米津玄師が1度も歌詞に使っていない言葉<Vol.1>
「米津玄師の歌詞を因数分解して分かったこと 番外編Vol.1」
*プロローグと第1章〜30章は下記マガジンでご覧ください。↓
米津玄師研究室では、dioramaからSTRAY SHEEPまでの米津玄師名義でリリースされている全88曲の歌詞を分解し執拗なまでに掘り下げて研究してきた。
ここから先は、シングル「PaleBlue」「ゆめうつつ」「死神」の3曲も含め91曲分のデータを使用し研究を続けていこうと思う。
インターバルの番外編として「米津玄師が1度も歌詞に使っていない言葉」をピックアップしてみた。その単語数は無限にあるので、テーマを設定し何回かに分けて書くつもりだ。
今回は開催中のオリンピックにちなみ、応援歌などにありがちなポジティブワードを中心に取り上げてみた。
やはり、ベタなポジティブワードは極端に少ない
*各単語の( )内の数字は、UtaNetの27万曲以上の歌詞データ検索による当該ワードの使用曲数。例えば、「頑張れ」と言う歌詞の場合、漢字、平仮名、カタカナの合計数を記載している。
「頑張れ/頑張って(5147)」「負けるな/負けない(5383)」「応援(919)」「エール(900)」「諦めるな・諦めないで(713)」といった、まんまの応援ワードは1回も使用されていなかった。
子供の頃から、わかりやすい大きな応援ソングというものに対する嫌悪感がすごくあった。(略)いろんな応援ソングを聴いても、すごくいい曲だけど、あそこで歌われてる歌詞を俺は信じられないんですよ。
(マイナビニュース パプリカ インタビューより)
”応援ソング”として依頼された「パプリカ 」リリース時のインタビューを読めば、これらの言葉が使われていないのは当然の結果と言える。
では、スポーツにつきものの勝敗関連ワードはどうか?
「勝利・Victory(2104)」
「勝負(2781)」
「勝つ・勝ち(4671)」
「負け(14455)」
上記のワードのうち、「勝」関連で使用されているのは、"Loser"の「勝ち上がるためのお勉強」と言うフレーズのみ。やはり、米津の歌詞には「負け」関連ワードの方が多いのか?しかし、意外なことに「負け」と言う言葉も"Loser"の「負け犬」と”リビングデッドユース”の「どうせ負けてしまうのならば」だけだった。
つまり、米津の歌詞には「勝ち負け」の概念がほとんどないのだ。
ラグビーを題材にしたドラマ”ノーサイドゲーム ”の主題歌”馬と鹿”を制作するにあたっても、勝敗そのものではなくその根底にある「我を忘れる美しさ」に重点を置いている。
我を忘れて、一点だけを見つめて相手を打ち負かさんとする。その単純明快で猪突猛進な感じと、その結果次第でみんなに祝福されて、名前を呼ばれて、喜び合う……その光景がひたすら美しい(ナタリー インタビューより)
スポーツの絶対的目標は「勝利」だ。選手は誰でも勝つための弛まぬ努力を続けるが、そこには常に「勝者」と「敗者」が生まれ、入れ替わり、また挑んでいく。
人生はどうだろう?勝敗を左右するルールや採点基準は誰が決めるのか?
かつて自分を「負け犬」と言っていた米津だが、他者や自分自身に対し「勝った」「負けた」などとはまったく歌っていない。
ある意味、それが答えなのかもしれない。
熱くハツラツとした言葉も爽やかワードも
全然使っていない
スポーツに限らないが、躍動する若者の姿は眩しいばかりに輝いている。リスナーを熱く高揚させ、明るく楽しい気分にさせるキラキラワードは歌詞になりやすい。
しかし、米津はJ-POPを彩るそれらの言葉を避けるかのように、どの曲にも使用していないのだ。
「元気(7474)」
「若い・若さ(3724)」
「青春(4509)」
「汗(6904)」
「情熱(5589)」
「鼓動(10052)」
「決意(1058)」
「挑戦(1241)」
「努力(2151)」
「誇り・誇る(3648)」
「ゴール(3510)」
「スタート(2348)」
「栄光(1176)」
「可能性(2209)」
「最高(7995)」
「時代(11100)」
「絆(5150)」
いかにもなキラキラワードは使ってないだろうと予測していたが、J-POP頻出ワードである「時代」や「鼓動」さえまったくないと言う徹底ぶり。ちなみに「呼吸」は6曲で使用されている。
(*”駄菓子屋商売”に「新時代」と言う歌詞あり)
さすがにこれは使っていた!
J-POP歌詞の超人気ワード
J-POPの歌詞と言えばこれ!と言えるほど頻出しているこれらの単語は、さすがの米津も使用していた。
「勇気(14690)」
「希望(14547)」
「奇跡(11446)」
しかし、各ワードとも使用しているのはたった1曲である。それぞれ、どの曲に使われているか即答できたら、かなりの米津通だろう。
(巻末に解答を記しておく)
オリンピック中継で毎日流れている”カイト”。嵐が歌うこの曲も米津玄師の作品である。この曲も五輪応援歌として制作されたのだが、当たり前のように前述の言葉はどれひとつとして使われていなかった。
いろいろなアーティストが競うように歌っている五輪応援歌。その歌詞には上記の言葉がひとつやふたつ、いやもっとたくさん見つかるはずだ。
あえてなのか?たまたまなのか?
筆者には「あえて」避けているとしか思えないが、ユーモアを音楽に取り入れたいと語ってる米津が、この先、ベッタベタにベタな言葉を「あえて」連発してくることも十分考えられる。
米津が歌詞にした言葉を分析するだけでなく、こうして使用されていない言葉を考察することも、彼の独特な世界観を覗き見るひとつの小窓になるのかもしれない。
五輪観戦でお忙しい中、読んでいただきありがとうございます。
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<文中クイズの解答>
「そのために必要な勇気を探し求めていた」
→ピースサイン
「希望もまた絶望も 分け合えるようになった」
→フラワーウォール
「奇跡であふれて足りないや」
→アイネクライネ
当たりましたか??w
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