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あの日の『思い』をお蔵出し*

 誰にも「自分の『思い』の原点」と言えるような作品との出会いがありますよね。今回何十年かぶりに、その時の『思い』のお蔵出しを試みました。

 萩尾望都の『アメリカン・パイ』。高校生で出会って強烈に共鳴して、その雑誌を捨てられずに社会人になってからも冊子をバラしてずっと持ってたんですけど、20年ほど前に全集で読めるからって処分しちゃいました。
 全集に再録された作品はもちろん同じ物語で、萩尾望都の思いはそこに描かれているんですけど、何べんも繰り返し読んでは、若き日の自分に立ち返ってきたあの魔法はそこにはありません。巻頭のカラー頁や、日焼けした紙質やそのサイズ、そしてあの匂いが懐かしい。

 ずっと気になっていて、あの日の『思い』に再会したくて、全ての出版物が収蔵されているという国立国会図書館に行ってみることにしました。初めてなのでググると、コロナ禍で入館制限&抽選予約制!。申し込みは前週の水曜日締め切り。翌週までお預けになりました。
 あらかじめお目当ての本があるか検索してみた結果は、『萩尾望都作品集第17巻』『音楽マンガガイドブック:音楽マンガを聞き尽くせ』『アメリカン・パイ(秋田文庫)』の3冊。そうか。作家と作品名じゃ雑誌掲載までは探せないのか。

 で、またググってみました。『萩尾望都作品目録』というファンサイトを発見。1976年のプリンセス2月号と3月号に掲載とのこと。プリンセス!だっけ。(表紙外してたんで、プチコミと勘違いしてた)。ファンの仕事には頭がさがります。再度、国会図書館の詳細検索で76年のプリンセスを探したんですが見つかんない。探し方が悪いのか?全てあるわけじゃないのかな。

 ここならあるかなと『明治大学米沢嘉博記念図書館』の蔵書を検索。\ありました!/会員になれば見れる。これは職場の近くなのでいつでも行けるじゃん!とキープして、まずは予約抽選にあたったら、国会図書館にも再挑戦してみようと思います。雑誌の見つけ方も聞いてみたい。すると翌日。来週の予約完了メールが国会図書館から届きました。

 ググっていたら、いろんな情報が引っかかります。作詞作曲のドン・マクリーンが歌う『アメリカン・パイ』の動画。マドンナによる気怠いけどいい感じのカバー。「音楽が死んだ日」という歌詞は、1959年にバディ・ホリーなど3人のアーティストがコンサート後の飛行機事故で亡くなった事故に触発されているとか、シボレーに乗って堤防までドライブするのはダイナ・ショアが歌うシボレーのテレビCMで、50年代のアメリカの憧れだったとか、そこは乾いてしまったのだとかとか、単純で無邪気だった50年代が60年代に入り、音楽も政治もより暗く不安定に入っていった時代を描いているとか。 
 そして、萩尾望都の作品にも多用される最も印象的なフレーズ「バイ、バイ、ミス・アメリカン・パイ」は、古き良きアメリカへの追悼なのだとか。

 1961年にアメリカ大統領に就任したケネディは、ベトナムへの派兵を拡大し、翌年には、キューバ危機に核戦争を覚悟しなければならなかった時代。

 ドン・マクリーンがこの曲をリリースしたのが、1971年。1972年1月15日から4週間、ビルボードのランキングトップになりました。萩尾望都が『アメリカン・パイ』を描いたのは、1976年。物語の中のリューは、1972年にラジオから流れる『アメリカン・パイ』を聞いていたんですね。

 こんなサイトも見つけました。これは反則です!雑誌と再会して「よるべないあの日の思い」に浸ろうと思っていたのですが。あぁあ、、、、そうそう『アメリカン・パイ』を聞きながら読みたかったんですよね。でも、追われるように頁をめくる(コマを読み進める)のは好きじゃない。自分の中で自分の速度で、物語は広がり、音楽はリフレインされなきゃ。

 さて、今日はここまで。

 月刊誌の前後編の間のワクワクする待ち時間のようです。
 来週、永田町の国立国会図書館に行って、やっぱり見つからなければ、神保町の米沢嘉博記念図書館に行きます。それと、ネットで見つけた宝塚版の『アメリカン・パイ』のビデオ!(VHSなので、DVD に直してもらわなければならないのですが)と、そのカタログの到着を待ちながら。
 萩尾望都の『アメリカン・パイ』が、宝塚のバウホールで舞台化されていたなんて。

 あの日の『思い』をお蔵出ししてみるのもいいものですね。あの作品が触発された時代や、あの作品に触発された作品に出会えるなんて、思ってもみませんでした。

2021年2月12日







 

 

 


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