資金の活用してって菅さんはいいましたが、総合支援資金、何回も不承認です。自分や周りも。うまく活用してと言うなら、コロナ特例の貸付なら利用しやすく審査してほしい。
国民は本当に困っています。解雇になった人間は、休業支援金も何も関係ありません。困窮世帯を救うためにも給付金 をお願いしたいです。緊急小口資金、総合支援資金全部借金です。 困窮世帯に金を借りろって死ねって言ってるのと同じだと思っています。 貧乏人は日本にいらないということでしょうか?それとも、自分たちの利益にならないことはやらないということでしょうか?

例えば、コロナ前に生活保護を受けていて就労収入が無く、頑張って生活保護を抜けて非正規の仕事をしていたが、コロナでシフトが減り収入が減ってしまった方は、昨年度の収入と比較すると所得は減っていないので、緊急小口が申請できなかったそうです。

総合支援資金の相談に行ったら、「母子家庭で子ども3人育てていたら、コロナが終わっても返せないでしょう?」と言われて申請させてもらえなかった、という人もいました。最初の支援が、貸付金であるために、一番利用したい人が支援を受けられていないのです。

④ハローワークで求職中という条件は、子育て家庭をさらに遠ざける

さらに、給付を受ける条件として、ハローワークで求職中というものがありますが、仕事を探すために、ハローワークを利用していない人がたくさんいます。ハローワークが利用しづらいのです。正規雇用で失職し、失業保険をもらいながらハローワークで仕事を探せるような方は非常に少ないのです。多くのハローワークは、平日9時から17時しか空いていません。パートの仕事が減ってしまったので、Wワーク、トリプルワークの仕事を探したいというようなニーズにはマッチしません。平日昼間にハローワークに出向いてゆっくりと仕事を探す余裕のない非正規雇用の方は、インターネットの民間の職業紹介サービスを利用しています。

⑤3ヶ月で最高30万円という給付額は十分なのか?

困窮世帯への最大30万円と聞くと、一度に30万円が支払わせるイメージですが、新たな支援金は単身世帯で月額6万円、2人世帯で同8万円、3人以上世帯で同10万円とし、7月以降の3カ月間、給付されます。つまり1度に最大10万円しか支給されません。子どもを3人も4人も育てている家庭に、月10万円は、あまりにも少ないです。

⑥子育て家庭にとって、最後のセーフティネット「生活保護」は、砂上の楼閣

この給付金が受けられない困窮子育て家庭には、生活保護があるじゃないか、と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、現在の生活保護制度には課題も多く、積極的に利用したい方はほとんどいません。どうしようもなくなって生活保護の相談に行っても、受けさせてもらえない、という声もたくさん届いています。

ファミリーサポート 事業で生活保護のアンケートをとった結果は以下の通りです。

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出来るなら利用したくないが62%、どんなに苦しくても申請したくないは22%です。

受給制限が厳しい。田舎では車がないと、生活できない。都会では不要かもしれないのに、同じ基準では不公平感が 否めない
離婚したての3ヶ月だけ利用しまいたが、担当さんの早く働きなさいと、厳しいなら元旦那さんに連絡するよ?と言われ たり、親戚、元旦那さんに支援できないかの連絡が行くので絶対に利用したくない。連絡もとらずにしてるのに、かかわりた くない。普通の生活に戻りたいけど、生活保護になってるってのは、身内や元旦那さんにはバレたくない。
無収入なので生活保護を利用したくても、親兄弟に連絡されるというので申請できない。今の時代みんな自分の生活に 大変なのになぜ別世帯の親や兄弟にまで連絡するのか意味がわからない。扶養してくれるならとっくに助けてもらえている はず。親に相談したら、生活保護なんて恥を晒すくらいなら死んでくれと言われました。そんなこと言われて申請できます か?
生活保護を受ける際、返戻金のある保険は解約して生活費に当てなくてはなりません。相談員は 生活保護を受けるなら必要ないし、医療費は国で面倒見るから無駄になると言われました。生活保護を受けると一生抜けられなくなる仕組みです。本来の目的である困窮した時のための制度とはかなりかけ離れていると思います。自立の ための制度へとなるよう、本当に困った人のために活用できる制度にして欲しいです。
過去に生活保護を受給していました。何かと厳しく周りの人等に知られてしまうのが嫌でした。役所の人に兄弟から支援して貰えば良いじゃないか等と言われたこともありました。親が離婚して生活保護を受給してると将来子供も離婚して生活保護を受給するとまで言われたこともあり 何故ですか?と聞いたところ楽してお金が貰えるのを子供が見ていたからだと言われました。それを聞いた時はショックでした。
私にもしものことがあった時の子供の為に死亡保険に入ってますが、生活保護になるとそれも解約しなくてはならず、生活保護にはならないよう切り詰めて生活してます。
生活保護申請しに行ったら、妊娠中だったのですが、子供をおろせばいいと言われ、凄くショックでした。困っ ていても助けてくれない
貸付金も含め、役所に相談してもダメでした。 生活保護に関しても、年齢的に働けるでしょ?と言われ、話すら聞いてもらえませんでした。 コロナ禍だろうがなかろうが、役所に行っても話すら聞いてもらえなければ打つ手がないです。


オリンピックもワクチンも大事ですが、国民の生活を支えることも同じように大事です

今回の支援策は、20万世帯、約500億円の給付ということです。あまりにも少ないと思います。

Go Toトラベルで、純粋に国民に還付された税金は約5000億円 (旅行代金の35%を割り引く分が3831億円(昨年12月15日まで)、旅行代金の15%を観光地で使えるクーポンが1011億円(同28日まで))

Go  Toで5000億円を、旅行に行ける、外食ができる余裕のある世帯に使うのなら、困窮世帯への支援にも同じようにやらないとバランスが悪いと感じます。困窮者には1/10の予算はあまりにも少ないと思います。

困窮世帯への給付は、確実に消費に回ります。多くの人が明日の生活も、次の食事もできずに、困っています。自殺者が増えている、孤独や孤立も問題になっていますが、そのうちの多くの問題は、お金で解決できると思います。いのちの電話を増やすより、現金を給付した方が、自殺予防の効果はよっぽど高いと思います。

コロナの影響で、元々仕事が少なくなっていたところに、営業ノルマやその他コロナ対応などがのしかかり、鬱を発病してしまいました。
それまでは離婚後バリバリ働いていており、まさか自分が、という感じです。
2021年1月下旬より、休職中ですが、4月になった今も、傷病手当てがまだ支給されず、貯金と借り入れで生活しています。


もうすぐ夏休みが来ます。昨年は、特別定額給付金1人10万円が支給され、それにより夏休みを生き延びた困窮子育て世帯がたくさんあります。給食がなくなる夏休み、このままでは、大変なことになります。

困窮者が、まずは命を命を繋げる様、明日、子どもに食べさせるご飯の心配をしなくて済む様に、できるだけ早く確実に困窮者への現金給付を、ぜひ、政府には早急に検討して欲しいと思います。


【6月1日追記】緊急小口資金・総合支援金の返済免除について通知が出ました!

緊急小口も総合支援金も該当年度の収入が住民税非課税であれば、償還免除となります

借受人と世帯主が住民税非課税であれば償還免除の対象となります。そのほかの世帯員(例えば働いている子どもが同居している場合など)の課税状況は問わないそうです。

ただし、住民税の所得割のみ非課税の方は、免除になりませんのでご注意を!

昨年令和2年に借りた方は令和4年度(来年)が償還初年度になり、令和2年度または令和3年度の住民税が非課税なら償還免除、ということです。

今年(令和3年度)借りる方は、どうなるのか?などはちょっと資料ではわからないので、個人向け緊急小口資金・総合支援資金コールセンター 電話 0120-46-1999 に聞いてみるのが良いかもしれません。

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上記チラシのPDFはこちらからDLできます。https://www.tcsw.tvac.or.jp/activity/documents/shoukanmenjo-goannai.pdf