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【続報】モデルナ社のChatGPTによる組織改革と、内製化されたGPTsの詳細


はじめに - モデルナ社によるGPTsの内製化は未来図を示している

前回は、モデルナ社がOpenAIと業務提携を行い、社内で750個ものGPTs(ChatGPTの機能をアプリ化したもの)を内製化し、いかに業務効率化を達成しているか、というWall Street Journalの記事をご紹介しました。

前回のnoteはこちらです。

更に詳しい情報はないかと探していたところ、OpenAI社がモデルナ社との取り組みの詳細を発表したものがありました。
より具体的な取り組みが書いてあったので、ポイントだけをご紹介します。

今回も、モデルナ社に対するあれこれの意見は捨象し、ChatGPTおよびGPTsの活用状況に焦点を当てたいと思います。

モデルナ社の社内でのChatGPTとGPTsの活用の取り組み

  1. プロンプトコンテスト:

    • 社内でGPTのカスタマイズや活用法を競うプロンプトコンテストを開催。このイベントは、社員が自らGPTを設計し、実践的な問題解決に活用する方法を学ぶ機会を提供することで、GPTの内製化を促進し、社員の技術習得を促す。

  2. AIフォーラムの開催:

    • 週に一度、2000人の社員が参加するAIフォーラムを開催し、最新のAI技術や社内でのGPT活用事例を共有。このフォーラムは知識の共有と、社内のAIコミュニティの形成を目指し、参加者に最新のAIトレンドへの理解を深め、新しいアイデアを生み出す場を提供。

  3. 個別および集団の変革管理プログラム:

    • 個別の教育プログラムと集団でのワークショップを通じて、6ヶ月で全社員のAI技術に対する理解を深め、技術の採用を促進。これにより、個々の社員が具体的な技術を身につけると同時に、チーム全体が同じ方向性を持って技術革新を進められるように設計されている。

  4. 生成AIチャンピオンズの選出:

    • プロンプトコンテストを通じて選出されたトップのAIパワーユーザー100人を、社内のGenerative AI Champions(生成AIチャンピオンズ)として指名。これらのチャンピオン達は、他の社員へのメンタリングやAIのベストプラクティスの普及を担い、社内のAIスキルレベル全体を引き上げる役割を果たす。

  5. ローカルオフィスアワーズ:

    • 各ビジネスラインと地理的地域でローカルオフィスアワーズを設け、定期的にAIに関するセッションを開催。これは地域ごとのニーズに応じたカスタマイズされたサポートを提供し、地域社員が直面する特定の課題に対する解決策を模索するためのもの。

  6. mChatツールの開発と導入:

    • 社内コミュニケーションを支援するAIベースのチャットボット、mChatを開発し導入。このツールは、社内の情報アクセスを効率化し、日常的な問い合わせに迅速に対応することで、従業員の生産性を向上させる。

これらの取り組みにより、Modernaは社内でのGPTの採用と習熟を促進し、AI技術を活用して業務効率とイノベーションを推進しています。

内製化で開発されたGPTの詳細

  1. Dose ID GPT:

    • Dose ID GPTは臨床試験データの分析を支援するために開発されたGPTで、特定の臨床試験での最適なワクチン用量を選定するためのデータ分析を自動化します。このツールは、大規模なデータセットを統合し、可視化することが可能で、臨床試験チームがデータを多角的に分析し、より良い臨床判断を下すためのサポートを提供します。Dose IDは、データの詳細なレビューと分析を人間とAIが協力して行い、安全性を最優先しながらワクチンプロファイルの最適化を目指します。

  2. Contract Companion GPT:

    • Contract Companion GPTは、Modernaの法務チームが使用するGPTで、契約書の内容を簡潔に要約する機能を持ちます。このAIツールは、契約文書の重要な条項やポイントを迅速に特定し、法務専門家がより戦略的な業務に集中できるよう支援します。これにより、契約プロセスの効率化とリスクの軽減を図り、企業の合法的・契約的義務の管理を強化します。

  3. Policy Bot GPT:

    • Policy Bot GPTは、社内のポリシーに関する疑問に対して迅速に回答を提供するAIツールです。従業員が数百もの文書を探す手間を省き、必要な情報にすぐにアクセスできるようにすることで、ポリシーの遵守を容易にし、効率的な意思決定を支援します。また、このツールは常に最新のポリシー情報を提供することで、遵守リスクを減少させ、従業員のポリシーに対する理解を深めます。

これらのGPTアプリケーションは、Modernaが業務プロセスをどのように革新し、AI技術を戦略的に利用しているかの具体例を示しています。これらのツールは、データ分析からリスク管理、ポリシー遵守まで、さまざまな業務領域での効率化と精度の向上に貢献しています。

Dose ID GPTはシステムの詳細が分かりませんが、Contract Companion GPTPolicy Bot GPTのような問い合わせ対応GPTであれば、どんな組織でも社員が簡単に内製化とメンテナンスができそうです。

内製化で重要なのは、初期開発よりもメンテナンスとバージョンアップを社内で完結できることです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
モデルナ社内での具体的な取り組みがよく分かりましたね。

先進的な技術を柔軟に取り入れる頭の柔らかい経営者が経営していること、組織全体をAIファーストに変革しようとしていること、さまざまな取り組みにより組織が活性化され、イベントを開催して盛り上がっていること、などが分かります。
ChatGPTユーザーなら分かっていただけると思いますが、 みんなで、このような取り組みができると業務効率化だけではなく、仕事自体も楽しくなりそうですね。何しろ人間がわざわざやらなくていい仕事を抽出して、AIにまるごと委託できるわけですから。

これをやり続ける組織と全くやらない組織とでは、数年後にどれほどの差がつくでしょうか?

日本ではまだChatGPTなどの生成AIを業務で使用することに対する理解は少ないです。
仕事の時間中にChatGPTの画面を開いていると遊んでいるように見られかねず、気が引けて使いにくいのでGPT活用が進まない、という状態の会社が多いのではないかと危惧しています。

ここはやはり、経営者が率先してAIを導入し、全社的にAIファーストを宣言し、研修教育を始めとしたAI導入のステップを進めていくという方法以外ありません。
組織からAI利用に感じる後ろめたさを取り除くことが重要です。

いずれ全世界の組織がこのモデルナ社のようなやり方を少しずつ取り入れて行くでしょう。
一度でもAIを使った業務効率化を体感すれば、もうあの「手作業地獄」への後戻りはこりごりでしょうから。
ChatGPTをはじめとするAIは、人間を手作業地獄から逃れさせてくれる一本の蜘蛛の糸なのかもしれません。

最後に、モデルナ社CEOのメッセージを引用します。

90% の企業が生成AI を導入したいと考えていますが、そのうち10% だけが成功しています。失敗する理由は、新しいテクノロジーや新しい機能を採用するために従業員を実際に変革するメカニズムを構築していないからです。

モデルナ社最高情報責任者、ブラッド・ミラー氏

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