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なぜ風俗嬢はホストの「本命」彼女になれないのか

実は最近、ホスト業界に対する取材を重ねている。

いわゆる「悪質ホストクラブ」の問題が警察のみならず国会などでも論じられている昨今、ホスト産業は歌舞伎町ローカルの問題ではなく国民的な問題として認識されはじめている。しかし、実のところホストクラブの実態や産業史についてまとめた研究はほとんどない。

筆者の関心は「ホストクラブ」という産業それ自体の成立や発展史についてなのだが、「ホストにハマる少女の闇!」的なエモを前面に押し出したルポやエッセイは数あれど、そうした産業史的な研究はほとんど存在しないのだ。というわけでホストクラブに関する研究書を読んだり老舗ホストクラブの経営幹部にインタビューをしたりという日々を最近は送っている。そのせいで先月は「フェミニズムの歴史」の執筆が滞ってしまったのだが…何かにハマると周りが見えなくなるのはオタクの悪癖である。申し訳ない。(ホスト産業への取材の成果は12月末~1月ごろにはまとまった形でお見せできる予定)

そうした調査を重ねる中で、あくまで副産物のようなものなのだが、ホストの「本命」彼女になる女性の傾向のようなものが明らかになってきた。ホストにドハマりしているホス狂女子各位には少々申し上げにくいのだが、どうもホストという人々は売れっ子になればなるほど風俗嬢を本命に選ばないのだ。

こう言うと「風俗嬢は中古!」「ヤリマンを本命に選ぶわけがない!」的な女性蔑視的な感想を抱かれるかもしれないが、そうした理由で風俗嬢が忌避されるわけでもない。ホストのパートナー選択はホストクラブという産業、ひいてはホストという職業のキャリア形成と密接に関わっており、生理的嫌悪や処女選好という形で風俗嬢が本命として避けられるわけではないのだ。客とホストが(営業ではない)恋愛関係を結ぶことはありふれており、夜の街で遊ぶ女性がホストから避けられているわけではない。

それでは一体、なぜ顧客の9割以上を占める風俗嬢はホストから「本命」として選ばれないのか。ホストのパートナー選択を通じて見る、ホストクラブの産業構造について本稿では綴っていく。


どんな若者がホストになるのか

どのような若者が「ホスト」という仕事に就き、どのようにキャリアを築いていくのかという基本的なポイントについてまずは確認しておこう。これは時代による変化も多少あるのだが、おおむね学歴のない貧困家庭の男児がホスト産業への就職を目指すという形がここ半世紀ほど維持されている。

特に1990年代までは暴走族など不良グループのメンバーが高校中退後などにホストを目指すという形が多く、ホストのファッションもいわゆる「不良ファッション」の延長線上にあった。ポマードで髪を固め、ヤクザ風のスーツに身を包み…という少年マガジンのヤンキー漫画に出てくるようなアレである。

典型的な1990年代のホスト像

これが変化したのは2000年代以降だ。当時は「ホストブーム」と呼ばれる現象が起きており、TVなどのマスコミにホストが露出するという流れができ始めていた。このあたりからホスト産業は「関東ローカルの不良文化」から全国的なナイトレンジャー産業として発展していき、不良少年のみならず全国の貧しく将来の展望がない青年を吸収するようになっていったのだ。

こう説明すると性風俗産業をはじめとする女性の従事するナイトレンジャー産業との類似性を感じるかもしれない。しかしホスト産業と性風俗産業には大きな違いがある。それは

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週に1-2回程度更新。主な執筆ジャンルはジェンダー、メンタルヘルス、異常者の生態、婚活、恋愛、オタクなど。

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