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アイマスを1ミリも知らなくても、この劇中劇ドラマCDを聞いてくれ ~『ビックバンズバリボー!!!!!』~

熱血ドラマは好きだろうか。スポコンは好きだろうか。

 自分は、スポコンも割と好きだが熱血ドラマが特に好物で『トップをねらえ!』とか『グレンラガン』とか、少し趣向を変えて『ゾンビランドサガ』とか、かなり好きだ。(それが高じて、まずアイマスに熱いドラマを求めている部分すらある)

そんな自分に、ガッッツリと奇襲的に刺さってしまったのが、本作だ。

 「私たちは……」

「「一心同体!!!!!」」


【『ビッグバンズバリボー』とは】

 『アイドルマスターミリオンライブ』の派生ドラマCD作品。”超ビーチバレー”(???)をテーマとして、劇中劇ドラマ配役をゲーム内のアイドルからPたちの投票で決める、P参加型企画によって完成したもの。

 とはいえ、本作も前回書いたドラマCDと同じく、アイマスを知らない人でも全く問題なしに楽しめる。「本当に知らなくてもいいの?」と思われる方は、何故大丈夫なのか、という詳細を先の記事に書いている。(読んでくれると嬉しい!)


【あらすじ】

 『海理音(みりおん)高校』の新入生、海美恵美は入学早々、超ビーチバレーの強豪校であり、『キング』と『クイーン』が率いる『帝花(ていか)女学院』のバレー狩り(←?!)現場に遭遇したことから、海理音と帝花の因縁に足を踏み入れることとなる。
 だがそれは同時に海美と、その姉である紗代子の二人が持つ辛く苦しい過去と向き合うことだった。
 恵美の活躍と紗代子の言葉により、コートに立つ決意をする海美。
 そして始まる、紗代子・海美の姉妹コンビと、圧倒的な力を持つ帝花の『キング』・『クイーン』の壮絶な死闘。だが紗代子は戦いのさなかで、過去の傷を再発させ戦闘不能に陥ってしまう。
 絶体絶命のピンチに立ち上がったのは……新入生である恵美だった!

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THE IDOLM@STER THE@TER BOOST 01 『ビッグバンズバリボー!!!!!』


【燃え展開では他の追随を許さない】

 正直、最初はギャグ作品かと思っていた。
 事実コメディ色が強いシーンも多く、特に『プチキング:ロコ』が喋っているシーンは、ロコの素っ頓狂なセリフ回しも相まってとにかく楽しい。
 バレー狩り隊(ロコ)の活躍が最初に来るのだから、なおさらだ。(ロコ可愛いよロコ……)


「……がねぇ、いやぁ、味わい深かったって感動したぁ」

・海美の抱えたトラウマ、そして海美の繰り出す『ジャールプ・チーツァ』という必殺技の呪い

・紗代子と恵美の、海美を想う者同士の絆

・キングの、絶対強者であるが故の渇きと孤独

・クイーンのキングに対する執着

 登場人物たちの背景とドラマがスムーズに散りばめられ、その全てが一点に、最後の試合に結実する。

 プロローグ含め50分の短い尺ながらも、しっかりとドラマを紡いで凄まじいカタルシスを生み出した本作のクライマックスは、その熱血的盛り上がり度において他のミリオンライブドラマCDの追随を許さない。必聴だ。

 しかもこのドラマ、50分という尺の中で超ビーチバレーの試合を3回も行い、更にその最終決戦はその内の20分近くを占めるという驚異的な尺配分をしている。
 それでいてドラマがしっかりドラマとして面白いのだから、全くシナリオの手腕には舌を巻く他にない。


【魅力的な登場人物たち】

(※ここからは、少ーしだけネタバレを含む話になる。ここまでで本編を聴こうと思ってくれた人はバックして欲しい)

 本作の最大のイチオシポイントは先述したカタルシスだが、こちらも欠かせない。短い尺の中での、キャラの立て方が上手いのだ。

 メイン5人の超ビーチバレー選手たちはもちろん、脇役である二人のキャラも良い味を出している。本記事では特に注目してほしい4人について記述する。

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 『海美』(画像左)

「見せてやるよ……私たちの、全力!」

 ……クールで陰のある、本作の主人公その1。しつこく超ビーチバレー部への入部を求める恵美に対してキツい態度を取るが、話が進むにつれて彼女の素顔が少しずつ見えてくるのも本作の楽しいポイントだ。

 彼女が苦悩し、吐き捨てる慟哭は中の人(上田麗奈さん)の演技も相まってかなりインパクトがある。ミリオンライブ本編では味わえない、トーンの低い声がたまらない。


『恵美』(画像右)

「紗代子先輩、直伝のォォ!!!『カスタード・シーブリーム・ファイア』!!!」

……陽気で直球勝負な、本作の主人公その2。

 能天気に相手にズケズケと踏み入るようで、人のことをしっかりと観察しているヤツ。クライマックスでは、紗代子の思いを継いでコートに立つ。

 劇中、海美のある否定の言葉に対して「決めるよ!してたもん!」と断言する軸のブレなさが何とも格好いい。


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『クイーン(奈緒)』

「嫌や、キング、他の子を見たら……嫌や!」

 本編開始早々から飛び出す、かなり語気が強い「何の情報にもなっとらんやんけ!!(台パン)」には驚かされた!

 絶対強者として孤独を持つキングの隣に立ち続けることを誇りにしている子で、キングに対して強い執着を持っている。更に口が悪く感情豊かな悪党っぷりがなんとも人間臭い彼女は、好感が沸いていてしまう良い悪役だ。

 そしてこのクイーンというキャラ、ま~喋る喋る。とにかく口が回る。それもそのはず、ミステリアスなキングの隣に立つキャラとして、キング分まで喋らなければならないからだ。だが中の人(渡部優衣さん)の特徴的な声と演技、そしてセリフ回しの腕も相まって違和感なく、進行に一役も二役も買っている。ドラマCDにおいてこういう子がいるのは本当に良い……ありがとう奈緒やん……


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『プチキング(ロコ)』

「さあ!早く出てきてくださいキャプテン・紗代子!……でないと、ミリオンハイスクールのスチューデントは、ロコとバレーハンディングチームのクルーがジェノサイドしちゃいますよぉ~??んっふふふふ、キャーッハッハッハ!」

 はぁ ろこ すき

 投票ではキング役を逃してしまったロコ。とはいえ2位を座を得た彼女は脇役として登場することに。しかしこの脇役めちゃめちゃ喋るし存在感が強い。クイーンと同じく、彼女も進行に大きく貢献している立役者の一人だ。

 そして彼女は、『元のアイドルと関係なく劇中のキャラクターを打ち立てることで世界観をより独立させている』ことがコンセプトの一つにあるこのCDにおいて反則技ともいえる元のアイドルほぼそのまんまのロコが打ち出されているのも特筆すべき点だろう。

 そしてね~~~~このロコが本当に終始可愛いんですね~~~~イキり散らかしてるロコとかしゅんとしてるロコとかツッコミまくるロコとか感激するロコとかいろんなロコが聴ける本当にロコPは頼むから聞いてくれよな。(担当の話で早口になるオタク)


【表題曲、『ビッグバンズバリボー!!!!!』の力強さ

作詞 ZAQ
作曲 ZAQ
編曲 ZAQ

もうだめ、絶対強い。こんなの良いに決まってる。

 隙あらば名曲を書いていくZAQさんはオタクの間で特に有名なミュージシャンだが、本曲でもそのパワーは存分に発揮されており、とにかくパワフルなドラムが特徴的なハイテンポなロックナンバーとなっている。

 歌詞にもZAQ節がさく裂していて、その時々で歌詞の知能レベルを自在に操れるZAQさんの手腕がバキバキに聞いた脳筋歌詞だ。「歌詞のフレーズの9割が「!」でくくられています!」と本人が語るなど、暑苦しさが売り。    
 だが単にアホな歌詞というわけではなく、あくまで直球勝負の熱血歌詞で、一つ一つのフレーズが胸を熱くさせてくれる。

 歌唱メンバーも(Pたちにより)面白い人選で組まれており、奈緒の特徴的な声や、風花と紗代子の迫力ある歌声、そして海美と恵美の勢いが代わる代わる繰り出される。楽しい!

 クライマックスで本曲が挿入歌として流れる場面では、シナリオのカタルシスが爆裂しつつ、ドラムとギターが迸り、そして何より『あの歌詞』がピタリとハマるあの瞬間、!!!! テンションが最高潮に達する!正に名場面!


 曲そのものの力強さ、そしてドラマとのシンクロという両面において、『ビッグバンズバリボー!!!!!』はミリオンドラマCDの中でも屈指の名曲だ。

 ミリシタのスペシャルアピールでのノーツ芸も綺麗で好きなんだ……

 余談だが、本作は投票系ドラマCDシリーズのエンディング共通曲であるDIAMOND DAYSが特に似合う作品となっている。万能曲感が強いのでピンとこないかもしれないが、他に似合わなさすぎ連中がいるので……


【気になるところ】

 ・投票で決まった配役とはいえ、どう考えても初見だと海美と恵美が姉妹に見えるんだけど!!!!この5人の中に姉妹がいるって言われたら絶対その二人が姉妹だと思うでしょ。ちなみに海美のお姉ちゃんはジャケット右上の黒髪の子だ。

 ・アニメでやって欲しいなあ~!なまじ絵的に映えそうなだけに、想像だけで補うのは惜しいと思ってしまう。あと普通に『超ビーチバレー』なるものを見たことが無い(前例が存在しない)ので想像力をかなり要求される。補完できるように公式のイラストやMVがあるが、もうちょっとこう……欲しいというのが正直なところ。


【総括:ミリオンドラマCDならまずはコレ、と言える大傑作!】


 前記事で書いた『誰ソ彼ノ淵』はクオリティに関しては素晴らしいものの、なまじショッキングな内容なので人に薦め辛い。本作は、より多くの人に安心しておすすめ出来るエンターテインメント性がバッチリ効いた熱血ヒューマンドラマ。

 ミリオンドラマCDならまずはコレ!(先にこっちを記事にしておけばよかったな……)

 手に汗握るドラマはもちろん、表題曲だけでもお釣りが来るレベルの逸品となっている。気軽に踏み込んで欲しい!オススメ!

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