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みんな昔は小学生だった・・・あの頃を思い出す10分間、微笑み9回をお約束。vol. 1

第1話 おいしい給食

給食の時間である。
いつもは最後に配膳されるワニキの給食が、めずらしく最初に盛り付けられた。
メニューは野菜ラーメンに揚げ餃子、なかなか楽しみである。

しかも大盛りで登場。
お椀には、こぼれそうなほど、なみなみとラーメンのツユが盛られている。
それをおそるおそる運んできたヒロシ君。
あともう少しで机の上に無事着陸!
というところで、
「ハ、ハ、ハクション!」
ヒロシ君は給食を手にしているので、口に手を当てるわけにも、下を向くわけにもいかないのであった。
泣きたくなるような光景を目の前に思わず
「だ、大丈夫かい?」
と私。
「はい。」
ときっぱりヒロシ君。
その時、ワニキの心の中では・・・・・・

「き、君の体が大丈夫かも心配だけど、き、給食の中身も大丈夫か少し心配だったりして・・・」
とつぶやいていた。

第2話 就学時健康診断

昨日は就学時健康診断であった。
就学時健康診断とは、来年4月に1年生として入学してくる幼児が受ける健康診断のことである。
今回ワニキは、初めて眼科と聴力を担当することになった。

まずは保健室に眼科の女医さんが登場。
すでに幼児の目は白衣にくぎ付けである。
白衣の持つ力はすごい。
ただ白衣というだけで緊張感が漂うのだ。

さて、健診がスタート。
幼児が一人、また一人と女医さんの前に進められる。
女医さんの片手にはペンライト。
目の方を照らしながら、
「真っすぐ見ててね。こっちだよ~。」
と、優しく声をかける。

そんな中、おもしろいことに気が付いた。
眼科の健診にも関わらず、10人に1人は口を大きく開けている。
明らかに歯科検診と間違えているのだ。
もちろん優しい女医さんは、
「お口は閉じていいんだよ~。」
と軽~く注意。

さらに、目の健診だからだろうか。
まばたきをしてはならぬ、と思い込み全力で目を見開く子がいる。
一人につき20秒ほどの診察だと思うのだが、終わる頃には涙ぐんでいる子が数人いた。

あっそういえば・・・・・・
目の赤い子を診察した時に記録していたワニキに
「あれけつ!」
と女医さんが一言。
「えっ?」(け、けつって)
と思ったら「アレルギー性結膜炎」の略でした。
なるほど、軽い業界用語短縮形ですね。
少しだけ医療現場に足を踏み込んだような優越感?

続いて聴力検査。
こちらはレシーバーを耳に当て、音が聞こえたら手を挙げる。
音が聞こえなくなったら、手を下ろすという検査である。
まずはレシーバーを耳ではなく、頭に当てる子。
(ちょっと待った!そんなに大きな、しかも毛の生えた耳はないでしょ。)
さらに、ものすごい速さで反応し、天井に突き刺さるがのごとく手を真っすぐに挙げる子。
もちろん、その速さと手の挙げ方をほめるワニキ。
「素晴らしいね。今までの子の中で一番速くて、手も真っすぐだったよ。」
すると、その子からの答えは、
「だって、昨日の夜、耳かきしたもん。」
だそうである。
「そうかあ。誰に耳かきしてもらったの?」
「ママ!」
「それはよかった。ママによろしく。」
(そういえば『ブラックジャックによろしく』もあったね。)

ちょっとしたお医者さん気取りのワニキであった。

第3話 パパ、がんばれ!

メグミちゃんが、笑顔で話しかけてきた。
「先生、私の誕生日はね、6月15日なんだよ。」
「へえ~」
とワニキ。
「でね、お母さんは3月5日、妹は8月23日なんだ。」
「そお、じゃあ、パパは?」
「えっとね、たしか・・・・・・10月までは覚えたんだけどな。」
「えっ!10月までしか覚えていないって!どういうこと?」
さらにワニキ、心の内では
(公式や漢字じゃないんだから、途中までってことあるんかい?)

私も含めた世のパパさん達へ
毎日毎日、お仕事お疲れ様です。
愛する家族のために今日も働いていますね。
(もちろん、ママも。)
この話の中に出てくる誕生日の「日にち」はフィクションですが、
「内容」はノンフィクションです。
今日、お帰りになったら、勇気を振り絞って聞いてみてください。
「お、俺の誕生日、知ってる?」

私は聞かないことにしました。

第4話 鼻クソ

なぜ、こんなにも子ども達は鼻クソをほじるんだろう。
普通に話している時なら、まだわかる。
ところが、私が烈火のごとく怒っている時にも平気でほじるからたまらない。
なんだか、怒るのも馬鹿馬鹿しくなってしまいそうになる。
さらに、男の子に限らず女の子も堂々とほじるのだ。
しかも、指先、などというものではなく、第一関節あたりまで奥深く差し込まれる。
鼻の穴が押し広げられ変形するほどにくいこませるのである。
左脳では怒る話の内容を整然と考え、右脳では鼻クソまみれの指は一体どうするんだと想像する・・・
すさまじいまでの脳ミソ内部、右脳と左脳のコラボレーションだ。
書いている自分自身も情けなくなってきたので、これでやめる。

第5話 続 おいしい給食

今日の給食のおかずは汁ものであった。
汁ばかりだと、すぐにお腹がへってしまうワニキは、配膳しているリカちゃんに寄り添い、大盛りをお願いした。
なぜなら、すでに半分以上盛られたお椀の中身は、ほとんど汁ばかりだったから・・・
子供って、底の方からかき混ぜることを、なぜかなかなかしてくれないのである。

「頼むよ、汁ばかりだとお腹がすいちゃうから、実を入れてよ。そうそう、下からグイッとかき混ぜてさ。」
グイッグイッとかき混ぜながら、底に沈んでいる実を浮かせるリカちゃん。
よしよしっ、いいぞ、と心の中で叫ぶワニキ。
最後のグイッ、で持ち上げた実とともに、すでに半分以上盛られているお椀の中にドシャッと盛った、その瞬間。
見てしまった。

完璧にリカちゃんの親指が、第一関節までつかっている。
そう、まるで鬼太郎の目玉オヤジが茶碗風呂につかっているかのように。
「あ、熱くない?」
こんな第一声をはける自分をひそかに尊敬したワニキであった。

第6話 引き取り訓練

9月の避難訓練は、防災引き取り訓練である。
保護者の方には学校まで来ていただくことになる。
場所は校庭。
大きな災害を想定した大切な訓練だ。

一列に並んだ保護者の方に定型のお言葉を言っていただく。
「○○の引き取り人の○○の母です。」
すると、それを聞いた教師は子どもに確認をする。
「間違いありませんか?」
そして、子どもが
「はい。」
というやりとりをして引き渡す。
目の前で言葉を言っているのは、間違いなく親なのだが、そこは訓練なので定型のお言葉で粛々と進めていく。

さて、引き渡しが早めに終わったワニキ。
何気なく周囲を見回していると・・・
すぐ横で引き渡しをしていた6年生がおもしろい。
さすが高学年である。

「○○の引き取り人の○○の母です。」
すると、それを聞いた教師が子どもに確認をする。
「間違いありませんか。」
すると、子どもがニヤリと笑いながら
「いえ、この人は母ではありません。化粧をしているので顔が違います。」
(周囲の失笑。)

あ~、言ってしまった。
この子の晩御飯は何になるのだろう。
そもそも晩御飯を食べることはできるかなあ、といらぬ心配をするワニキであった。

第7話 運転免許

1時間目が体育だったので、朝から校庭にラインを引いていた。
どこのクラスにも人懐っこい子どもはいるもので、この時も私と一緒にススム君が校庭に出てきた。
ちょうど、ススム君がラインカーをしまう小屋の前にいたので、
「ごめん、そこに出してあるラインカーさ、粉の出具合いが悪いからしまっておいてくれる?」
と声をかけた。

子どもにはなかなか運転(?)が難しいらしく、四苦八苦していた。
それでも、どうにかこうにか石灰小屋にしまうことができたので、私に報告しに来た。
そこでワニキの一言。
「あっ、そういえばラインカーを動かしてもらったけど、運転免許は持っているんだっけ?」
「何ですか、それ?」
「いや、免許だよ。車を運転する時はいるじゃない。」
「だって、先生、形が違うんじゃない。」
こういう時、子どもは心の中で『ウソでえ。』と思いながらも、心のどこかで『もしかしてホントかよ』と思っているから楽しいのである。

私の学校のラインカーはやや大きめで、車輪が4つついているのである。
「自転車は車が2つだから、免許はいらないんだけどさ、このラインカーは車が4つついてるからなあ。」
子どもの顔は、ホントかよ60%、ウソでえ40%へと変化する。
「どうしよう、おまわりさんにつかまっちゃたら大変だぞ、大丈夫かな。」
さらに顔つきは、ホントかよ80%、ウソでえ20%へと急上昇。
そこで神妙な顔をして、ゆっくりと、
「実はね~ ・・・・・・冗談です。」
「や、やっぱりな。」
と言いつつも、ごめんと握手した手が汗でしめっていたことをワニキは見逃さなかった。

第8話 イケメン抑制剤

咳が止まらないので病院に行った。
病気のせいか、年のせいか、一度に6粒も錠剤を飲むことになってしまった。
1日3回食後に服用である。
お昼の分は飲み忘れのないように教室の机の上に置いた。

さて、給食である。
今日はキーマカレー。
ご飯ではなく、ナンも登場!
何度となくナンを指さし、
「これ、何だ?」
と子どもに問い
「ナンです。」
と答えさせる、という楽しくも迷惑なやりとりを繰り返していた。

そして、給食後。
机の上に広げられた錠剤を見つけた子ども達が寄ってくる。
「先生、これ何?」
「薬だよ。」
「何の?」
「ほら、先生ってさ、イケメン過ぎるじゃない。病院に行ったらさ、イケメン過ぎるのを、もう少し抑えましょうってことになってさ・・・・・・」
ふと気がつくと、取り巻きは跡形もなく消えていた。

どこからか、鴨長明様のお言葉もどきが聞こえてきた。
ワニキのギャグの流れは絶えずして、しかも面白さはあらず。周囲を取り巻くやり取りは、かつ消えかつ結びて久しく受けることなし。

第9話 スーホの白い馬

教師は学習指導書と指導書の付録CDを使うことができる。
CDには国語の教材が音声で録音されているのだ。
だから、物語を学習する時、一流の俳優や女優が物語を読んでくれるという訳だ。

さて、ワニキの国語の授業。
この時期、2年生の定番は「スーホの白い馬」
最初の時間なので、CDを聞いてから感想を書いてもらうことにした。

静まり返った教室に男の人の声で「スーホの白い馬」が読まれていく。
長い長いお話だ。
2年生には、ちょっとつらい長さかと思いきや、子ども達はモンゴルの草原で繰り広げられる悲しいお話にどっぷりつかっている。
15分を越える長編が読み終わった時、教科書から顔を上げたワニキの目に飛び込んできたものは・・・・・・

カナコちゃんが泣いていた。
しかも、こぼれ落ちる涙を拭って、拭って、それでも拭ってという大泣き状態であった。
驚いた。
思わずCDの入っていたケースを裏返し、読んでいた俳優の名前を確認した。
「渡辺 謙」とある。
さすが、渡辺 謙である。ハリウッドまで進出しただけのことはある。
遠く離れた教室で授業をする女の子のハートを音声だけで揺さぶった。
ワニキにはできない離れ業だ。

そして、今日。
よく叱られる少しやんちゃなシンペイくんが話しかけてきた。
「先生!」
「何?」
「ぼくさ、昨日、家でスーホを音読したらさ、少し泣いちゃったよ。」
「え~っ」

ワニキの心の内の言葉
(もしかして、渡辺 謙を越えてないか、シンペイくん。自分で自分を泣かせるとは。違った意味で感動!でも、ワニキは泣かない。)

それでは、また来週。
金曜日にnoteで・・・。

微笑むコラムvol.2はこちら



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