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特例貸付3割が返済不能でいいんです!

今朝1月10日の日経新聞朝刊1面に「特例貸付3割が返済不能」と出ていて、あたかも返済できない人や、そんな人に貸付をした社会福祉協議会や、そもそもの制度設計にミスがあったような書き振りに、非常に驚きました。

このままでは返済ができない方が、肩身の狭い想いをなさる、酷いバッシングにあってしまう可能性があるので、そもそも、このコロナ禍で行われた緊急小口貸付や生活支援貸付についての説明します。


本来は給付で渡すべきお金

2020年3月のコロナの緊急事態以降、非正規雇用の方などは、仕事に行けず、働きたくても働けずに収入がなくなり、貯蓄もない方に対して、

本来なら借り入れではなく、「生活を支える給付金」として渡すべきものだったのを、日本では生活保護以外にまとまったお金を国民に給付する仕組みがないために、やむなく、災害時などに使っている「特例貸付」という貸付の仕組みで対応したのであり、最初から、返済免除が確約されていた制度です。
「このままでは、食べるものがなくて死んでしまいまうから、とにかく子どもたちにお金を出して欲しい」と政府にお願いしたときに
安倍首相も他の政治家も、「これは返さなくていいお金ですから、とにかくこれを使って命を繋いでください」とはっきりとおっしゃっていました。
「給付はできないから、とにかくこれをどんどん使ってほしい」と言っていました。

この制度がなければ、生活保護受給者はものすごく増えていただろうし、生活保護を受けられない人は、自死などを選んだ方ももっと増えていたと思います。

日本の貧困問題は、ワーキングプアであり、コロナのような「働けなくなった」時への備えが全くできないような低賃金で働いている方がたくさんいることです。

特例貸付を使って、なんとかコロナを凌いで、物価高だけど、生活保護は受けずになんとか頑張ろうと思っている方がたくさんいらっしゃいます。

免除決定2100億円は、確実に生きたお金であり、個人的には7割の方は、少ない収入からなんとか返済しようとされていることの方が驚きです。

子育て家庭は3割と言わず全員返済免除にしたほうが良い

非正規雇用のシングルマザーや、イベントや、観光、飲食の自営業の子育て家庭で、子どもを食べさせるために、この特例貸付を利用した方も少なくありません。

特例貸付は、「住民税非課税」が免除ラインです。給与所得者なら年間200万円程度。ここから、家賃を払い、子どものご飯を食べさせて、教育も受けさせています。

現行では、これを超えたら、特例貸付を返済しなければなりません。

例えば、非正規シングルマザーで、高校生と中学生の2人の子どもを育てている人が、パートに行けなくなり、やむなく特例貸付を利用して、ようやく仕事も戻って、住民税非課税をちょっと超えたら、その少ない収入から月5000円、1万円の返済を始めなければならないのです。

そもそも住民税非課税ラインでの返還免除というのが、特に子育て家庭にはふさわしくないのです。

特例貸付の数十万円のお金は、確実に子どもの命をつなぐために使われたお金です。私は、子育て家庭は、全員返済免除、それが難しければ、せめて私立高校無償化の910万円以下とか、年収600万円程度を返還ラインにして、それ以下の子育て家庭は、返済免除にした方がいいと思います。

この1万円があれば、家の食事に肉や魚のおかずをつけたり、好きな部活やお稽古をさせたり、大学や専門学校に行くための貯蓄になります。その方がよっぽどお金が生きます。

少子化だからこそ、今の高校生、中学生にしっかりと成長してもらって、大きなリターンを得た方が、国にとっても良いと思いませんか?

年収200万円というような非常に低所得の人に、コロナという災害で生きるために必要なお金を給付せずに、貸付にして、返済できないことを責め立てるような論調は、本当に許せません。

そもそも、返還免除ありきの、本来は最初から給付されるべきお金であったのに、日本では、国民にお金を給付する制度が、生活保護以外に全くないので、やむなく貸付という形で見切り発車をしたのだし、3年以上続くのに、生活に困った人に生活保護以外の「現金給付」の仕組みをつくらず、「貸付」を続けた政府の問題を取り上げるべきだと思います。

また、多くの人は、働いているのに、本当に収入が低い。

日本の貧困問題は、ワーキングプアという世界でも非常に珍しい問題です。普通は働けば貧困から脱出できるのに、一生懸命真面目に働いていても貧困という問題をどうするのか?

企業の内部留保は500兆円超。過去最高益という企業も多い。一方、一生懸命働いても十分な給与が稼げない人がたくさんいます。この問題にもっと政府はしっかりと向き合ってほしいと、心から思います。

あんな大災害で、免除決定が2100億円しかない、ということの方が驚きですし、残りの方々が、無理な返済をしてさらに厳しい状況に落ちないようにと、心から思います。

紙面では社会福祉協議会の問題にも触れていますが、これも事実とは違います。毎日、収入がなく生活が成り立たない人と丁寧に向き合ってきたのは、社会福祉協議会の方々です。

あの状況で、社会福祉協議会が特例貸付を引き受けてくれなければ、どれほどの人が命を失っていたでしょう。

「制度設計に甘さ」とありますが、甘いのは、特例貸付の制度設計ではなく、日本の困窮対策として、生活保護以外の現金給付の仕組みがないという「甘さ」であり、ワーキングプアという日本特有の課題に向き合ってこなかった「甘さ」です。

ワーキングプアのための生活保護でも貸付でもない給付の仕組みが必要です

雇用の流動化が進み、女性の54%、男性でも22%が非正規雇用です。誰でも突然職を失い、手持ちの現金が無くなる可能性があります。
コロナはどんなに気をつけていても、濃厚接触者になれば仕事に行けませんでした。そういう危険性は誰にでもあります。
生活保護は重要ですが、社会の構造が変わる中、生活保護ではカバーしきれない新しい困窮があります。
困った人への現金給付や、フードスタンプのような生活を支える給付の仕組みが必要です。

お金がなくて困っている人に、貸付をして、返済しないと責めるなんて本当におかしな話だと、私は思います。

<参考>
日経新聞 コロナ禍の特例貸付、3割が返済不能 2108億円免除決定
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE067KN0W2A201C2000000/