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地元の本屋で本を買う

地元の本屋に頼んで、岩波書店の「世界」という雑誌を1月から定期購読することにした。

大学生の頃から、都内の大型書店、Amazon、BOOKOFF、地元の書店、各地の古書店をあまり意識せずにそれぞれ使ってきた。
BOOKOFFは金のない学生時代に、都心の店舗で随分いい状態の社会科学の教科書を格安で買わせてもらった。まだネットのオークションと連動したデータベースがないので店員さんのセンスで値付けしてるから大抵専門書は安かった…牧歌的な時代の話。
Amazonは社会人になってから時間のない時にサッと中古本や新刊を届けてくれるので重宝した。これもまたマニアでない人の出品で掘り出し物的な価格のものがあって随分助かった。

勿論、地元ターミナル駅の書店や都内の大型書店が本に触れるいちばんの場所だったのは言うまでもない。そういう店では文庫とか各社の新書、ハードカバーもよく買った。それから雑誌も。書棚の半分以上はこう言う店から買ったもの。

好きな書店は、新宿西口のブックファーストだったのだが、最近売り場面積が半減してしまった。二階建ての売り場は一階部分が100円ショップ等になってしまった。

他にも都心の大型書店は随分なくなった。
特に渋谷。東急本店のジュンク堂、東急本店前のブックファースト、マルイ横の大盛堂書店、東急文化会館の三省堂書店、東急プラザの紀伊國屋書店、半蔵門線出口近くの旭屋書店、みんな無くなった。
新宿はタカシマヤタイムズスクエアの紀伊國屋書店。
その点、池袋は随分残っているようだ。沿線に住んでないので羨ましい。
今はそんな状況。

さて、自分の地元の本屋の話。
地元の生田駅前商店街に一軒本屋さんがある。売り場面積は、20平米ほど。子供向け月刊誌を店前に並べて、週刊誌月刊誌漫画の比率が多い。昔はどこにでもあった町の本屋。

私はたまにPOPEYEを買うくらい。新書のセレクトが真っ当そのものの本屋。
店主のご夫婦とは特に会話もなく、買いたい本をレジに持って行ってお金を払うだけ。

繁盛店という雰囲気ではない。
でも無くなったらもったいない。

きっかけはオバマ元大統領が毎年末に公開する「今年面白かった本」リスト。
リストを説明する簡単な文章に一文添えられています。良かったら独立した書店で買い求めるか図書館で見てみて下さい、と。

オバマさんは無類の本読みだ。そして、地域に根ざした活動から世に出てきたタイプの政治家です。地元の経済を大事にする人と言っても良いかもしれない。
Amazon等のECは便利で速いけど、そうやって安全・便利・快適を追求した結果が商店街の荒廃ではないだろうか。

(ただ、いわゆるシャッター通り商店街については、今高齢者となった個人事業主の店主たちは「困っていない」から店を開けない。という指摘があり、これも説得力がある。)


Amazonの配達を担っている個人事業主の若者達は軽バンを乗りこなして毎日ものすごい個数の荷物を運んでいるのだが、大変な労力である。
今誰よりも忙しく動いているのは彼ら小規模零細のドライバー達ではないだろうか。

2024年問題なんてのもある。

でもその速さ快適さ、本当にいるだろうか。
特に本だと、早く来ても当日読むかな?いきなり積読?

そして、もしかしたら地元の子どもたちはこの店でコロコロやりぼんを買っているかもしれない。
おじいちゃんおばあちゃんは、ステラや爽快、正論買っているかもしれない。
でも一度なくなれば、簡単に誰かが再開できるものでもない。

だったらこの店に残ってもらうためにも売り上げに貢献したい。

むしろ、この書店に繋がっている本の流通経路を考えたら、もっと活用した方が良いのではないかと思った。

ただ、この書店には欲しい本の在庫がない。

その時ふと思い出したのは祖父のこと。
夏休みに帰省するとよく近所の本屋に行き、本を買ってくれた。
そこで祖父も買いたい本を「取り寄せ」していたのである。雑誌や新聞の書評で気になったものを店員さんに切り抜きして渡していた。

ならば自分も「取り寄せ」してみよう。どうせ毎月買う予定のある雑誌なら先に頼んでおけば本屋が勝手にやっておいてくれる。無理のないスピードで。

店主に「岩波の『世界』、取り寄せで定期購読したいのですが」と尋ねたら、「何月号からになさいますか?」と返ってきた。

これだよこれ。
雑誌の定期購読をしたいお客が来たら、何月号からにしますか?と聞くのが当たり前だよねと。魚屋で魚を買えば「ハラワタ出しときますか?」とか、八百屋に果物買いに行ったら「今一番甘いのはこれだよ」とか。それと同じではないかと。

地元の本屋にはこういう楽しさがあると思う。政府にお金を出してもらわなくても、頼み方一つで地元の本屋を支えられるかも。皆さんもよかったら立ち寄って「取り寄せ」頼んでみてください。

(本稿は川崎市多摩区の登戸・向ヶ丘遊園付近で配布中のZINE「ノートリボ」第5号に掲載した文章を、加筆修正の上記事にしております)

ノートリボ第5号

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