【山田組アカデミー賞】二宮 弘人
「めぐり逢えたら」を推す。一九九三年、アメリカ映画。妻を亡くした男サム・ボールドウィンにトム・ハンクス、新聞記者アニー・リードにメグ・ライアン。冒頭のシーンはメモリアルパークに立つ父と幼い息子。カメラワークはクレーンでスライド。シカゴの大都会が遠景に現れる。BGMはピアノソロの「Stardust」。最愛の妻を失い一年半、シアトルに引っ越しして心機一転を図るも、眠れない夜を重ねる主人公サム。
時はクリスマス・イブ。父を心配する息子のジョナは、ラジオ番組の人生相談に電話する。「パパに新しい奥さんを」。サムの声がラジオから流れる。
ドクター・マーシャ「本当に誰かを愛した人は愛情豊かなのよ。奥さんと同じに愛せるのでは?」
サム「そんな事、想像もできない」、「毎日朝になったら起きて、1日中呼吸をする。そのうち努力しなくても、毎朝ベッドを出て呼吸できるようになる。やがて幸せな日々があった事をあまり思い出さなくなる」、「とにかく僕らは一緒になるべき運命だった」、「彼女と触れ合った瞬間に分かった」
運命はある。
全米の涙を誘った「シアトルの眠れない男」は一夜にして有名人に。一方、ボルティモアで、車の運転中にその番組を聞いていたのは、結婚を間近に控えたアニーだった。
アニーは上司を説得してシアトルの男を取材しようとする。サムを突き止めるアニーだが、声をかけられない。一方、サムもアニーを偶然に空港で見かけ、それが誰かも分からないまま、一目惚れ。ジョナに「Nobody's perfect」と言った直後、目が点になるサムの表情がおかしい。
この映画の音楽!サムが電話を切る。すでにジョナはサムの膝に頭を預けて眠っている。そこへRay Charlesの「Over The Rainbow」が流れ、画面は、夜の入江に滑り込んでくるクリスマスの電飾で輝くヨットに切り替わる。
アニーが台所で、ラジオ番組のハイライトを聴くシーンで流れる曲は「In The Wee Small Hours Of The Morning」(Carly Simon)。
さて、健気なジョナはなかなかの狂言回し。エンディングの、バレンタイン・デーにおける、エンパイヤー・ステートビルでの、サムとアニーの「めぐり逢い」をお膳立てするのはジョナだ。
新しいママに会うために、シアトルから飛行機に乗って単身ニューヨークにやって来て、エンパイヤー・ステートビルの展望台でアニーを探すジョナ。でも会えない。代わりに、ジョナの家出に肝をつぶしたサムが展望台に駆けつける。父子の涙の抱擁。そのまま去る二人。入れ違いに展望台にやって来たのはアニーだ。
(いろいろあるが、やがて)運命の瞬間。ついに二人はめぐり逢う。
サム「きみだったんだね」、アニー「ええ」
サム「We'd better go.Shall we?」
運命なら、いくべきだよね、ぼくたち。
二宮 弘人が「映画」をテーマに書く物語↓
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