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回想ー2023大雪山(前編)

2023年シーズンの大雪山も本当に楽しかった。今シーズンの振り返りやたくさんの動物たちとの出会いのエピソードなどを回想します。


大雪山に登ることができるのは6月中旬から10月初旬。今シーズンは、白雲避難小屋が7~8月に一時閉鎖されたこともあるが、5回登り、計8泊大雪山で過ごした。今シーズン最後の大雪山は10月9日。
下山後、帯広空港に向かう運転中に今シーズンを振り返る。

今シーズン最後の大雪山

10月9日の12時に今シーズン最後の大雪山から下山。
今シーズンも無事に楽しめたことに感謝する。

大雪高原温泉に止めていたレンタカーに乗り込む。高原温泉線の車幅の狭い砂利道は運転に集中する。国道に出て、気持ちに余裕が出てきたところで今回の山行に思いを巡らせる。


雨と風の音であまり眠れなかったこともあり6時過ぎに起きる。
雨は止み、10月8日の朝は晴れていた。今年は紅葉のはじまりが遅かったのか長持ちしているのか、ヒグマ情報センターには行列ができていた。

準備を済ませ、緑岳登山口を7時過ぎに出発。いつものように1合目まで登り一息ついでに背後の景色を眺める。頂上付近の山肌は雪を被っていた。
大雪高原温泉は雨だったが、その少し上では雪が舞っていたようだ。
美しい景色に若干の不安を覚える。
しばらく登ると笹や木々の葉に雪が残っていた。

雪を被った忠別岳

花園にはまばらに雪が残り、水たまりは凍り付いていた。雲一つない空の元、緑岳は純白に輝いている。緑岳の頂上に近づくにつれて登山道が見えない。チェーンアイゼンを取り出し、記憶を元に直登する。

広尾根は完全に雪景色。テント場も雪に覆われていたため、無人の白雲避難小屋に泊まることに。午後は白雲岳の頂上まで散策するがガレ場は雪に埋まり、動物の気配は全くない。

翌朝は、白雲岳の頂上で朝陽を迎えるために4時半に小屋を出る。
尾根に出ると東の空が染まりはじめていた。日の出まであと30分。
歩みを止めると音がなくなる。あまりの静寂さに別世界のよう。

別世界のような日の出前の尾根

前日のトレースをたどり日の出前に登頂。いったん雲に隠れた太陽が再び現れると雪と冬枯れと晩秋の山々が色づく。

雪が積もった山頂からの景色

今回は動物たちに会えなかったが、これまで見たことがない景色を味わえた。

お初のエゾライチョウ

三国峠に向けて坂道を登る。常緑の中に赤や黄色に染まった山々を眺めながらの運転は気持ちいい。
数年前にはじめて見たときは、道路脇に車を止めて写真を撮ったなー。


登山口を出発してすぐに3羽のエゾライチョウが現れた。木漏れ陽が注ぎはじめたとはいえまだ薄暗い登山道脇の草地で食事をしている。
本州のライチョウとは種は異なるが、食事の時間と人をあまり気にしない性質は同じようだ。大雪山に7年通って、はじめて出会った。

朝露に濡れた草地で歩きながら食事中のエゾライチョウ

エゾユキウサギの集会

トンネルを抜け、三国峠展望台に出る。駐車場にはたくさんの車。
紅葉が見頃なのだ。道路脇を歩く人に気をつけながら通り過ぎる。


広尾根のハイマツ帯でエゾユキウサギの集会(?)に遭遇。夜行性の彼らが太陽が昇ってしばらく経つのに4羽いるのだ。集まったり、離れたり。
中には背中合わせとはいえいい雰囲気で。

最高のロケーションで背中合わせ

夕方に通りかかったときにもまだいたが、日没とともに尾根の反対側に駆けていった。
日没後にテント場の近くでも飛び跳ねている彼らを一緒に見ていた方も私とは別のところで彼らに会ったという。翌日は全く会えなかった。

キタキツネの親仔

三国峠の大橋を過ぎる。
そういえば7月初めにここを通り過ぎるときに親仔のキタキツネに会ったなぁー


前の年にはじめてキタキツネの親仔に出会った尾根まで行ったが、今回は会えなかった。キタキツネを撮ることができたのは下山後の登山口で1度だけだった。

ヒグマの親仔

青空の下、木々に囲まれたまっすぐに伸びた道路を進む。このあたりの紅葉ははじまったばかりだ。
数年前の雨の日に法面からヒグマが降りてきたことを思い出す。そのときは車を止めて、森に入って行くのを見守った。


2022年までは、単独のヒグマに何度か会っていたが、今回はじめて親仔を見ることができた。

はじめは、雪渓を2つの豆粒が動いているのがなんとなくわかる程度だった。一度姿が見えなくなったが、天気が回復してきた夕方には、より近い斜面で母親と2頭の仔が草を食んでいた。距離にして500~600mほど。仔は可愛いがたてがみが盛り上がった母親は迫力満天だ。

翌朝、陽が昇る前に小屋を出ると、さらに近い斜面で母親だけが草を食んでいた。白雲岳の斜面にも陽が射し、次第に母親の盛り上がった背中のたてがみが金色に輝く。

辺りが陽射しに満たされると食事をやめて岩場のほうに歩き出す。仰向けに寝転ぶと岩陰から2頭の仔が現れ、母親のおなかに一直線。数分でお乳の時間は終わり、母親は食事を再開する。母親が雪渓に移動して火照った体を冷ましていると仔も近づくが母親の一振りで雪渓を滑り落ちる。

雪渓の滑り台

下山した1週間後、この親仔がテント場に入り込み8月末まで白雲避難小屋が閉鎖になってしまった。再開後の9月3日に登った際に白雲岳から見下ろす尾根に親仔はいた。(詳しくは↓)

《後編に続く》

長くなったのでつづきは後日、後編として投稿します。

後編では、エゾナキウサギやエゾシマリス、エゾシカ、エゾオコジョとの回想と2023年シーズンの思い残しを予定しています。


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