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最小コストで広告投資プランニングを行うことのメリットと実践例



I. 最小コストで広告投資プランニングを行うメリット

VOSTOK NINEではプランニングや効果検証ツールを皆で自作したり、低価格なツールを組み合わせる事でプランニングにかかるコストを最小化しています。そもそも私達が "電卓一本でやってきたぜ" という昭和レトロなメンバーばかりの集団であるという事が大きいのですが、大手広告代理店では3秒で出せるリーチシミュレーションも気合と根性のエクセル計算が基本になっています。 広告関連のツールは非常に高額(ちょっとしたツールでも500万/年〜はする)なケースが多く、私達の予算では”逆立ちしてもそもそも契約出来ない”という悲しい懐事情はありますが、広告投資プランニングに限って言えば今後も今の "気合と根性スタイル" を貫くつもりでいます。その理由は大きく2つあります。

●高額なツール利用料が結果として広告主に跳ね返り、マーケティング予算規模によってはROAS(広告費用対効果)を大きく引き下げる可能性がある。その為、ツール利用は出来るだけ使用は最小限にしたい。

高額なツール費用は私達のプランニングフィーに乗る形で回り回ってクライアントのマーケティング予算を圧迫する事になります。大規模なキャンペーンであれば誤差と言える範疇になるかもしれませんが、小規模なキャンペーンでは間違いなく大きなインパクトになってしまいます。 私達のミッションは「コミュニケーションプランニングを通じて広告がもたらす価値を最大化する」です。広告効果を最大化したい、と謳っていながら私達自ら積極的にROAS低下を招くような事はしたくありません。勿論、そのツールやサービスを契約する事で広告主のROAS向上が見込めると判断した場合は迷わず契約しています。

●見たい指標や組み合わせたい変数は常に変わる為、クライアント毎に必要な変数を考慮したプランニングを行いたい。

マーケティング成果に影響しているであろう要因は各クライアント、プロダクト、サービス毎に異なります。広告投資のアクチュアルパフォーマンスは当然として、他社出稿状況、天候、トレンド(大きな事件等)、PR露出、パブリシティ露出、SNSでのバズ…等、各キャンペーン毎に異なった様々な因子が影響します。更に適切な分析方法もプロジェクトによって異なります。定番の指標に対して単純相関が見えるようなプロジェクトなのか、思いもよらないところにキャンペーンの成否が隠されているプロジェクトなのか。テキストマイニングすべき対象がTwitterポストなのかAmazonレビューなのか、それとも個別に取得したアンケートなのか。 このように因子も分析手法も「定番 ≠ そのクライアントにとって必要な視点」であり、全部の視点を検証可能なツールを契約していくと膨大なツール群を契約する必要が出てきますし、それこそ色んな意味で現実的では無くなります。 とはいえ手元にある限られたツールで出来る事だけを提供する、すなわちある程度 "広告の型にハメて" プランニングしていくだけでは広告の価値を”最大化”しているとは言えないと思っています。(勿論、型にハメてプランニングする事が適切な場合もあります。)そんな "型にハマらない" シミュレーションを行ってくれる便利なツールは存在しないので、結果として都度手計算するしかありません。裏を返すと "都度手計算してきたので大体の思い付きを計算に組み込む事が出来る" とも言えます。

このような想いが私達が最小コストに拘る理由なのですが、とはいえいつも電卓ばかりでは現実的に仕事になりません。コダワリつつも現実と折り合いを付けるべく四苦八苦した結果「必要なものは自分たちで工夫したり、無ければ作ったり、周りに頼ればいいじゃない?」という今のスタンスが生まれていく事になります。

II. 頼るという選択肢

私達VOSTOK NINEは広告代理店に対してのみサービスを提供しています。広告主(=クライアント)との直接契約は一切行っていません。これは我々のビジョンでもある「広告を、もっと社会に役立つ存在へ」にもある通り、我々が兎に角「広告」に夢中だからです。ですので我々は広告業界にのみ軸足を置き、もっともっと広告を社会にとって魅力的で役立つ存在にすべく活動しています。 実際の私達の仕事は各広告代理店のメソッドやケーパビリティを極超短期で学習し、各代理店の持ち味を最大限活用した広告投資プランを構築する事が仕事です。各代理店が持つ経験、データはプランニングにも遠慮なく活かします。そのように 「各代理店の持つ範囲のデータ × 我々が必要に応じて購入した最小限のデータや自作ツール類」でプランニングを行っていますので取引先である広告代理店に対しては年がら年中頼りっぱなしです。でもそうやって「頼る」事でクライアントにとって良い意味で+αの価値を提供出来ているのではないかな、と考えています。

弊社では各代理店・クライアントが持つ知財やノウハウ、秘匿情報の流出を防止する為、全従業員に対して一般的なセキュリティ対策、コンプライアンス遵守、厳格な守秘義務を求めるだけで無く、(代理店間の)利益相反に繋がる可能性がある一切の活動を制限しております。又、個人の著作(特定の代理店業務等で発生した著作権等)の申告、所有株式(一定以上の株式保有)の申告制度を設けており弊社の活動だけでなく従業員の過去・現在のプライベート活動においても弊社取引先・クライアントと一切の利益相反が発生しないよう勤めております。

III. 工夫したり作ったりするという選択肢

個人的には一番面白いトピックがこちらになるのですが、最低限の広告統計データは勿論購入していますが、その他に無償もしくは低価格のツールを組み合わせる事で汎用性(あらゆる規模の広告キャンペーンでもお金を気にせず遠慮なく活用出来る事)を持たせた仕組みを構築しています。細かなものも含めると膨大になってしまうので主要なものをいくつかご紹介させて頂きます。

  • データ統合 - ETL
    データ統合(ETL)に苦労しているメディアプランナーは多いと思います。要はメールやら管理画面やらURLダウンロードやら…で日々やってくるデータを統合し分析出来るようにする作業ですが、私達はZapierTRIFACTA、データベースにGoogle Big Queryを使用しそれらをほぼ自動化しています。特にデジタル広告の日次データをリアルタイムに解析・改善していきたい、というケースでは非常に便利な仕組みです。結果的に各分野で定番のツールを組み合わせただけではあるのですが、ここに行き着くまでに数十以上のツールを検証しており創業以来一番時間を使った仕組みがこれです。月額数千円の費用で十分実用に耐えるETL環境が構築出来ますので、また別の記事で詳しくご紹介させて頂きたいと思っています。

  • データ分析 - BI
    BIツールはTableauを使用しています。組み合わせるデータベースは先程ご紹介させて頂いたようにGoogle Big Queryです。エクセルと比較するとデータの前準備が容易な事、弊社は何故かMac環境のプランナーが多いのでMacでもピボット等の処理が早い事がTableauを使用する理由です。レポーティング資料作成だけでなく簡単なデータ分析にも使用しています。金額だけ見るとこれが一番高額なツールかもしれません。今ひとつグラフに可愛らしさが足りない気がしますが、少なくともMac環境では一番安定してデータ処理が出来ると思います。

  • データ分析 - 回帰分析
    回帰分析には定番のRというプログラムを利用していましたが、CUIで操作する必要があるので工学部出身の私でさえ心に抵抗感を感じていました。文系出身のプランナーからは当然「え、ちょっとキモい」という視線を向けられる訳で、そういった視線に耐えきれず現在はExploratoryというRのフロントエンドツールを使い回帰分析、自然言語解析を行っています。このツールは安価な割に本当に便利で、文系でも抵抗感無しで使えると思います。ちょくちょく回帰分析とかを行う方は契約して損は無いんじゃないかなと思います。

  • 広告投資プラニング - リーチカーブ作成
    広告投資プランニングを行っていて最も作成するグラフは間違いなくリーチカーブだと思います。数秒で作成したい場合は、エクセルで散布図描いて近似曲線を引けばそれがおおよそのリーチカーブにはなるのですが、エクセルで使えるモデルは限定的なのでどうしても推計値とアクチュアルに大きな誤差(残差)が生じます。それならばと気合を入れてロジスティック曲線を書こうとすると、予測式を入れてソルバー実行して…という渋い作業が始まってしまいます。私達はこれをワンボタンで実行可能なGAS(Google App Script)を作成し利用しており、今ではエクセルで近似曲線を作図するより早く、精度の高いリーチカーブが描画出来るのでとても重宝しています。

  • 広告効果検証 - MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)
    「(肌感覚的にも)クロスメディアで広告展開した方が何かと良い気はするな…という訳でテレビやCTVやデジタル広告は色々と展開してるけど、結局それぞれのチャネルがどんな影響を相互に残してどれだけROIに貢献したのだろう…うーん、なんとなく分かるような分からんような」といった課題はよくあると思います。
    MMMはこういった課題に対してある程度定量的な示唆を得る事が出来る仕組みです。高度な仕組みであるが故、当然の事ながら非常にコストがかかる訳で、石油王でも無い限り「ここぞというポイント」だけで実施しているんじゃないかな、と思います。例えばマーケティング活動全体の検証にはMMMを導入していても、ちょっとしたキャンペーンではコストが見合わず利用出来ない、という状態が多いんじゃないかな、と思います。 私達はオープンソースMMMツールを活用しコストをかけずMMM解析が出来るようにしています。勿論、多くのデータサイエンティストが莫大な時間をかけて開発しチューニングされたMMMツールに比べれば組み込めるパラメーターは少なくモデリング精度も低いと思います(間違いなく)。ただコストを気にせず、まさにエクセルでグラフを作る感覚で遠慮なくじゃんじゃん回せますので、今までMMM分析がコスト面で見合わず導入出来なかったキャンペーンで沢山の示唆を見つける事が出来ています。私達が導入しているMMMツールやその手前のデータ統合は大人のお小遣いで十分導入可能ですので、こちらもまた別の記事でしっかりとご紹介させて頂きます。

IV.最後に

今回の記事は図らずとも私達の貧乏自慢のような記事になってしまったかもしれません(笑)。ただ、広告投資プランニングは案外 "工夫で何とかなるし、むしろそっちのアプローチの方が汎用性があって色んなアイデアを組み込める" 事は間違いないと思っています。実際にそういった泥臭い試行錯誤の中で私達は沢山のワクワクを見つけてきました。そんな "広告投資プランニングで見つけたワクワク"を少しづつここでお伝え出来ればと思っています。


株式会社VOSTOK NINE
VOSTOK NINEは2023年現在、国内で唯一(※)の「広告(6媒体)メディアプランニング」に特化した会社です。所属する全員が一定(目安10年以上)の経験を持ったメディアプランナーのみ、という一風変わった組織です。広告が社会にとってより役に立つ存在になる未来を目指し2022年1月にメディアプランナーである三宅と江口の2名で立ち上げました。詳細はこちら
※VOSTOK NINE調べ


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