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俯瞰的に見る、冷静に見る

本日は「診察室でのやりとりを上手く活かせない人の特徴」というテーマでお話しします。

「ちょっと冷静に」と書いていますが、診察室で起きていることを冷静に捉えることが大事なので、その話をします。


■メタ認知

僕らドクターというのは、ちょっと意地悪な言い方をすることもあるんです。

患者さんに対して、自分の認知のゆがみに気づいて欲しくて、ちょっと意地悪な質問の仕方をすることがあるんです。

「それはどうしてですか?」「それはなぜそう思うんですか?」
ということを聞きます。

これはソクラテスメソッドと言って、患者さんに自分たちの無意識に気づいてもらうための質問法なんですが、これに対して、やはり本気で怒ってしまう人がいますね。

本気で怒ってもいいんだけど、その後にちょっと冷静になって今の状況を確認するということが大事なんです。

診察室の中は密室空間なので、色々な感情が生まれたりします。

ときに医師に対して過度に理想化したり、過度に怒りを覚えたりすることもあります。

それを話し合うんですね。

一回それを置いておいて、冷静になって、

「あなたはこういう風に思ってたけどどうですか?」

「あのときあなたは僕に対してこんな感情を向けてたんですけど、冷静になって考えてみるとどうでしょうか?」

みたいなことを言うわけです。

そうすると患者さんは「はっ!そうでしたね。私の悪い癖なんですよ。いつもこうなってしまうんですね。実生活だけじゃなくて、診察室の場でもこうなってしまうんですね」「診察室の場でも怒りっぽいんだけれど、考えてみれば職場でも同じようなことが起きてました。家でも同じようなことが起きてました」と気づくんです。

これが治療の目的でもあり、ゴールだったりするんです、カウンセリングの。

自分の自己理解は深まりました。自分にはこんな癖があるんですね。じゃあ活かしましょう、というのが一つの治療のゴールというか、目的というか、自己理解の方向なんです。

もうちょっと難しい言い方をすると、それが転移とか投影とか精神分析的な理解ということになるのですが、簡単に言えば二人でやっていたことを、一回ちょっと呼吸を入れましょう、じゃあ今の状況はどうですかね? みたいに話し合うのがメタ認知だったり、精神分析的だったりします。

これができるかできないかが治療が上手く行くか行かないかのポイントなんです。

■見下してる?

例えば「先生は見下している」と言うんです。

「僕らのことを見下してないか?」

「患者のことを見下してるんじゃないか?」

でもちょっと冷静になってよ、と。

少なくとも個人的に見下すことはしてないよね、ということなんですよね。

先生は僕らみたいに勉強できない人たちを馬鹿にしてるんだ、お金がない人たちのことを馬鹿にしてるんだろう、と言うかもしれないけど、もしそうだったとしても、そういう人はいますよ、学歴が好きな人とか、お金が好きな医者もいますけど、かと言ってあなたのことはバカにしてないよね、仕事としてやっているから、そんな個人的な感情をそこに持ち込まないよね、といういうことなんです。

だから何て言うんだろうね、医師だから多少はわからないところがあるだろうな、医師だからそういう人たちの気持ちはわからないところもあって、軽率な発言をするかもしれないな、こういうことを言ったら他の人は傷付くかもしれないけど、この人たち全然わかってないんだな、と思えばいいわけですよ。

ちょっと冷静になって考えてみると、見下していると思っていた自分の気持ちは何なのかというと、見下されることに過敏なのかな、自分は自信がないのかな、そういう人たちに対して先入観が強すぎるのかな、高学歴な人、お金持ちの人に対して先入観が強いのかな。

もしくはトラウマ、父親から馬鹿にされてきたり厳しくしつけられたせいで、なんだかそういう父親的な香りのする人に対しては怒ってしまうのかな、ということに気づけるかどうかなんですよ。

こういうことから理解して、「ああ自分ってこんなところがあるんだな」とわかるのが自己理解だったりします。

でもこれはメタ認知をよく使うので、ASDの人には難しいかもしれないですね。

■ファンタジーはない

あと思ったのが、今日臨床していて気づいたんですけど、気づいたというか前々から思っていたことですが、ここは精神科なんだから本音を喋らせてくれよ、ここは私を受け止めてくれる場所なんじゃないですか、ここだったら自由に喋ってもいいでしょう、という気持ちに支配されすぎている人も多いなと思います。

ここだったら救ってくれるでしょう、みたいな。

でもそれはあまりにも退行してしまっているし、現実的に人間には限界があるから、そういうことすら忘れているような感じですよね。

メディアも悪いと思います。

精神科医は優しいんだみたいな、優しい精神科医がどこかにいて、全て受け入れてくれて、そして心を癒すんだ、話を聞いているだけで本当に癒していける、心がスッキリしていくんだみたいな、そんなファンタジーはないんですよ。

瞬間瞬間ではそういうものはあるかもしれないし、裏テーマとしてはあるかもしれないけど、あくまで5分間のお喋りでしかないので、あくまで5分間専門家と喋っているだけなので、言語的介入の限界というのもありますし、ファンタジーをファンタジーとして思いすぎないということは大事です。

そんな魔法みたいなことはないですから。

魔法みたいなことはないんだけど、魔法みたいな気持ちになる。

そうなっていった中で、グッと冷静に戻るということがとても重要です。

人間の生活というのは埋没する瞬間と一歩引いて冷静になる瞬間、この両方がないといけないし、この冷静な感じ、中立な感じ、どこか冷たいというか冷淡な感じというのがなければいけないけれど、医師というのはそういうのを持っていなければいけないんです。

それを味わうのはすごく残酷だし、傷つくことなんだけど、とても大事です。

医師というのはまあそういうもんなんですよ。

人間の死体をいじっている、人間は血が出たら死ぬとか良く知っている、老いたら死ぬし、そこにはお金持ちも貧乏人もない、そういう本当の意味での動物としての人間というか、残酷なまでの物理的な人間を良く知っているということですね。

精神科医も同じなんですよ。

精神科医もどうしようもなく人間には自由意志がない、病気によって意志は変わる、どんなに賢い人も認知症になってしまえばみんな同じ、そういうことを知っていて、その世界観の上でやっているので、お金に支配されたり、お金に依存している人がいるな、性依存の人がいるなとか、どこか茶化すようなところもあるし、茶化すんだけど愛情を持っているというか、それも医師らしさなんじゃないかなという気もします。

とにかく現実というかそこに入っている物語、熱中から離れて冷静に見るということがとても重要なので、この感覚をしっかり持ってもらいたいし、持っている人も多いと思いますけれど、改めて思い出してもらいたい、これを重要視してもらいたいなと思います。

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