ド級のリトライ、ドリトライだ!!カルト的なネットミームを産み出した漫画「ドリトライ」とは?
皆さんはドリトライという漫画を知っていますか?
ドリトライとは雲母坂盾先生によって描かれ、週刊少年ジャンプ2023年23号から同年42号まで連載されていた作品です。
この作品は全19話、単行本全2巻という言ってしまえばジャンプ打ち切り作品の一つなのですが、実は打ち切り後に何故かSNSでカルト的な人気を持った作品となりました。
このカルト的な人気を持つ要素となったのが、作中の癖になる台詞回し、さらにはあまりにもシュールすぎる作画。これにより元々連載中でも密かに某界隈では人気があったのですが、何故か打ち切り後にその癖になる台詞回しやシュールすぎる作画がSNSで話題となり、結果SNSでカルト的な人気を持つようになりました。
今や作中の癖になる台詞回しを揶揄した通称「ドリトライ構文」というネットスラング。そしてあまりにもシュールすぎる作画により、様々なコラ画像までも生み出されるようになってしまいました。
この「ドリトライ構文」が何か説明すると、
・でもただの○○じゃねぇぞ!?
・ド級の○○、ド○○だ!!
・心が強ぇ○○なのか!?
・ほら○○!!心の強さでもう一丁!!
等というものです。
元ネタ↓↓
そんな感じでなんか使い勝手の良い定型構文が生み出され、結果SNSでカルト的な人気となりました。
そのカルト的な人気の影響なのか、ドリトライ自体は既に完結していたのですが、TwitterことXのドリトライ公式アカウントで最終巻発売の告知内容において、
ドリトライ公式アカウントがまさかまさかのネットミームに乗っかりました
それで良いのか集英社!!!??
一応SNSでは人気が生まれましたが、じゃあ肝心の作品はどうだったのかと言うと、残念ながら19話で打ち切りとなってしまった作品なのでお世辞にも世間一般でも人気が生まれるような面白い作品とは言えませんでした。
まずドリトライという作品がどのような作品なのか、ジャンプ公式サイトでは、
という紹介がされています。
さらに説明するなら、主人公の大神青空は太平洋戦争により父親は出征後行方不明、母親は東京大空襲で死亡。家は焼失し、唯一の肉親である妹の星(あかり)と共に戦災孤児として生きていました。
なお父親は元全日本ミドル級王者の拳闘家(ボクシング選手)であり、その父親に憧れていた主人公は父親のように「心の強さ」で生き、紆余曲折あり自身もボクシング選手として生きていくことになります。
世界観は戦後直後の日本、そして題材はボクシング
まさに「心の強さ」を求められる時代とスポーツを題材にした王道漫画といっても良いでしょう。
なのですが、現実は非情にも打ち切り。
では何故打ち切られてしまったのか考察してみると、個人的には、
・戦後日本という設定が少年誌に合わなかった
・期待したボクシング漫画ではなかった
・作画がどんどん荒れていった
・全てがぶっ飛んだ虹村凶作というキャラ
・対親父戦がやりたい放題
だと思います。順に説明します。
・戦後日本という設定が少年誌に合わなかった
まずドリトライという作品の始まりは太平洋戦争真っ只中の日本の東京です。
そのため、第1話から東京大空襲が描かれています。
そして終戦後、孤児たちは上野駅でホームレス生活をせざるをえない状況となり、さらにはヤクザに虐げられる状況に。
そして妹は当時不治の病だった結核を患ってしまいました。
第1話からエグすぎます…
これが戦後直後の日本の現実であり、戦争の悲惨さなのですが、以降もちょいちょいエグい描写が続きます。
ただこれは週刊少年ジャンプです。基本的に読者は子供です。そのため戦争の悲惨さとなるエグい描写をしていては、子供や読者は敬遠してしまうと思われます。
ヤングジャンプやウルトラジャンプのような青年誌ならウケは良かったかもしれませんが、やはり週刊少年ジャンプに戦後直後の時代の話はなかなか共感しにくかったのではないかと思いました。
一応、週刊少年ジャンプには明治時代が題材の「るろうに剣心」、大正時代が題材の「鬼滅の刃」という超人気作品はありましたが、やはり昭和初期の戦後というのはなかなかジャンプの読者には響かないものなのでしょう。
戦後を題材にした漫画といえば「はだしのゲン」がありますが、実はこれも1973年から1974年の週刊少年ジャンプに連載された作品であり、以降連載元が転々としていきました。
当時のジャンプは今以上のアンケート史上主義だったらしく、一定の人気はあったそうてすが子供受けは悪かったそうです。
やっぱり戦後の描写はエグいですね…
・期待したボクシング漫画ではなかった
まずボクシング漫画といって思い出すのが「あしたのジョー」「はじめの一歩」という日本人なら知らない人はいない二大作品があります。
他にも「リクドウ」という画力がエグいボクシング漫画もあります。
また、ボクシングに限らず格闘技を題材にした漫画といえば「キン肉マン」「刃牙シリーズ」「タフ」「バトゥーキ」などの作品があります。
キン肉マンは超人格闘漫画なので格闘技漫画か?と言われれば難しい部分もありますが、それ以外の作品は題材とする格闘技にしっかりと焦点を当て、丁寧に描写されています。
正直、刃牙シリーズを読んでいれば大体の格闘技は網羅できるでしょう。(空手、中国拳法、ボクシングなど)
ちなみにバトゥーキはカポエイラ題材の異種格闘漫画ですが、こちらも作中で様々な格闘技が出てきます。(柔道、合気道、空手、ボクシングなど)
また格闘技漫画にはそれぞれ名バトルがあり、中でも「あしたのジョー」の矢吹丈vs力石徹戦は内容は知らなくてもなんか聞いたことはあるという人が多いと思います。
また、格闘技漫画は基本的に現実に沿った範囲での描写されるものが多いです。
ではドリトライはどうだったのか。
まず作品の流れとして、集英会虎威組というヤクザに主人公のボクシングの腕が認められ、また組の稼業は裏社会が開催する拳闘(ボクシング)の大会の賞金を得ることであり、そのため主人公は妹の結核の治療費を稼ぐために拳闘大会に勝ち賞金を得るため、虎威組に組入りします。
なお拳闘大会に出場するためには会員証が必要であり、さらに会員証は定数120人で頭打ちかつ120人が会員証を所持しており、さらにさらに会員証は新しく発行されないため、会員証を新たに得るには他の会員から会員証を奪う必要がありました。
まるで「嘘食い」の倶楽部賭郎の会員権だな…
そのため主人公は他の会員から会員証を奪うために拳闘勝負となりますが、
初の拳闘勝負がまさかの反則キャラでした…
一応「心の強さ」で相手に勝ち会員証を奪い取り、拳闘大会には出場できるようになりますが、こういう格闘技漫画で題材にした格闘技の主人公の初戦が反則キャラっていうのはなかなか見たことがありません。
ただこれも戦後の話と考えれば、生き延びるためにやっていたことだと理解はできますが、少年誌でこれはどうなのでしょうか。
そして肝心の拳闘大会の主人公のデビュー戦の相手ですが、
なんと右腕がやたら太い色物キャラでした。
でもただの右腕が太い奴じゃねぇぞ!!
相手の技はなんと右腕を駆使した一撃必殺のウォーハンマー!!これが異名にもなっています。
さらに右肩を外して射程を伸ばす必殺技も炸裂!!
ド級の右腕、ド右腕だ!!
なんというか、王道ボクシング漫画を期待していた読者の心を一撃で粉砕してしまう展開となってしまいました…
あと、めちゃくちゃシュールな描写です…
ただこれがドリトライのカルト的な人気の要因にもなりましたが…
期待したものと違って読むのを止めるやつは心が弱ぇからだ!!やはり心が強ぇ漫画なのか!?
なお他作品のボクシングの描写はこんな感じです
あしたのジョー
はじめの一歩
刃牙シリーズ
リクドウ
ドリトライと比べると…正直に申し上げると雲泥の差ですね…
・作画がどんどん荒れていった
実は連載が続くにつれて作画が荒れていきましました。
第1話
第9話
第13話
1話はマイルドな劇画調に描かれていますが、連載が続くにつれ、その劇画調が薄れていき、作画が荒れてしまいました。
週刊連載は非常に過酷なものですが、実は作者の雲母坂盾先生はこのドリトライでジャンプ2作品目の連載です。
前作はボーンコレクションという作品でしたが、これも非情にも打ち切りとなっています。
これは2作品目でも週刊連載の過酷さに飲まれてしまったのだと思います。
・全てがぶっ飛んだ虹村凶作というキャラ
主人公はある日、虹村凶作という男に出会いますが、このキャラが全てがぶっ飛んだキャラでした。
こいつです
ぶっ飛んだ要因①
謎すぎる技
ぶっ飛んだ要因②
週刊誌にあるまじき薬物中毒キャラ
一応、この虹村も拳闘大会の会員証を持つキャラで30戦30KO勝ちというぶっ飛んだ強さを持つキャラです。
さらに実は主人公の父親と戦争中の日本軍の部下だった男なのですが、とある事件により部隊が壊滅。虹村は命からがら満州から逃げ、生き延びたという男でした。
そのため、色々な経緯があり、主人公は父親の手がかりを掴むためにも虹村と試合になり、見事勝利しました。
しかし虹村は試合中の反則行為により試合終了後、処刑となりました。
少年誌にあるまじきぶっ飛んだキャラ。しかも初登場時がドリトライのジャンプ掲載順初ドベとなった時でした。
おかげで作品低迷、打ち切りへ拍車がかかってしまったキャラとなってしまいました。
なお一部界隈ではこの虹村凶作がカルト的な人気を持つようになり、様々なコラ画像が生まれました。
他にもたくさんのコラ画像が生まれています。
・対親父戦がやりたい放題
主人公の父親は太平洋戦争により消息不明だったのですが、実は生きていたことが判明。
早速主人公は父親に会いに行き妹のためにも連れ戻そうとしますが、かつて心の強さを主人公に教えた父親は戦争の影響により心が折れ、腑抜けてしまっていました。
それでも虎威組の組長が実は父親の義理の妹だと判明し、元ボクシング王者ならボクシングで主人公と戦えということで、勝負となりました。
もうこの時点でジャンプの掲載順はドベかドベ2をさ迷う状態になっていたので実質これが作品の締めとなるラスボス戦ですが、これがもうやりたい放題でした。
ただのボクシングじゃねぇぞ!!!!!
ド級のボクシング!!!!!
ドボクシングだ!!!!!
もはや王道ボクシング漫画を鼻で笑うド級の展開。
というか親父、あんたONE PIECEの世界から来たのか…というほどにぶっ飛んだ展開が続き、まさにやりたい放題でした。
それでも主人公は「心の強さ」で周りに支えられ、「ド級のリトライ、ドリトライだ!!」で親父の目を覚まさせ勝負は終わりました。
もはや打ち切りが決定したので好き放題に描いたのだと思いますが、案外このやけくそ感が熱い展開を生みました。
この「ド級のリトライ、ドリトライだ!!」は何とも言えない説得力がありますね。
以上がドリトライが残念ながら打ち切られてしまった原因かと思います。
結局はジャンプ特有の短命打ち切り作品の一つではありますが、この作品は終始「心の強さ」を唱えています。
この「心の強さ」は現代社会において必要な要素だと思います。
嫌なことがあっても諦めないこと、何を言われようがやり通すこと、一つのことをとことん極めること
全て「心の強さ」が大切になることでしょう。
ちなみに最終回でも主人公が老後、主人公の孫に対し「心の強さ」の大切さを教えています。
ボクシング漫画と侮ることなかれ
これはただのボクシング漫画ではありませんでした。
これぞ、
ド級のリトライ!!!!!
ド リ ト ラ イ だ !!!!!
残念ながらドリトライは打ち切られましたが、作者の雲母坂盾先生のド級の次回作、ド次回作に期待したいですね。
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