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静かに進む鎌倉投信の挑戦

5月27日にNewsPicksパブリッシング社から「社会にいい投資入門」を出版する。効率的にお金を増やすこと、短期で利ザヤを稼ぐことを目的とした投資が大多数を占める中で、投資の先にある社会や未来にも少しだけ目を向ける「きっかけ」になればと思い筆をとった。本を手に取ってくださった方に、投資が持つ資産形成を超える可能性を感じてもらえたらとても嬉しい。
この本の後半で軽く触れたが、鎌倉投信は「結い 2101」をよりよい投資信託に発展、成長させていくことと並行して、3年前から静かに挑戦していることがある。将来、「結い 2101」からの投資へとつながるようなスタートアップ支援の取り組みだ。今回は、そのことについて触れてみたい。

鎌倉投信が日本株にしか投資しない理由

鎌倉投信は、いまのところ日本の会社にしか投資をしていません。その理由は、遠く離れた海外の会社を調査することの難しさもありますが、それ以上に、日本のポテンシャルを感じているからです。さらには、そのポテンシャルを伸ばし、日本を豊かな国にしていきたいと強く願っているからです。
 
日本の「いい会社」のなかには、日本のなかで新たな事業領域を創造したり、これから世界に展開できる会社は数多くあります。日本は、少子化や高齢化、医療や介護、教育、自然災害、エネルギー問題などさまざまな社会課題を抱えています。直面する社会的な課題をどのように克服し、持続的な社会をいかに再構築するかは、世界最先端の挑戦であり、会社にとっては新たな事業領域の広がりを生む可能性を意味します。それは同時にリターンを生む機会でもあるのです。
 
それをつなぐ方法の1つが、投資を通じて社会課題を解決する「いい会社」の成長を応援したり、「いい会社」を増やす投資ではないでしょうか。

社会をよくするスタートアップ投資

鎌倉投信は、創業当時から、「いい会社」は、上場、非上場関係なく投資をし、応援したいという想いを持ってきました。満期のない公募投信でそれをおこなうことができれば理想的ですが、制度上、毎日の時価評価やお客様のお金が日々出入りする度に有価証券を購入したり、逆に現金化したりすることが求められますので、市場で売り買いができない非上場会社への投資には高いハードルがあります。
 
そのことから、2021年3月に、スタートアップ投資専用の新たなファンドを立上げました。こちらは、リスクも高いことから個人向けではなく、プロといわれる金融機関や上場会社などの特定投資家を対象とする私募型の有限責任投資事業組合(いわゆるベンチャーキャピタルファンド)です。そのファンドは「創発の莟(つぼみ)」といいます。名前の通り、これからの社会を創発に導くスタートアップを支援するファンドで、現在18社に投資しています。

ヘラルボニーの市場創出

2020年夏、東京オリンピック・パラリンピックが開催されました。どうしてもオリンピックのほうが注目されがちですが、パラリンピックでハンデキャップを持つアスリート達が全力を尽くし、多くの人に感動を与える姿を観ていると、ハンデキャップは個性であり、才能であることを感じます。
東京パラリンピックの閉会式のフィナーレでは、東日本大震災で被災した東北3県で活躍する障碍者アーティストが描く、個性的で多彩な色彩の絵をモチーフにしたプロジェクションマッピングが会場を彩りました。そこに込められたメッセージは、東京オリンピック・パラリンピックの理念である「復興」、そして「多様性や違いを認め合う調和」でした。
 
閉会式フィナーレで会場を魅了した障碍者アートを提供した会社は、「知的障碍のある作家と、『支援』ではない対等なビジネス関係を築き、世界を隔てる先入観や常識をなくす」ことをめざすスタートアップ、ヘラルボニー(岩手県・非上場)です。
共同代表の松田崇弥・文登兄弟の言葉「普通じゃない、ということ。それは同時に、可能性だと思う」は、いつも心に響きます。
 
知的障碍のある作家が描く絵には、誰にもまねすることができない強烈な個性があります。ブラシマーカーを用いてさまざまな形や色彩を緻密に描く作家、ひたすら丸を描き続ける作家、幾何学模様の独特な画風で建築画を描く作家、数字や文字をつなぎ合わせた造形表現が得意な作家など、その画風は個性的で力にあふれています。
 
原画だけではなく、ファッションやインテリアなどとの相性はぴったりです。そこに着目したヘラルボニーは、こうした作家や作家が所属する施設と契約をし、自社ブランドで商品をつくって販売したり、アート作品をライセンス提供するなどして事業を展開しています。
 
こうした商品が売れれば売れるほど、将来にわたって障碍を持つ作家や施設にロイヤリティー収入が入る仕組みです。ヘラルボニーは事業を通じ、福祉のなかで生きるしか選択肢のなかった障碍者に、資本主義経済のど真んなかで活躍できる舞台を提供し、新たな経済市場を生み出しました。同社は、現在、世界展開も視野にいれIPO(上場)をめざしています。
 
ヘラルボニーは、鎌倉投信がスタートアップ支援のファンド「創発の莟」から初めてリード投資家(同時期の出資に際し、複数の投資家をまとめる役割を担う投資家)として出資した先です。これからもIPOに向けて全力で伴走・支援をおこなっていきます。
 
関連記事:【レポート】コラボキャンペーン記念イベント ~ヘラルボニーが挑戦する異彩が放たれる世界~

スタートアップから100年を超える上場会社まで

スタートアップに投資をする投資会社は数多くありますが、「上場後」の世界を知る運用者や社会的視点を持った運用者、さらには上場会社やさまざまな地域などと多様なネットワークを有する運用者は意外といません。鎌倉投信は、そうした意味でこれらを満たした珍しい存在といえるでしょう。
 
またスタートアップに投資をする投資家は、エンジェル投資家を除くと、いずれどこかで売却をしなくてはなりません。ファンドを組成する場合は、概ね10年前後の投資期間が設けられており、多くの場合、その期間に上場して株式を公開(IPO)することが期待されています。その結果、いかなる環境においても数字を上げることが求められ、100社のうち数社上場できればいい方で、残りは消えていくという「多産多死の投資モデル」になっているのが現状です。
 
この構造は、いずれ変わっていかなくてはなりません。上場だけを目的とする投資ではなく、M&Aはもとより、事業が軌道に乗ってきた後に自社で株式の買戻しをしたり、ファンコミュニティーなどへの株式譲渡などを含めた、「IPOのみを目的としない」多様な投資スタイルが増えることが期待されるでしょう。
 
「創発の莟」から投資をすることで「いい会社」がふえ、将来、そうした会社から上場する会社が出た暁には、満期のない「結い 2101」からも応援できる可能性が出てきます。1つの運用会社のなかで、社員数人のスタートアップから100年を超えて続く上場会社までを一気通貫で支援する枠組みができました。投資信託についても、新たなファンドの組成に向けて検討をはじめました。
 
これからも、社会の可能性を広げる運用会社として、世界からも一目おかれる存在になれるようがんばります。
 
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!


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